第326話 なぜかお風呂に招待される
「決戦の地はグレサルト平原でした。王妃様がクーヤ達を送り込んでくれましたので急遽作戦を変更し、背後から迫る魔物の大群から逃げ出した敵軍を待ち構え、殆ど兵を損失する事無く撃破しました!我々の大勝利です!!」
マグロのおっちゃんの話を真剣に聞いていた王妃様だったが、完封勝利という報告で表情が緩み、ぱあ~っと笑顔になった。
「よしッ!やりましたわ!レヴリオス公爵ざまあみろですわーーーーー!!」
ワー パチパチパチパチパチパチパチパチ!
前回、玉座の間にズラッと整列していた兵士達はほとんど出払っているので、ボク達が拍手をして場を盛り上げた。
非常に影が薄い謎の王様も、王妃様の隣で満面の笑みを浮かべている。
「ん?レヴリオス公爵は居なかったのですか?」
「敵の総大将はベルデュート将軍でした。公爵は居ませんでしたが将軍を討ち取りましたので、軍を立て直す暇を与えず、一気に公爵領へ攻め込みましょう!」
「勿論ですわ!あなた、それでいいですわね?」
「う、うむ」
あの王様、見た目はすごい貫禄あるのに、めっちゃ嫁の尻に敷かれてるよな~。
まあ、そのおかげで良い具合にバランスが取れてるのかもしれんけど。
「クーヤちゃんとお仲間の方々。我が国の内乱に巻き込んでしまって、本当に申し訳ないことをしました。そして心から感謝致しますわ!」
「困った人を助けるのは当然なのです!やっと変なのもいなくなったし、これで安心して甘いお菓子が食べられるのです!」
「なるほど・・・、お菓子を楽しみにしていらしたのね?それなら夕食はすべて甘いお菓子にしましょう!」
「「ファッ!?お菓子だけ!?」」
「全部甘いお菓子はキツイっスーーーーー!」
「ふふっ!アーーーッハッハッハッハッハッハッハ!!」
大笑いしてるので、今のは冗談だったらしい。
第一印象は怖い王妃様だったけど、実は結構かわいい性格の人だよね~!
何はともあれ戦勝報告も終わったので、いつもの部屋に戻って休むことにした。
◇
「食った食った~~~~~」
「昨日よりも豪華な夕食だったね!」
「精一杯のおもてなしで感謝の気持ちを表してくれたのかも!」
「憎き公爵軍を打ち破ったことで、緊張から解放されたのでしょうね」
「今にして思えば、甘いお菓子だけの夕食ってのも少し興味があるのです」
「一時の気の迷い。絶対地獄」
トントントン
「誰か来たよ?」
「メルお姉ちゃんかな?」
「どうぞ~」
ガチャッ
―――――王妃様だった。
ちょ、またこの展開ですか!?
バタン
カツッ カツッ カツッ
「皆様方をお風呂にご招待しますわ!」
「「お、お風呂ですか?」」
王妃様に逆らうことは許されないので、ワケがわからないまま全員お風呂へと連れて行かれた。
おそらく王妃様なりに客人らをどう労おうか考えた結果、『疲れを癒すにはお風呂ですわー!』と、ご招待しようってことになったんだと思う。
「「わああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」」
お風呂と言ってたけど、そこは明らかに王家専用としか思えない『ここは桃源郷ですか?』ってレベルの煌びやかな大浴場だった。
王妃様もボク達と一緒に服を脱いだので、ご一緒するみたいです。
正確には、侍女にドレスを脱がせてもらっていたんですけどね~。
「クーヤ!私が洗ってあげる!」
「クーヤちゃんは私が洗うのよ?」
「「ガルルルルルルルル!」」
しかも、お姫様姉妹まで一緒みたいです・・・。
「ごしごし、ごしごし」
「にゃはははははははははは!くすぐったいのです!」
「クーヤちゃんのお肌って、ぷにぷにのすべすべね~。本当に羨ましいわ~」
ん~、いつも女神の湯に入ってるせいかな?
まあ子供のお肌なんて、何もお手入れしなくてもぷにっぷにですが。
同い年の子供の肌艶なんてリリカちゃんしか知らないけど、彼女も毎日女神の湯に浸かっているから、まったく参考になりませんな。
「オーーーーーーーーッホッホッホッホッホッホ!女性に生まれたからには貴女方も遥か高みを目指すべきです!王妃ともなれば欲しいモノなど全て手に入りますわ!でも若さだけはどんどん失われてしまいますの・・・。ぐぬぬぬぬ、その綺麗な肌、
「うにゃあああああ!おっぱいを引っ張らないでください!」
向こうからプリンお姉ちゃんの悲鳴が聞こえて来た。
どうやら王妃様に絡まれている様子。
それにしても機嫌が良いからか、『オーーーーッホッホッホッホ』って高笑いしてるし、なかなかの暴君っぷりを発揮していますね。
いや、暴君というよりもアレは悪役令嬢・・・、子供が二人いる令嬢だから、悪役令嬢マダムなのです!!
とまあ、お姉ちゃん達は王妃様に絡まれていたけど、ボクの方は平和そのもので、お姫様達とまったりお風呂を満喫したのでした!
―――――しかし脱衣所で着替えている時に事件が発生した。
「アンナね、クーヤと結婚するって決めたの!」
「だからさっきも言ったじゃない。クーヤちゃんは平民なのよ?結婚なんて許してもらえるわけがないわ!」
お姫様達の会話が聞こえたのか、王妃様がそちらに顔を向けた。
「クーヤちゃんならいいわよ?」
「「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」」
ちょ、王妃様!
この前、これでもかってくらい庶民アピールしまくったじゃんさ!!
「え?なんでアンナは許可されたの?それなら私もクーヤちゃんと結婚するわ!」
「あらあら。ロゼフィーナもクーヤちゃん狙いだったの?ん~、いいわよ」
「本当に!?やりましたわーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「だめーーーーー!クーヤはアンナと結婚するの!!」
「「ガルルルルルルルル!」」
いやいやいやいや!お姫様姉妹が二人ともお嫁さんになるとか、それって庶民のボクが王家に婿入りするってことじゃないの?絶対嫌なんですけど!!
「そうなるとクーヤちゃんにはこのままお城に住んでもらって、王となるに相応しい教養を身に付けてもらわなければなりませんわね~」
いや、勝手にどんどん話を進めるのヤメてもらえませんかね?
あーーーーーっ!そうか、簡単に許可した理由がわかったぞ!!
横の繋がりよりも個の戦闘力、ボクの召喚獣を丸ごと手に入れるつもりなんだ!
これはイカンですぞ!?お姉ちゃん達は暴君に恐れをなして止めに入ることができないみたいだし、ボク一人でこの窮地を乗り越えなければならないのか!
どうする!?何か策はないか・・・。
―――その時、なぜか脳内に水色ストライプハムちゃんの顔がカットインした。
そうか!さっきの会話の中で、王妃様は美しさを求めていた。
このクーヤちゃん包囲網を突破する道は一つ!『美の商人』しかないッ!!
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