第325話 『レヴリオス公爵の乱』決着!

 新選組総長のペカチョウ率いるハムちゃん隊による魔法の一斉攻撃。

 その恐るべき破壊力は、タマねえが言うように地獄という表現がピッタリかも。


 キリが無いから1分で攻撃をストップさせたんだけど、美しかった平原が見るも無残な地獄絵図と化していました。


 美しい景色を地獄に変えてしまった罪悪感で、申し訳ない気持ちでいっぱいになったけど、これで敵兵の心を完全にへし折ったハズ!



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 ハムちゃんズのヤバさを『地獄』の一言でタマねえに説明されたプリンお姉ちゃんでしたが、朽ち果てた大地を見て呆然としています。


 おっと!罪悪感に打ちひしがれている場合じゃなかった。

 追撃の一手で敵軍を走らせなきゃ!



「蜘蛛ちゃん隊召喚!」



 ハムちゃん達の前方に、蜘蛛ちゃんをズラッと並べた。



「全軍、じわじわと前進!」



 ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ



 見た目の嫌悪感に定評のある蜘蛛ちゃん隊を先頭に、敵軍との距離を縮めていく。




「「うわああああああああああああああああああああああ!!」」




 魔物の大群が近付いて来たことに気付いた敵兵達は、とうとう逃げ出した。


 追いかけっこの態勢に入ったので、巨体のゾウに隠れながらトナカイに乗り、敵を全力疾走させるために速度を上げていく。


 後ろを歩いていた人達に抜かされて何事かと怒っていた兵士達も、背後から魔物の大群が迫って来ていることに気付き、突然のピンチに慌てて走り出す。


 味方が我先にと逃げているので、恐怖心が伝染して釣られたかな?


 トレントの間を通り過ぎる時に一端回収し、もっともっと恐怖心を煽ろうと再度空中に召喚し直す。



 ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン!



「ぎゃああああああああああああああああああああ!」

「邪魔だバカヤロウ!お前らどけ!!」

「前を歩く奴らが魔物に気付いてねえんだよ!」

「クソが!しかしこんな大事な時になぜ魔物の大群が!!」



 距離が縮まったので、敵兵の叫び声がボク達の方まで聞こえてきた。

 トレント効果は絶大です!!



「よし!敵兵の大半が真っ直ぐ前方に逃げているぞ!」

「作戦は大成功だね!」

「私達は何もしてないけどいいの?」

「ジグスレイド討伐で頑張ったんだし、まあ今回はいいだろ!」

「ところでハムちゃんの魔法ですが、いくら何でも強烈過ぎませんか!?」

「うん。強すぎるせいで今まで出番が無かったのですよ」

「ハムちゃんズは地獄かわいい」

「相反する感じの単語がくっ付いてますね!」



 ギンッ! ガキン!



「お!?剣戟の音だ!!」

「味方の軍勢のところまで追い込んだんじゃない?」

「クーヤちゃん!」

「うん!みんな速度を落として!!」



 召喚獣達の速度を、歩くくらいまで落とした。

 そして敵兵が前に進めなくなったのを確認したところでストップ。


 ふ~、ボク達の仕事はここまでかな?



「あとは味方が勝利するのを祈るだけなのです」

「この勝負には私達の6000万ラドンが懸かってるんだよ!頑張って!!」

「さすがに勝てるだろ。3kmを全力疾走した敵軍に勝ち目なんかねえよ!」

「でも兵数が倍くらい違うんでしょ?」

「大丈夫ですよ。恐慌状態で力を出せる兵などいません」

「勝敗は始まる前に決まってる」


 なにィ!?それって孫子の兵法じゃないですか!

 まあタマねえのことだから、適当に言ってみただけって気がするけど。


「ここからだと状況がよく分からんから、ちょっと空から見てくる!気になるだろうけど、みんなは此処にいろ。戦争なんて碌なもんじゃねえ」

「気を付けてね」

「おう!」



 そう言うと、レオナねえはグリフォンに乗って空へ舞い上がった。


 まあ確かに、殺し合いなんか見てたら心がどんどん腐りそうだ。

 帰る時に戦場の跡を通らなきゃならないけど、下は見ないようにしよっと。




 ◇




 古い野球アニメの主人公のように天に向かって真っすぐ左足を伸ばし、全体重を乗せたダイナミックなフォームから、ゴーレムに向かってモルモットをぶん投げた。


 ポテッ


 田中くんの右靴をぶん投げた時は5メートルしか飛ばなかったけど、今回もやっぱり5メートルしか飛ばなかった。


 しかし着地したモルモットが青白い光を放ち、地面を蹴ってゴーレム目掛けてすごい速度で突っ込んで行く。



 カキーーーーーン!



「しまった!」


「いきましたーーーーーーーーーーーーーーー!!」



 金属バットのフルスイングをくらって大空高く舞い上がったモルモットは、センターを守るナナお姉ちゃんの頭上を越えて行った。



「おらァ!ホームランだ!!」


「くそう!」



 ペカチョウが腕をぐるぐる回し、レオナねえがダイヤモンドを一周してからホームベースを踏んだ。



「うわはははははははは!野球って結構おもしれーな!!」

「グルミーダが向こうまで飛んでったけど、大丈夫なの?」


「光ってれば痛くも痒くもないらしいです。むしろ空を飛ぶのが楽しいって喜んでますよ!」


「つーかホームベースまでちゃんと投げろや!クーヤって全然ピッチャーに向いてないだろ。タマと交代した方がいいんじゃねえか?」


「レオナねえは全然わかってませんね!ボクほどの選手が守れるポジションなんてあるとでも思ってるのですか?むしろピッチャーしかできないのです!」


「クーヤをナメすぎ」


「お、おう。なんか悪かったな・・・」



 というわけで、戦争が思ったよりも時間が掛かることに気付いたボク達は、暇を持て余して野球をやり始めたところです。


 ちなみに戦場慣れしているプリンお姉ちゃんが偵察に出ているので、大事な決戦の最中だってことを忘れてたわけじゃ無いですから!



「オーーーーーーーーーーーーーーーイ!!」



 ん?


 あっ、マグロのおっちゃんだ!

 プリンお姉ちゃんも一緒だから、彼女にボク達の居場所を聞いたんだなきっと。


 これは大事な報告だと思い、全員マグロのおっちゃんの側まで駆け寄った。



「マグロのおっちゃんの顔を見た感じ、吉報ですかにゃ?」

「ハハハハッ!やはり表情でバレバレか。我々の大勝利だ!!」


「「やったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 偵察は怠っていなかったので味方が優勢なのは知ってたけど、当事者から大勝利と聞かされたことで、やっと決着がついたんだと嬉しくなった。



「ジグスレイドの討伐だけじゃなく、更にレヴリオス公爵軍との一戦まで助けに来てくれて、本当に感謝する!」

「王妃様から正式な依頼を受けたので、ボク達は自分の仕事をしただけなのです」

「もちろん王妃様の機転が功を奏したのも事実だと思うが、クーヤ達がいなければ窮地に陥っていたのは間違いない。いくら感謝しても感謝し足りないくらいだ!」

「ジグスレイドがクズ過ぎたおかげかもな?あまりにもしつこいから、アタシらを怒らせたわけだし」

「クーヤを誘拐した時点で滅びるのが確定した」

「ハハッ!本当にとんでもない子供を誘拐してしまったもんだな!確かに奴らの自業自得ということになるのか」


 ふっ、またつまらぬ組織を潰してしまった・・・。


「ところでもうこんな場所に用は無いだろう?一刻も早く王に戦勝報告をする為に、一足お先に城へ帰還したいのだが、同行してもいいか?」

「もちろんいいよ!じゃあそろそろ帰ろっか。召喚獣を全部消すけど大丈夫?」

「完全決着したから大丈夫だ!」



 召喚獣を全部消すと、遠くで天に向かって両手でガッツポーズしている兵士達の姿が見えたが、ついでに地面に倒れている嫌なモノまで見えたので目を逸らした。


 そしてグリフォンを7体召喚する。



「みんな!下は見ないようにね~」



 バサッ バサッ バサッ バサッ



 こうしてハイドリムドの地で起きた内乱は、遊びに来ただけに過ぎないクーヤちゃん一行の活躍もあり、正規軍の勝利という結果に終わった。


 ・・・うん。


 ボク達は外国にまでやって来て、一体何をしているのでしょうか?

 

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