第248話 ハズレ?いいえ、大当たりです!

 シェミールにみんなの服を注文し、続けてブロディ工房に防具の改造とペイントを依頼している状態なので、ボク達だけじゃなくレオナねえ達も冒険者活動をすることが出来ず、とてもだらけた日々を送っていた。


 そしてアイテム召喚も少しずつ時間がズレていって、今日はお昼くらいの時間に開催することになり、ショタを先頭に、レオナねえ、タマねえ、プリンお姉ちゃん、リリカちゃん、お母さん、というメンバーが所定の位置に着いた。


 大きい物や鉄板みたいな危険アイテムが出現する可能性があるので、見物する人はショタの後方と決まっているのだ。



 ヴォン



 アイテムを召喚した時に強烈な光が発生するが、明るいので誰もダメージを受けることなく目の前にアイテムが出現する。



「こ、これは!!」


「何だこりゃ?」

「ムムム・・・」

「ん~、どうやって使う物なのかさっぱり分かりませんね」

「なにこれーーーーー!!」

「お母さんにもわからないわ~」



 とうとうコイツが出てしまったか・・・。

 全然当たりではないけども、これでようやく完全体になったと言えるだろう。


 しかし一発目が何よりも重要だから、ちゃんと準備をしなきゃ!



「一大事です!みんなはココで待っていてください!」



 そう言い放った後、急いで脱衣所に駆け込んだ。


 汚してしまうと後悔するので、まずはストックして無限化。

 これでもう雑に扱ってもOKだ!


 鏡の前に立ちセッティングを開始する。

 プロならその場で出来たのかもしれないけど、ボクは素人だからな~。


 準備が出来たので、脱衣所側からドアを三回ノックしてみんなにお知らせした。

 そしてゆっくりドアを開け、家族達の前に姿を現す。



「「どわーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」



 鼻メガネを装着し、ハゲヅラを被ったショタの登場に、リビングで爆笑の渦が巻き起こった。


 某大物芸人仕様のヤツなので、側頭部に毛が残っており、頭のてっぺんにピョコンとした毛が立っているのが勝因だろう。


 流石は一流芸人が長年愛用したヅラだ。

 一発ギャグとして、これ以上の性能を持ったアイテムは他にあるまいよ!



「ハゲのカツラだったのかよ!普通カツラってハゲを隠すもんだろ!!」

「自らハゲになるなんて驚きの発想ですね!思わず笑っちゃいました!」

「クーヤがかわいくない!」

「あははは~!クーヤちゃんが小さなおじさんになっちゃったわね~!」

「シェミールにそれを被って行けば、マダムに襲われないで済むかも?」



 な、なんだってーーーーー!?



「タマねえ、それだ!!ボクが可愛くなければマダム達も寄って来ない!!」



 そうか、発想を逆転させれば良かったんだ!!

 マダムから逃げ切るのではなく、ボクが可愛くなくなればいい!


 ハズレアイテムかと思いきや、実は大当たりだったのか・・・。


 なんて素晴らしいアイテムを手に入れてしまったんだろう。

 これさえあれば、もうシェミールなんて怖くないぞ!!



「クーヤ、それ貸して」

「お?タマねえもハゲてみるつもりなのですね!?」



 ハゲヅラと鼻メガネを渡すと、タマねえが脱衣所に走って行った。

 そして3分ほどすると脱衣所からノックが3回聞こえて、タマねえが出てきた。



「「わーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」



 ハゲヅラ&鼻メガネを着用したタマねえは、思った以上にシュールだった。


 たぶん大爆笑するレベルなのは一発目だけだと思うけど、忘れた頃にみんなの隙をついてハゲになるのは通用する気がしますぞ!


 どんな時でもサッと被れるように練習しとかなきゃな。

 芸人が突発的に笑いをとれるのは、普段から努力しているおかげなのだ。



 しかし残念ながらハゲヅラは女性陣には敷居が高いらしく、タマねえ以外の挑戦者は出なかった。でも三発目は寒くなる可能性があるので、やらなくて正解かもね!






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 ビュン ビュン ビュン ジャキン!



「ふーーーーーっ!」



 パチパチパチパチ!



「今の流れるようなコンビネーションは、間違いなく実戦でも通用するぞ!」

「繋ぎも滑らかだったし、剣の振りも速かった!」

「プリンお姉ちゃんの右手って、もう完全復活したんじゃない!?」


「はい!握力もほとんど元に戻ったと思います!ただしばらく剣が振れませんでしたので、感覚を取り戻すには鍛錬あるのみですね~」


「アタシらの服と装備品が完成したら、一緒に何か依頼を受けてみないか?」


 ヒュン!


「いいですね!あ、でもまだミミリア王国の冒険者ギルドに登録してないです」


「そうだ!昨日誕生日だったから、タマも冒険者登録が出来る!」

「ええええええええ!?タマねえって昨日誕生日だったのかーーーーー!」


 この国では毎年の誕生日を祝ったりはしないんだけど、どうしても『お祝いしなきゃ!』って気分になっちゃうんだよなあ・・・。


 どうも常識というか、ボクの考え方がまだちょっと世界とズレてるんですよね。

 でも昨日一緒にいたんだから、一言あってもいいと思うのですが!


「ほうほうほう!それならこの後ギルドに登録しに行くか?20000ピリン必要だけど二人とも金はあるんだろ?」


 シュッ!


「そうですね。タマちゃんも一緒なら、登録する良い機会かもしれません」


「行こう!ちょっと楽しみ!」

「じゃあ決まりだな!」



 というわけで、久々に冒険者ギルドに行くことになりました!

 この街では可愛いショタでしかないので、ボクは登録出来ないけどね~。

 

 ・・・いや、待てよ?ハゲヅラに鼻メガネ装備ならワンチャンあるぞ!

 

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