第211話 予想ナナメ上のアイテムをゲット!

 出発したのが午後だったのもあり、その日はミミリア王国まで進むことが出来ず、リナルナ北東の山中に一泊した。


 そして翌日のお昼頃、アイテム召喚の時間になったので、山中の開けた場所に着陸して地面にシートを広げた。



「えーと・・・、ここで一体何が始まるのですか?」

「この黄色いガキが日課にしている、謎の召喚をする時間だ」

「意味が分かりません!!」

「今からやる謎の召喚魔法は普通の召喚魔法とは少し違っていて、何が出現するのかガキにも分からんらしいぞ?」

「ほうほう、意味が分かりません!!」



 やってる本人にもよくわからんのだから、ここは聞き流しておきましょう。


 最初こそ牛丼をゲットして大勝利する姿を見せることが出来たんだけど、それ以来ずっと不発続きなので、そろそろ悪そうなお兄さんにもいい所を見せたい。


 それよりもプリンお姉ちゃんに初披露するんだから、田中くんグッズやネジみたいなハズレ召喚だけは回避せねば。


 っていうか、エロ本やBL漫画だけは絶対に出るなよ?アレらが出た時の何とも言えない空気のままゴンドラに長時間籠るのは地獄だからな!


 いやダメだ、弱気になるな!

 ここは攻めの気持ちで、良いモノをゲットするんだ!



「ふーーーーーっ、そろそろ面白いの出ろ!アイテム召喚!!」



 ヴォン



 一応光は発生したけど、昼なのでやっぱり誰もダメージを受けなかった。



「うわっ!」



 目の前に大きいのが出現したので、思わず仰け反ってしまった。



「ムムムム?なんか高級そうなテーブルが出た!」

「何だこりゃ?」

「豪華なテーブルだけど、デカいから邪魔になりそうな感じだな」

「ん~、一応当たりなのかな?」

「でも変なテーブルだね。上に何か乗ってない?」

「あっ!コレってもしかして!?でもちょっとテーブルの上が見えにくいのです。ナナお姉ちゃん抱っこ!」

「はいは~い」


 ナナお姉ちゃんに抱きかかえられて高い位置からテーブルを見下ろすことで、コレが何なのか判明した!


「おおおおお~~~~~!やっぱり全自動麻雀卓だーーーーーーーーーー!!」

「クーヤちゃんが喜んでるよ!もしかして当たり?」

「ぜんじどうまーじゃ?ずいぶんと長い名前だなオイ!」

「もうまったく意味が分かりません!!」

「大丈夫、すぐ慣れる」


 麻雀卓の高さは80センチくらいかな?でもクーヤちゃんは身長が1メートルくらいしかないので、抱っこしてもらわないと全体が見えないのだ。


 すでに卓上には麻雀牌が積まれている状態なので、もう今すぐにでも麻雀を始められる状態だと思う。


 手前の引き出しを開けてみると、10000点棒が1本、5000点棒が2本、1000点棒が4本、500点棒が1本、100点棒が5本入っていた。一応それ以外の引き出しもチェックすると、どれも25000点ピッタリだったので、麻雀を始める前の初期状態だということが判明した。


 麻雀卓の中央にはサイコロマシーンも付いてるし、東と書かれた起家マークも置いてある。ならば変に触らないで、このままストックするのがベストでしょう!



「ストック!」



 召喚獣リストのバグった文字を『全自動麻雀卓』に書き変えた。

 これでもう、いつでも麻雀が打てるようになりました!


 ・・・しかしいきなり麻雀かよ!その前にトランプとか出なさいよ!


 ドラゴン飛行中に遊べるようになるってのは面白いと思うけど、麻雀だとルールを教えるのが大変でしょうが!


 まあでも遊ぶ準備だけはしておいた方がいいよね?



「全自動麻雀卓召喚!」



 シュッ


 無事召喚獣となった麻雀卓が出現した。



「うん。やっぱり椅子が無い!」

「で、コレって何なんだよ?」

「ゲームだよ!ああ、ウチにあるテレビゲームのことじゃなくて、賭け事ができる大人の遊びみたいな?」

「へーーーーー!それは少し気になるな」

「でもね、これって4人で遊ぶゲームなんだけど、椅子だけ出て来なかったの!」

「椅子?えーと、このテーブルを4人で囲む感じなのか?」

「そうそう!」

「それならお姉ちゃんがすぐに作ってあげるよ!ちょっと待っててね~」



 ナナお姉ちゃんが近くに生えてた木を風魔法でぶった切り、30分足らずであっさりと4人分の椅子を作ってくれた。



「うん、高さも良い感じ!バッチリだよ。ナナお姉ちゃんありがとう!」

「どういたしまして!」


「んじゃ、そろそろ出発だ!」

「腹減ったな。飛んだらすぐメシにしようぜ」

「タマもお腹空いた。牛丼食べたい」

「いいけど、消したらまたお腹が空くよ?」

「そのあと普通の昼食をとるから大丈夫」

「ギュードンって何ですか?」

「タマねえが食べた後、プリンお姉ちゃんにもご馳走してあげるよ!」



 そんな会話をしながらゴンドラに戻り、再びドラゴンは大空へと舞い上がった。




 ◇




「美味しい!お肉がとても柔らかいです!」

「ルナレギンの料理も美味しかったけど、残念ながら牛丼には遠く及ばない」

「わかるぜ!アレはアレで美味いんだけどな」

「でもやっぱり春はラーメンだろ!」

「レオナ、それ冬にも同じこと言ってたよね?」

「夏のラーメンも最強だぞ!」

「いいえ、夏にラーメンを食べるのは生き地獄だと思います!」

「レオナはちょっと頭がおかしいので・・・」

「なにおう!?」



 みんなが楽しそうにワイワイやってる裏で、ボクは麻雀のルールと役をノートに書く仕事を頑張っていた。



「ねえねえ悪そうなお兄さん、今何時?」

「あ?・・・えーと、6時30分だな」



 ボクは見逃さなかった。

 悪そうなお兄さんは今、確かにボクの目覚まし時計を見た!



「ハイ、悪そうなお兄さんもボクの時計の信者となりました!」



 それを聞いた悪そうなお兄さんが、ハッとした顔で目覚まし時計を見た。



「ハメやがったな!?・・・なるほど、確かに俺は今その変な時計を見てガキに時間を知らせた。もっと見やすい位置にいつもの時計があるにも関わらず、だ!」

「そうそう!やっぱりクーヤの時計の方が、見た瞬間に時間がわかるよな!?」

「え?それって時計だったのですか!?」

「プリンお姉ちゃんも、もうすぐボクの時計信者になるよ!」

「あっ!そういえば、そろそろクーヤが注文した時計が出来てる頃?」

「全部は無理だと思うけど、一つくらい完成してるかもね~」


 帰ったらレミお姉ちゃんの家に行ってみよう!


「注文しただと!?その店に俺の分の時計も注文してもらうことは可能か?」

「もう悪そうなお兄さんの分も注文して、今作ってもらってるところだよ!」

「その時計の存在すら知らなかった俺の分まで注文してたって、お前マジで言ってんのか!?いやいやいやいや、先読みするにも程があるだろ!!」

「おいクーヤ!何個注文したんだ?」

「えーと、全部で何個だっけ?みんなの家に1個ずつと、パンダ工房と孤児院に置く分も頼んできたよ~」

「大きいのが7個、ゴンドラ用のが1個、あと目覚まし時計を1個注文してた」


 あ~そうだそうだ!


 【自分の家】【タマ宅】【アイリス宅】【ナナ宅】【悪そうなお兄さん宅】【パンダ工房】【孤児院】そして【ゴンドラ用】。あと目覚まし時計は、誰かが朝起きるのに使うかも?って感じで注文したんだった。


 飛び入り参加のプリンお姉ちゃんを除いた、ココにいるメンバーの家の数と照らし合わせた全員が驚愕する。



「「先読みの天才かよ!」」



 なんかレオナねえの口調がみんなに感染してるし!!

 でも時計が無駄にならなそうで良かった!まあ自信はあったんだけどね~。

 

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