第212話 プリンお姉ちゃんの話に衝撃を受ける
麻雀ってのは、役をいっぱい覚えなきゃならないばかりか、ルールも細かかったりするので、すでに6ページ以上ノートに書き続けていた。
そして疲れたから休憩しようと思い、両手を高く上げて伸びをした所で、プリンお姉ちゃんのことで一つ気になった点を質問してみた。
「プリンお姉ちゃんって、そのままボク達について来ちゃったけどさ、ご家族とかに報告しなくても大丈夫だったの?」
楽しそうに窓の外の景色を眺めていたプリンお姉ちゃんがこっちを見た。
「親には勘当されましたので、全然問題ありません」
「「なんだってーーーーーーーーーーーーー!?」」
ちょっ!いきなり爆弾発言が来たんですけど!!
「おい、勘当されたってどういうことだ!?」
「えーとですねえ、私は1年ほど前まで騎士団に所属していたのですが、上司のセクハラに耐えきれなくなり、我慢の限界に達したので思い切って辞めたのです」
「上司のセクハラ!?」
「ムカツク話だな。そんなの辞めて正解だろ!」
「ところが両親は、『騎士団に所属している娘』が自慢だったようで、簡単に辞めたことが許せなかったのです。怒鳴られて勘当されてしまいました」
「なるほど・・・。まあ親の気持ちも分からんでもないが、娘の辛い気持ちをもう少し考えて欲しかったものだな」
ボクの両親はどっちも優しかったけど、厳しい家庭だってあるよな・・・。
娘への愛情よりも、世間体を気にするタイプだったのかもしれない。
「そして次に冒険者になったのですが、最初にチームを組んだ人達が次第に馴れ馴れしく身体を触ってくるようになり、とある日に数人で夜這いをかけて来たのです。その時は返り討ちにして難を逃れたのですが、もう、知らない誰かと組むというのが嫌になったので、それからはソロで活動していました」
「うはっ、行く先々でセクハラされ過ぎ!!」
「変なのと組んじまったのか・・・。確かにそういう
「あっ!そこで盗賊騒動に繋がるんだね~」
「はい。今はそんな身の上ですので、ミミリア王国に行っても全く問題ありません」
親には勘当され、人間不信という孤立した状態で盗賊に殺されかけていたという事実に涙が止まらなくなり、感極まってプリンお姉ちゃんに抱きついた。
「うわーーーーーーーん!もう大丈夫だから!ボク達の街で一緒に暮らそうよ!」
「あっ、天使様・・・」
「タマと一緒にクーヤの護衛をしよう。決まり!」
「タマちゃん・・・」
少ししんみりしてしまった空気をかき消すように、レオナねえが目先の現実的な話を切り出した。
「ペチコって今はパンダ工房に住んでるんだろ?アイツが寝泊りしてた部屋を、しばらくプリンアラートの部屋として使わせてもらってもいいか?」
「うん。少し片付ければすぐ使える」
「じゃあ決まりだな!何にしても、しばらくは『女神の湯』で湯治だ!」
「えーと、あの、・・・よろしくお願いします!」
瀕死の重傷を負ったタイミングで、たまたまボク達がグリフォンに乗って通り掛かるなんて、とんでもない奇跡だよね!
プリンお姉ちゃんは、ボク達と出会う運命だったんだよきっと。
これから楽しい思い出をいっぱい作って、過去の嫌な記憶を全部塗り替えよう!
◇
「えーと、ロンだ!!」
悪そうなお兄さんが手牌を倒して、ボクのノートで役をチェックすると、満貫の8000点あったようで、麻雀卓を囲んでるみんながそれを確認した。
「エーーーーー!8000点も取られるの!?」
アイリスお姉ちゃんが、悪そうなお兄さんに8000点支払った。
「なんか少し分かってきたぞ!こいつぁ本当に面白いゲームかもしれん!」
「アタシはもうさっきから面白いぞ!ただ全ての役を覚えないと、全員が一冊のノートを見ながら打ってたんじゃ、時間がかかっちまうのが問題だな」
「クーヤ、あと3人分のノートを大至急だ!」
「そのノートを見ながら写さないと、すごく時間かかるからヤダ!!」
「あはははは!まあそれは家に帰ってからだね~」
とりあえずソファー後ろの空きスペースに全自動麻雀卓を出して、4人分の椅子を設置した。でも寝る時はドラちゃんから外したゴンドラの向きが変わるので、夜になったら一旦麻雀卓を消して、椅子もハムちゃんに収納する予定。
今までは地上の景色を眺めつつ、まったり会話をしながら過ごしてたんだけど、こうやって遊びながら旅をするってのも悪くないね!
ちなみに麻雀を打ってるのは、レオナねえ・アイリスお姉ちゃん・ナナお姉ちゃん・悪そうなお兄さんの4人だ。
それ以外の3人はソファーから眺めている状態なんだけど、麻雀組がメッチャ盛り上がってるので、意味がわからないタマねえとプリンお姉ちゃんも何だかんだ楽しそうにしている。
今の段階でボクが参加すると間違いなく圧勝してしまうので、みんなが勝手に育つまで我慢します。こうして見ているだけでも結構面白いからね!
ジャラララララララララ
ウィーーーーーーン
「しかしこのテーブル・・・、とんでもない技術で作られてないか?」
「麻雀牌が勝手に並べられているのも驚きだが、下から出て来た時に全部伏せられているってのが不思議でしょうがねえ。中に人がいて並べてるわけでもねえしな」
「確か、クーヤちゃんの故郷にある物を召喚してるんだよね?」
「一体どんな凄い国なんだろ・・・」
どんな国って・・・、お箸の国?
科学が発展してるとか言ってしまうと説明が面倒なだけなので、必殺子供奥儀『わかんない!』で通しますけどね!
カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ
「おそらく、このカチャカチャが麻雀牌を並べてる音だよな?」
「お、止まった」
「もう並べ終わったってこと?」
「一体どんな作りになってるのか、すごく気になるよね!」
「それが分かったとしても、絶対こんなの作れねえけどな!」
「世の中には、とんでもない職人さんがいるんだね~」
いや、レミお姉ちゃんなら簡単に作ってしまうような気がしてならん。
あの人って、ガチの天才だからな!
あ、でも麻雀牌はそう簡単に作れないか。色とか塗らなきゃだし。
「よし、続きをやるぞーーーーーーーー!」
「8000点取り返さなきゃ!」
「次はこの役満ってのを上がってみてえな!!」
「私さっき結構惜しいところまで行ったんだよ!」
・・・とまあ、こんな感じで麻雀大会はかなり盛り上がりました!
みんなは遊んでるだけだけど、ドラちゃんは今も頑張って飛行を続けてるわけで、彼こそが今回の旅の殊勲賞ですから、帰ったら何かご褒美をあげなきゃですね!
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