第213話 ミミリア王国に帰って来た!

 

「い、いけませぬ、お嬢さま!そこは・・・・・・、ハッ!?」



 悪夢にうなされながら目を覚ますと、目の前にあったのはプリンお姉ちゃんのおっぱいだった。いや、シャツは着てるけどね。


 ・・・あっ、そうか!


 昨日彼女の辛い身の上話を聞いてしまったから、なんか離れたくなくて、タマねえと一緒にプリンお姉ちゃんにくっついて寝たんだった。



「おひょっ!」



 足がくすぐったかったので布団をめくると、タマねえが寝ぼけながらショタの右足のつま先をペロペロしていた。


 いや、なんで彼女は逆向きで寝てるんですか!?


 前にもリリカちゃんにペロペロされている夢を見ながら目覚めたら、タマねえが犯人だったことがあったな・・・。


 それはそうと、さすがに足の指はバッチィからやめなさい!!


 ゴンドラにはお風呂が無いから、退屈しのぎに身体を拭いたりはしてるけど、それでもキレイとは言えないからさ~。


 タマねえの隙をついて足を引き抜いた。



「ツモったあああああああああ!」


 パタン


「なにィ!?」

「ん?おい、コレって・・・」

「もしかして役満?」

「うん、役満!!大三元だいさんげんだよ!!」

「マジかよ!!」



 視線を向けると、大人勢が麻雀を打ってる姿が見えた。

 ナナお姉ちゃんだけが笑顔なので、大三元だいさんげん和了あがったのは彼女らしい。


 ・・・っていうか、もしかしてこの人達寝てないんじゃね?



「親だから48000点!!」

「はあ!?」

「1人16000点だと!?一気に飛んだじゃねえか!」

「デカすぎだって!!」


「はい質問!!」


「ん?クーヤ起きたのか。おはよう」

「クーヤちゃんおはよ~!」

「おはよーーー!・・・じゃなくって!みんな徹夜で麻雀してたの?」

「ウム。どうやら徹夜しちまったみたいだな」

「うおっ、もう朝になってるじゃねえか!」

「ホントだ。明かり消すね~」



 昨夜はここで一泊することになったんだけど、夕食をいただいた後、レオナねえが『寝る前にもう一局麻雀を打つぞ!』とか言い始めたんだっけか・・・。


 んでボクとタマねえでプリンお姉ちゃんを挟む形で布団に入って、麻雀のジャラジャラ音を聞きながらボク達の街の話なんかをしてたんだけど、いつの間にか眠ってたみたいだな。


 なぜか目が覚めると、タマねえが反対向きでボクの足をペロペロしてたけど!


 タマねえはタマねえでめっちゃ寝相が悪いですね!

 一体どうやってプリンお姉ちゃん山脈を乗り越えたんだろ・・・。



「雀士のみなさん、ちょっとお待ちなさい!続きは飛んでからにしようよ」



 それを聞いた雀士達が、ようやく我に返った。



「確かにいいタイミングだな。一旦清算するぞ!」

「今の一局だけでマイナス3000ピリンか。痛えな!」

「何言ってんのさ!それでも10000ピリンくらい勝ってるんじゃないの?」

「今の大勝利を含めても、私まだ負けてるんですけど!」

「待ってろ、今計算してっから」



 とりあえずボクがオススメしたレートで打ってたみたいで良かった。



 麻雀には基本『25000点の30000点返し』と呼ばれるルールがある。


 これは各プレイヤーが最初に25000点持ってゲームを開始し、ゲーム終了時に、最初に30000点を持っていたことにして計算するやり方だ。んで誤差として浮いた20000点は、1位になったプレイヤーの勝利者賞となる。


 とまあ、麻雀にはそういう細かいルールなんかがあるんだけど、要は点棒が全部無くなったら30000点負けなのだ。


 でも清算した時にマイナス30000円だと金額が大き過ぎるので、1000点につき100円までレートを下げた『点10ピン』をオススメしておいた。


 すなわちミミリア王国の通貨だと3000ピリンの負けってことだね。


 賭け事ってのはそれなりにお金が動かないと熱くなれないものでして、勝った時に気分良くなれて、負けた時に少し痛みを感じるのがこのレートなのだ。


 本当は賭け事なんてさせない方がいいんだけどさ、全自動麻雀卓なんかが出ちゃったんだからしょうがない。だってコレはこういう遊びをするモノなんだから。


 まあ賭け事なんかそこら中でみんなやってるだろうし、それほど気にしないでもいいと思うんだよね。ただ徹夜で麻雀したのはよろしくないけど。


 そんな会話をしてると寝ていた二人も起きたので、顔を洗って、歯を磨いて、あとトイレだけ済ませて空の旅へと戻った。食事は移動しながらだ。




 ◇




「街が見えた!アレがボク達の住んでいる『オルガライドの街』だよ!」

「もうミミリア王国に到着したのですか!?」

「ドラちゃんは2日で隣国まで行けるほど速い」

「オルガライドはミミリア王国の一番東にあるからね~。たぶん王都からなら1日でセルパト連邦に到着できると思うよ?」

「でもドラちゃんのことは内緒なんですよね?」

「うん。それだけは誰にも言えない秘密」

「でもセルパト連邦に旅行に行ってたことは隠さないよ!グリフォンに乗って隣国まで行って来たことにするから、パンダ工房なんかで報告する時はみんな口裏を合わせてね!」

「「はーーーーーーーーーーい!」」


 よし、プリンお姉ちゃんの口止めはバッチリだ。

 あとはバカ雀士どもですね。


「はいそこの雀士ども!もうすぐ到着だから、とっとと清算する!」


「なにッ!もう到着だと!?」

「マジかよ!麻雀をしてると一瞬だなオイ」

「もう続けてる余裕ないから、持ち点だけノートに書こう」

「エーーーーーーーーーー!絶好調だったのに!!」



 麻雀組がバタついてるけど、ボク達が寛いでいたソファー周りも結構散らかっていたので、急いで三人でキレイに片付けた。


 そしてようやくボク達は、ドラゴンの旅のスタート地点でもある『ネジポイント』へと帰って来た!




「隣国までの長い旅だったけど、ドラちゃんのおかげで安全に行って帰って来ることが出来ました!ご褒美として近いうちに3日間ほど自由休暇としますので、その時を楽しみにしていてください!」

「素晴らしい旅だったぜ!ドラちゃんありがとな!」

「俺は無理矢理連れて行かれただけだが、死なずに帰れたことに感謝するぞ!」

「楽しい旅行だったね!ドラちゃんありがとう!」

「何度も狩りを頑張ってくれて本当にありがとーーー!」

「空の旅はすごく楽しかったです!次回また宜しくお願いしますね!」

「ドラちゃんはみんなの誇り!またあそぼーね!!」


『ギュア!!』



 みんなで労いの言葉を掛けてから、ドラちゃんを消した。

 ご褒美をあげなきゃなので、次の旅行が始まるまでにまた此処に来なきゃだね。



「じゃあ帰ろっか」

「疲れた」

「天使様の家に行くのですね!?楽しみです!!」

「もう眠くてかなわん。帰ったらすぐ寝るぞ!」

「何で一睡もしないで麻雀なんかしちゃったんだろ・・・」

「う~疲れた~~~!夜はちゃんと寝ないとダメだね~」

「俺も限界だ。クーヤ、役所は明日な」

「じゃあ出発する時『ハム吉』に伝えるね」

「ああ、それで頼む」



 北門が使えないので、東門へ向かう悪そうなお兄さんとはここでお別れ。

 明日は役所に行かなきゃなので、トナカイを貸してあげた。


 そして、疲れきった一行はトナカイに乗った後も無言で街へと歩いて行った。

 

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