第112話 パンダちゃんの散歩
今日も朝からクリスお姉ちゃんの膝に抱えられ、一緒にコーヒータイム中。
集中する必要があるということで、今日はファッション雑誌を読まないらしい。
「クーヤくんが最初に選んでくれたコーヒー、それとこの茶色いのと黄色の三つで悩んでる感じね」
「へーーーー!トップ3に『キリマンジャロ』が入ってるのは意外かも!結構酸味が強いコーヒーだから、ダメな人はダメなんだよそれ」
「キリマンジャロ?」
「あっ!名前を覚えないと会話しにくいか。ちょっと待っててね!」
食卓まで紙とボールペンを持って来て、コーヒーの小袋にカタカナで書かれてある大きな文字を、出来るだけそのままの形で紙に写して翻訳する。
「なるほど~。この黄色いのが『キリマンジャロ』なのね!確かに最初飲んだ時は酸っぱくてダメだと思ったんだけど、飲み比べてるうちにその酸味の良さに気付いたのよ!ただ、飲んでるうちに飽きる可能性もあるからコレが一番とも言い切れないわ。そうなるとクセの無いこの二つが上位に来るかなって思ったの。この三つ以外のコーヒーにしても、数日後に上位と順番が入れ替わる程の実力があるわ」
うおっ!この食いつきは本物のコーヒーマニアだ!!
深入りすると出社するまで延々と語られてしまいますぞ・・・。
「たぶん今だけの流行とかもあるから、長期的に判断した方がいいかもね!」
「そうねえ、あっ!会社に持って行って、みんなにも飲ませてあげようかしら?」
「いっぱいあるんだし良いんじゃない?ただ砂糖なんかはウチでも使うから、袋とかに入れてった方がいいと思う」
「そうしましょう!今日からは会社で毎日美味しいコーヒーが飲めるのね~!帰りにコーヒー専用の入れ物を買って来なくちゃ!」
そう言うと、クリお姉ちゃんは入れ物を探しにバタバタし始めた。
ガチャッ
「おはよーにゃ!」
「おはようございます!」
「おはよー」
お?
ぺち子姉ちゃん・ラン姉ちゃん・タマねえの三人が登場だ。
「おはよー!!」
「あらおはよ~!みんなおねしょしなかった?」
そう言えば我が家のメンバーはみんな大丈夫だったみたい。
寝るまでトイレがずっと渋滞してたけどね!
「ランにゃんが何度もお漏らしして大変だったにゃ!」
「サラッと嘘つくのやめなさいよ!そんなにお股ゆるゆるじゃないわよ!」
「タマの家でおねしょは許されない」
なんか昨日からずっと、ラン姉ちゃんがみんなのおもちゃ状態だな~。
ツッコミに特化した性格だから、すごくいじりやすいんだよね!
「あれ?」
タマねえがパンダちゃんのいる方にトコトコと歩いて行った。
「なんかパンダの様子がおかしい」
なんだって!?
急いでパンダちゃんの所に行く。
「ん~~~?よく分かんないけど、そわそわしてる?」
「そんな感じ」
「ちょっと聞いてみるね」
パンダちゃんに理由を問い掛けてみた。
「そういうことか!全部飼い主のせいじゃん」
「どういうこと?」
「えーと、ずっとこの家にいたからストレスが・・・」
ピコンと閃いた。
タマねえに耳打ちする。
「なるほど!それは絶対おもしろい!!」
「でしょ?今日はちょうどタマねえも学校がお休みだし、パンダちゃんの散歩に行こうよ!」
「行こう!」
「ぺち子姉ちゃんもラン姉ちゃんも一緒に行くよー!!」
「行くって、どこに?」
「今日は暇だからどこでも行けるにゃよ!」
そんなわけで、クーヤ・タマねえ・ぺち子姉ちゃん・ラン姉ちゃんの四人は、狙撃屋敷に向かって出発した。
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「何なのよこの気持ち悪い屋敷は!・・・え?もしかしてこの中に入るの?」
「屋敷には入らないよ!この屋敷はめちゃめちゃ危険だから、中に入ったら誰か死ぬかもしれないし」
「にゃにィ!?そんにゃに危険な屋敷だったにゃか!!」
「この家はタマでも危ない」
そもそもティアナ姉ちゃんと交わした約束のことがあるから、ここに入るわけにはいかないのです。
お化け屋敷を素通りして、裏の森の側まで移動した。
そしてパンダちゃんを召喚。
「いつも家でマスコットキャラを頑張ってくれてるから、今日はご褒美だよ!」
『ブモ!?』
「パンダにゃ!」
「もしかしてペットの散歩に来たの?」
「うん!たまには外で遊ばせてあげなきゃダメだってことがわかったの」
「パンダ嬉しそう」
パンダちゃんと一緒にみんなで森に入って行く。
「ししょー!パンダに乗ってみたいにゃ!」
・・・かかった!!
タマねえの顔を見ると、ニヤリと笑っていた。
「いいけどパンダちゃんは足が遅いよ?」
「それはしゃーにゃいにゃ!ランにゃんも一緒に乗るにゃ!」
「え?あたしもこれに乗るの!?いや、うん、すごく興味あるけど・・・」
この二人が背中に乗りたいってことをパンダちゃんに伝えると、乗りやすいように地面にへにゃっと伏せてくれた。
相変わらず伏せのポーズがクッソかわいい。
「にゃは~~~~~~~!せにゃかがふわふわにゃ!!」
「すごいわ!こんな可愛らしい動物に乗れるなんて最高すぎる!!」
二人を乗せたパンダちゃん号が、のっそのっそと森の中を歩いて行く。
―――そして10分ほど歩いた頃、パンダちゃんが何かを見つけた。
『ブモ?』
「にゃんにゃ?」
「ん?止まったわね。何か見つけたの?」
『ブモーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!』
ドデデデデデデデデ
「うにゃ~~~~~~~~~~~~~~!!」
「わわわわわ!?え?なに??」
突然パンダちゃんが急加速!左前方を目指して走り出した。
ドデデデデデデデデ ピョーーーーーーーン!
「うにゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
「ちょっ!嘘でしょーーーーーーーーーーー!!」
バッシャーーーーーーーーーーン!!
「にゃんにゃ~~~~~~~~~~~~~~!!」
「わぷッッ!!」
パンダちゃんはそのまま水溜まりへとダイブ。
二人は投げ出され、パンダちゃん諸共ちょっと深い水溜まりの中へ。
「ぷへあッッ!いきにゃりにゃんにゃのさ!?」
「ケホッ、ケホッ!ちょ、ちょっとお!びしょ濡れじゃないのよ!!」
あの時のようにパンダちゃんは水溜まりの中でゴロンゴロン転がっており、泥にまみれて大惨事だ。
「バふッッ!ぷっ、くっぷふ・・・」
「くきゅっ、くくくくッ!」
こうなるのを事前に予想してたにも関わらず、大惨事の現場を見て笑いを堪えることが出来ない!!
「あーーーーーーーーーッはッはッハッハッハッハッハ!!」
「あははははははははははははははは!!」
当然ながら、笑い転げている師匠二人を見てびしょ濡れコンビも感付いた。
「・・・アレは突発的な笑いじゃにゃいにゃ。さては知ってたにゃね?」
「どういうことなのか説明してもらおうかしら?・・・水溜まりの中で!」
え?
笑い過ぎて全く身体に力が入らないショタとタマねえは、怒れるびしょ濡れコンビの手によって、難なく水溜まりの中に投下された。
「にょわ~~~~~~~~~~~~!!」
「わーーーーーーーーーーーーーー!!」
そしてぺち子姉ちゃんとラン姉ちゃんも再び水溜まりの中へダイブ。
バシャーーーーーン!
結局散歩メンバー全員が泥まみれになってしまいましたとさ・・・。
「なんてこったーーーーーーーー!」
「クーヤ、話が違う!」
まさか、びしょ濡れコンビに巻き込まれてしまうとは!!
『策士策に溺れる』とはこのことだったのか!
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