第239話 ドレスアーマーのお披露目

 クリスお姉ちゃんによって救出されたのは、呂布の裏切りによりマダムに献上されて1時間後のことだった。



「いつも大変ねえ~」

「呂布、いや、レオナねえが裏切ったのです!!」

「いや、あんなの無理だろ!そもそも何でマダムの群れに襲われるんだよ!?」

「クーヤが可愛すぎたのが敗因。大浴場でも惨敗した」

「大浴場から泣きながら帰って来て、マダムが~って魘されながら寝てましたね」

「なるほど・・・、クーヤの弱点はマダムだったのか!」



 正直、『かわいい』ってほとんどメリットしかないと思ってたのに、特定の条件が揃うと酷い目に合う仕様って酷くないっスか!?


 歌って踊れるアイドルでもないのに、全然納得いきませんぞーーーーー!!

 ちなみに腐女子も弱点です。



「ところで、ドレスアーマーを受け取りに来たのよね?」

「はいっ!!」

「ちょっと待っててね~、今持って来るから。あ、鎧を運ぶの手伝ってもらえる?」

「自分の鎧ですし、お手伝いします!」


 ガチャッ


 その時ドアが開いて、エミリーお姉ちゃんが企画室に入って来た。


「ドレスアーマーの試着をするんですよね!?」

「そうよ~。見に来たの?」

「いつも私が試着させられてたから、他人が着るとどんな感じなんだろうって、ずっと気になってたんです!」

「ご苦労ご苦労!もう間違いなく可愛いと思うわよ~~~!」

「手伝いますよ?」

「じゃあ試着室の中の物を外に出しといてもらえる?」

「はいは~い!」



 クリスお姉ちゃんとプリンお姉ちゃんが奥の部屋に入って行き、エミリーお姉ちゃんは企画室の中にある試着室を片付け始めた。



「それにしても『ドレスアーマー』か・・・。名前からいって、ドレスと鎧を着るんだろ?重くねえのか?」

「そこはクリスお姉ちゃんの腕次第かな?出来るだけ軽く作るよう言ってあるよ」

「クーヤの描いた絵はメチャクチャ可愛かった!」

「へーーーーー!見るのが楽しみだな!」


 ガチャッ


 ドレスらしきモノをいっぱい持ったクリスお姉ちゃんと、鎧一式を持ったプリンお姉ちゃんが奥の部屋から出てきて、試着室に入って行った。


 入れ替わりにエミリーお姉ちゃんがこっちに歩いて来た。


「クーヤちゃん、これは革命よ!おそらくこの街でドレスアーマーが爆発的に流行するんじゃないかな?」

「エーーーーー!あんまり流行ったらプリンお姉ちゃんが目立たなくなっちゃう」

「斬新で奇抜な衣装がブームになるのは止められないわ。この街の人達もお洒落するようになったでしょ?みんな可愛い服を着て歩きたいのよ!」

「確かにみんな服に気を使うようになったよな~。大体この店のせいだけど」

「おかげでボロ儲けでございますわ!オーッホッホッホッホッホッホ!!」


 ファッション雑誌一冊がココまで影響するとは、ボクもビックリなのですよ。

 クリスお姉ちゃんの熱意が、お洒落ブームに火を付けたんだけどね。



 シャーーーーーッ



「「おおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーー!!」」



 カーテンが開くと、そこには荘厳美麗そうごんびれいな騎士が立っていた。


 煌びやかで美しく、そして威厳を感じさせるその佇まいに、ギャラリー達から思わず感嘆の溜息が漏れた。


 赤いドレスだけでも感動モノなのに、鋼の煌めきが組み合わさることで、とんでもなく高貴な威圧感を放っている。


 ドレスアーマーをオススメして正解だった!!



「プリンお姉ちゃん、綺麗すぎるよ!」

「これは感動!」

「うわ~~~~~!本家だけあって、私より姿勢が良いから圧倒されますね~!」


 レオナねえを見ると、ドレスアーマーに衝撃を受けたようで少し震えていた。


「メチャクチャ格好良い!!なんだこりゃーーーーーーーーーー!?」


 ドレスアーマーを着ているプリンお姉ちゃんも、前回のファッションショーとは違って恥ずかしがっておらず、とても良い表情をしていますね!



「とても良く似合ってるわよ!ドレスの重さはどう?」

「普通のドレスを着たことが無いので、ちょっと比較が出来ませんね。フルアーマーと比べれば全然重くないですし、立っているだけなら全く問題ありません。剣を振った時に引っ掛からないかだけ気になりますが」

「そうよねえ・・・」


「プリンお姉ちゃん、それはちょっと違うのです!ドレスが剣の邪魔になるかどうかじゃなく、ドレスに剣を合わせるのですよ。姫騎士の剣はとても優雅でした!」


「「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」


 アニメの話ですけど。


「でも無理して怪我したらただのアホなので、とりあえずはそのドレスを着た状態で訓練してみて、どうしてもダメだと思ったら改良する感じでいいんじゃない?」

「無茶言いやがって・・・・・・」

「流石クーヤ、他人事だと思って適当なこと言ってる」


「でも一理ありますね。ドレスアーマーに合わせた戦い方を模索してみるのも面白いかもしれません!」

「大丈夫なの?」

「とりあえずやってみます!どうしても無理なら改良をお願いしに来ますね」



 ビジュアルが完璧過ぎるので、本人もその気になったもよう。

 というわけで、プリンお姉ちゃんは姫騎士を目指すことになりました!


 次のドレスに着替えるため、カーテンが閉まった。

 そして数分後、カーテンが開いた。



 シャーーーーーッ



「「おおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーー!!」」



 今度は青いドレスだ!



「赤いドレスも良かったけど、こっちの方が似合ってるような気がする!」

「ん~~~、私は赤の方が好きかな?」

「どっちも可愛い!」

「うん。両方とも良い感じだな!」


「どちらかと言えば私も青いドレスの方が好きかもしれません。でも3色とも綺麗ですので、その日の気分で選ぼうかなって思っています」

「いきなり3色のドレスを注文したクーヤくんが地味に凄いわね~」

「それは私も思いました!天使様は先読みの天才です!」



 ボクもアレはファインプレーだったと思ってます!


 そして最後のドレスに着替えるためにカーテンが閉まった。

 数分後、カーテンが再び開く。



 シャーーーーーッ



「「おおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーー!!」」



 黒いドレスも全然アリやん!!



「これまた印象がガラリと変わりましたな!」

「全部可愛い!!」

「へーーーーー!黒いドレスも全然アリですね!」



 レオナねえが口をパクパクしている。



「メチャクチャ格好良いじゃん!!黒いドレスに鋼の輝きが見事に調和されていて、もう完璧としか言い様がない!!」



 おお!レオナねえから最大級の賛辞が来ましたぞ!



「そ、そうですか?これも素晴らしいですが、私はやっぱり青が一番好きかな?」

「全部似合ってるわ!白いドレスも作っとけば良かった・・・」

「いえ、白は返り血を浴びると酷いことになると思いますので、戦闘が終わったらすぐに着替えないと怖がられる気がします」

「あ、そっか!だから白いドレスは無かったのね~」



 そういうことなのです!



「決めた!アタシも黒い服を買うぞ!!」



 突然の宣言に、全員の視線がレオナねえに向いた。

 ドレスアーマーの美しさに、服に無頓着なレオナねえも触発されたみたいですね!

 

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