第13話 言葉を教えてもらう

 広場に到着した。



 今日はこの世界の言葉を教えてもらう目的もあるけど、まずは食い物だ!

 昨日と同じ作戦で、ショタの可愛さをフル活用して誰かに奢ってもらうのだ。


 今日はどの娘にしようかと、辺りをキョロキョロ見渡す。


 毎日ナンパをしないと死んでしまうとか、俺はあの有名な鬼っ娘漫画の主人公か何かですかね!?まだ2回目だというのに、考えただけで憂鬱になってくるわ・・・。



 おっ!あの娘なんてどうだろう?


 10代後半くらいの女性がベンチに座って本を読んでいる。

 濃い緑色の長い髪で、眼鏡をかけた、いかにも文学少女といった感じの女性だ。


 あまり若いと、ショタに奢ってあげるほどの金銭的余裕が無い可能性もあるけど、言葉を教えてくれる先生になってくれるかもしれない。


 まあ釣れなかったら別の人を探すだけだし、まずは当たって砕けろだ!



 とてててててててて


「よいしょ」


 昨日やった作戦と同じように、文学少女の隣にピョンと座った。



 本を読んでいたお姉さんが活字の世界から戻って来たらしく、こちらをじっと見つめている。あひるポンチョ頑張れ!


 眼鏡のお姉さんの顔を見上げ、にぱーっと笑顔を見せる。

 すると眼鏡のお姉さんも顔を赤らめ、微笑んでくれた。


 いける!!


 好機到来と判断し、キョロキョロと周囲を見渡す。



「わあ~~~~~~~~~!!」


 とてててててててて


 昨日と同じ串焼き屋さんの前まで走って行き、串焼きをジーーーッと見つめた。


 ワンパターンだけど、対戦相手が変わったから問題無いハズ。最初の内はこれ一本で大丈夫だと思うんだよね。

 一度奢ってもらった人の場合は違うバージョンで攻める必要があるけど。



 眼鏡のお姉さんがこちらへトコトコ歩いて来て、おっちゃんにお金を払って串焼きを一本購入した。



 っしゃあああああああああああああ!!

 2連勝来ましたーーーーーーーーーーーー!



 お姉さんが串焼きを渡してくれたので、『わああ~~~~~っ!』と喜んでから串焼きにカプッとかぶりついた。


 こういうのは即時決行が最善なのです。


 ベンチに腰掛けてから食べ始めるなんてのは大人の行動。貰った食べ物はその場でパクっと行くのがショタの行動パターンだと思うんだよね。

 まあ、本物のショタがどう動くのかなんて、じっくり観察なんかしたことないから、正直よくわかってないんだけどさ。


「ム#+ア<レネ&$ヤ?」


 お姉さんがベンチを指差して何か言っている。


「あい!」


 座って食べようか?って言ったような気がしたので、良い返事をしてからお姉さんと手を繋いでベンチへと移動した。



 昨日ぶりの肉うめええええ!


 眼鏡のお姉さんは昨日の二人組よりアグレッシブじゃないようで、膝の上じゃなくて普通にベンチに座ってお食事中。


 でもハァハァしてるから、普通のお淑やかな文学少女ってわけでもなさそうだ。


 お姉さんの理性メーターを振り切って拉致されるなんてことが無いよう、細心の注意をする必要があるかもしれない。



 和やかムードで肉を完食。

 よし、この世界の言葉を教えてもらおう!


 足元に落ちてた石を拾ってお姉さんに見せる。


「<ミ?」


 なるほど・・・、石は『<ミ』と発音すればいいのか。


「<ミ!!」


 元気良くオウム返ししてから、今度は後ろの木を指差す。


「ナ&ケ?」


 『おおっ!』という表情で目を輝かせる。


「ナ&ケ!!」


 ショタが何をしたいのかお姉さんも察してくれたようで、手を繋いで広場をあちこち移動しながら、いっぱい単語を教えてもらった。




 ◇




 眼鏡のお姉さんも暇ってわけじゃなかったようで、『もう行かなくっちゃ!』的な言葉のニュアンスを感じ取った所で、勉強会はお開きとなった。


 感謝の意味も込めて、お別れする時に一番高級そうな石鹸を渡したらすごく喜んでくれたぞ。



 さて・・・、一日一食ってのもどうかと思うから、もうちょい食い溜めしてから帰るのが良いのだろうけども、勉強で疲れたから今日はもう帰るか~。


 暗くなってからのショタの一人歩きは危険だからな。


 言葉を覚えさえすればガールハント生活ともおさらば出来ると思うから、これからしばらくは今日のようなパターンを繰り返そう。


 お返し物の石鹸も尽きてしまうと後で困るから、アレは初回特典って感じかな?あの屋敷ならば、何か他にもお礼の品になる物があると思う。



 よし、帰ったら何か探してみよう!






 ************************************************************






 ダンッ



「またどこかの部屋が狙撃されたな・・・」



 お礼の品になる物を探してると、例の如く壁を撃たれた音がどこかから聞こえて来たけど、さすがにもう慣れて来た。


 こんな死と隣り合わせの家に住んでる人間なんて俺だけだろな。

 でも、当たらなければどうということはないのだ。



 いつもと違う部屋で香水やら化粧道具やら色々見つけたけど、どう見ても石鹸よりも値打ちがありそうだったので、とりあえずこれらは温存することにした。


 でも宝石類やお金らしき物は見つからないので、屋敷の持ち主が持って行ってしまったのかもしれない。


 逆にそういう物が無造作に置いてあったら、すでに狙撃で死んでいるってことになるよな。お化け屋敷度が上がるのも嫌だし、あまり深く考えないようにしよう。



 寝室に戻って来た。



 よし、今日はリコーダーの練習をしてから寝ようか!

 そうすればきっと夜中に目覚めることもなくなるハズだ。


 ピーピープー


 一ヶ月だ。一ヶ月で田中くんを超えるぞ!!

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