第103話 衝撃を受けるクリスお姉ちゃん

 

「よし、これで完成!!」



 絵だというのに、ひらひらしたふんわり感を忠実に再現した自分の才能にうっとりですよ。


 黒成分を多めにしたので、メイド服っぽさからは少し離れてしまったような気はするけど、その分ゴスロリらしい雰囲気が出ている。


 あれ?そういやメイド服なのにエプロンはどこへ行った?


 白のひらひらをベースに黒のひらひらを上に重ねる感じで描いたんだけど、よく考えたらこれだと白と黒が反転しちゃってないか!?


 ・・・いや、これはこれでめっちゃ可愛いと思うし、別にメイド服じゃなくたっていいよね?従業員の制服みたいなもんなんだから。


 最後に胸の部分に付け足した『黒くて大きなリボン』がすごく良い感じだと思う。

 うん、記憶の再現率99%と言っていいでしょう!



「クーヤくん」


「あい?」



 ―――ショタが2時間かけて完成させた一枚の絵。

 その経過をずっと見ていたクリスティーネは、興奮を抑えきれないでいた。



「素晴らしいわ!!何なのよ、この究極に可愛らしい服は!?」

「にょあっ!?」


 ビックリしたーーーーー!

 クリスお姉ちゃん、めっちゃ食いついてますやん!!


「えっと~、元々は偉い人の・・・あっ、あれだ!貴族のお屋敷で働く使用人とかが着る服だったの。んで昔はもっと質素だったんだけど、最近この服がまた注目されるようになってね、どんどん可愛い服に進化していったんだ~」

「へーーーーー!使用人の服が注目されるって凄いわね!」

「どんどん良い服が作られていって、ぐるっと1周した感じ?」

「あは~、そういうこともあるのね!・・・ところでクーヤくん」

「あい?」

「おそらくこの服を作るには、一着50000ピリンほど必要よ?」


 ピリン?

 ・・・ああ!ピリンって、この世界の通貨単位じゃん。


 ちなみにこの世界のお金は、金貨や銀貨とかじゃなく全て紙幣なのです。

 何か魔法で対策をしているらしく、偽造は不可能らしい。


 んでかなり大雑把だけど、ボクの感覚では大体日本円と同じくらいの価値だった。

 すなわち、50000ピリン=50000円って思っといて問題ないでしょう。


「結構お高いのですね・・・」


 ショタのその一言で、クリスお姉ちゃんがニヤリと笑った。


「ベイダー工房で女の子を何人雇う予定なのかは聞いてないけど、孤児院の子供達が成長したらその子達も雇うことになるのよね?」

「えーと・・・、そうだね。とりあえず今必要なのは三人分の服だよ!」

「それだと三人分で三着欲しいって考えたのかもしれないけど、着替えも必要になるんじゃないかしら?」


 ハッ!?たしかに一張羅じゃ洗濯することが出来ん!!


「そこで提案よ!ウチの会社と契約しない?」

「契約??」

「この可愛い服をお姉ちゃんの会社で作って販売したいの。でも考案したのはクーヤくんなのに勝手なことは出来ないわ」


 あ~、何となく言いたいことがわかってきた。


「そこで取引きよ!この服をお姉ちゃんの会社で製作・販売をしてもいいのならば、ベイダー工房で必要な分は全て無料にするわ!更に、この先ベイダー工房で雇うことになる子供達の分も無料でお届けするわよ?もちろん限度はあるけど・・・」


 クリスお姉ちゃんは、家族と仕事の間にもキッチリ境界線を引いてるのね。


 でもボクは家族を相手に得をしようなどとは思わない。

 この話で重要なのは、メイド服が無料になるという1点のみ!



「契約は成立です!」


 クリスお姉ちゃんの手を取り、ガッチリ握手を交わした。



「はやっ!クーヤくん、何も考えないで返事したでしょ!?」

「ちょっとは考えたよ?ボクにとって大事なのは、タダで服が作ってもらえるって所だけだから!しかもクリスお姉ちゃんの評価が上がるのならお得でしかないよ!」

「クーヤくん・・・」

「あ、でも!お姉ちゃんの会社で売る方は少し変えて欲しいかも?」

「変えるってのは、どの辺のことかしら??」

「えーとねえ、本当はメイド服ってもっと白いの。これはメイド服に色気を持たせた感じのヤツなんだ~」

「む、難しいことを言うのね・・・、え~と、紙に描いて説明してくれる?」



 ベイダー工房の制服に特別性を持たせたかったばかりに、終了したと思っていた仕事が倍増してしまいましたぞ!


 でもこれはクリスお姉ちゃんの出世にも関わりそうなので、色合いを反転させたモノや、ほとんど真っ黒なゴスロリ服のことなども詳しく説明した。



「・・・すなわち、どちらかと言えばこれは成人女性が着る服なのです!」

「確かにこんな服を着ていたら、良い意味でとても目立つでしょうね」

「ベイダー工房では同じ服で揃えるつもりだけど、買いに来る人は特別感が欲しいと思うからやっぱり何種類も作った方がいいと思う!一着だけ胸のリボンが赤いとか」

「あっ!良いかも!!」



 クリスお姉ちゃんと服の話をするのも意外と結構楽しくて、思った以上に盛り上がってしまった。



「じゃあそろそろ帰るね!」

「クーヤくん一人で帰れるの!?お姉ちゃんと一緒の方が安心なんだけど・・・」

「接客を教えることが出来る人を見つけなきゃいけないの!」

「ああ、そういえば言ってたわね」

「だからとりあえずその辺のお店を見回って来ます!!」

「わかったわ。でも気を付けて帰るのよ?変な女の人について行っちゃダメよ?」

「うん!わかったーーー!!」



 なかなか大変だったけど、ここでの用事はおしまい!

 しかし『変な女の人について行っちゃダメ』って、女性限定なんかーーーい!

 

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