第219話 コピー屋さん!?

 レミお姉ちゃんの家から帰って来たんだけど、今夜からプリンお姉ちゃんはタマねえの家で寝ることになっているので、二人とは家の前で別れた。


 といっても、部屋を見せてもらったら、またすぐウチに来るんだけどね~。

 プリンお姉ちゃんは毎日『女神の湯』で湯治しなきゃいけないし。



 ガチャッ



 リビングに入ると、ソファーの上であぐらをかいて、暇そうにしていたレオナねえを発見した。


 ・・・フムフム。


 寝ぐせがついたままだし、どう見ても寝すぎてボーっとしてる状態ですね。

 ならば、悪そうなお兄さんに頼まれていた仕事をやらせるしかないでしょう。



「ただいまーーーーー!はい、レオナねえ!」

「んあ?・・・そういや役所に行ってたんだったか。おかえり~」


 麻雀ノートを手渡した。


「何だこれ?麻雀ノートか?」

「原本は綺麗なまま置いといた方がいいから、レオナねえ・アイリスお姉ちゃん・ナナお姉ちゃん・悪そうなお兄さんの四人分書き写してください!」

「な、なんだってーーーーー!?」

「全員に役を覚えさせれば、次麻雀打つ時サクサク進むようになるよ。ノートが一冊じゃ勉強するにも順番待ちになっちゃうでしょ?」

「確かにクーヤの言う通りだ。しかし四人分かよ・・・」


「ただいまー」


 あ、ティアナ姉ちゃんが学校から帰って来た。


「おかえり~!」

「おかえり」


 ティアナ姉ちゃんは真っ直ぐ手を洗いに行ったので、話を戻した。


「悪そうなお兄さんがね、黒眼鏡だけじゃなく麻雀セットも作るんだってさ!」

「マジか!?」

「そうなるとルールブックも必要でしょ?だから書き写してくれって頼まれたの」

「確かにモノだけあっても、遊び方がわからなきゃ話にならんもんな」

「だからレオナねえの仕事は重要なのです!」

「しゃーねえなあ、頑張って書くか~」


「なんの話?」


「ん?ああ、今から麻雀ノートを四人分書き写さなきゃならんくなった」

「四人分っていっても10ページくらいだよ。いけるいける~」


 ティアナ姉ちゃんがこっちに歩いて来たので、レオナねえがノートを渡した。


「何これ!?謎の絵がいっぱい描いてあるよ?」

「ボクが頑張って描いたんだよ!」

「ティアナにも麻雀を覚えてもらわねえとな!」

「まーじゃん?」



 まだ約束の時間を過ぎてないから実物を見せられないので、レオナねえが身振り手振りで必死に麻雀の面白さを伝えた。



「へーーーーー!後でちょっとやってみようよ!」

「ただ3時間くらいやらんと、面白さがわからないかもしれん」

「レオナねえ以外みんな初心者だもんねえ」

「それで、このノートを書き写すんだったよね?」

「1冊のノートを回しながら打つと、時間が掛かってしゃーねえんだよ」

「書き写すのが大変だったら、『コピー屋さん』に頼むといいよ?」


 何だそりゃ?


「あああああーーーーーー!!そういや、そんな所があったな!」

「ねえねえ、何それ!?」

「私、漫画を描いてるでしょ?でも1冊描き上げたとしても、漫画の本として売るには何冊も描き写さなきゃならないよね?でもそんな大変なことしてられないから、漫画家はみんな『コピー屋さん』を使うんだよ」

「そんな便利なお店があったのかーーーー!」

「お店っていうか、人?」


 そういうことが出来る職業クラスの人か!

 学者的な職業クラス持ちなんかな?世の中には便利な人がいるもんだ・・・。


「マジで素晴らしい情報だ!明日コピー屋さん行ってみるわ。場所を教えてくれ」

「今どこが空いてるかな?あっ!クーヤくんが書いたルールブックって、一人一人持ってた方がいいよね?どうせだから10冊くらい作っちゃわない?」

「そうだな~。ライガーのおっちゃんにも麻雀を覚えさせてえしな」



 というわけで、明日はパンダ工房にお土産を持って行くついでに、『コピー屋さん』にも寄ってくことになりました!


 そしてパンダ工房には、馬車を作ってるだけあって革細工職人もいるので、そこで『グリフォンの鞍』を作ってもらうつもり。


 どうせお土産を渡す時に、セルパト連邦に行った手段が問題になるからね~。

 グリフォンを披露することで、逆にドラゴンの存在を隠せるのですよ。


 ライガーさんベイダーさんには白状してもいいんだけどさ、わざわざ国家機密級情報を自分から話し出すのもおかしな話だからね。


 何かバレるようなアクシデントでもない限りは、言う必要も無いでしょう。



 それからクリスお姉ちゃんも帰宅し、プリンお姉ちゃんもウチに戻って来たので、夕食の後に恒例となった湯治を開始した。




 ◇




 カポーーーン



「もう!人に身体を洗われるのって、本当に恥ずかしいんですからね!」

「タマねえがいればもっと本格的な丸洗いが出来たのですが、ボク一人ではまだまだ力不足ですね。早く一人前の『丸洗い師』になれるよう精進します!」

「いえ、精進しなくていいです!はぁ~、天使様が一人前になるまでに怪我を治さなきゃ・・・」



 やはり一人では女騎士を屈させることは出来ないのか!?

 タマねえとのコンビプレイなら、彼女はもっとフニャフニャになったハズなのに。


 本当に情けない。自分の力不足を痛感するよ・・・。



 脱衣所の鏡の前でプリンお姉ちゃんの髪をドライヤーで乾かすと、やはり美肌効果を実感できるのか、彼女はとても良い笑顔になった。


 プリンお姉ちゃんは長年に渡って騎士団や冒険者といった生活をしてたから、確かに最初は少しガサついた肌をしてたかもしれない。


 でも今はしっとり滑らかのスベスベお肌だ。

 そりゃあ笑顔にもなるってもんだよね~。


 あ、そうだ!

 クリスお姉ちゃんに頼んで、彼女の装備品を女性らしくしてもらうんだった。


 怪我が治るまでは戦闘も出来ないので、今は鎧なんか装備してないんだけど、機能性を重視した服を着ていて、あまり女の子っぽい感じじゃないんだよね。


 まあ好みの問題もあるから強制はしないけど、クリスお姉ちゃん直々にコーディネートしてもらった服をプレゼントしようかな?


 彼女ならきっと、プリンお姉ちゃんに似合う服を用意してくれるハズ!

 鎧コーディネートの方は出来るかどうかわからんけどね。


 よし、近いうちにクリスお姉ちゃんのお店に突撃しよっと!



 リビングに行くと、お母さん・クリスお姉ちゃん・レオナねえ・ティアナ姉ちゃんの四人で麻雀卓を囲んでおり、リリカちゃんもお母さんの膝の上に乗っていた。



「なるほど、遊び方が少し分かってきたわ!」

「でも確かにノートが一冊しか無いんじゃ時間かかるね」

「あーーーっ!リリカちゃん、それは三つ揃ってたから捨てちゃダメなのよ~」

「えーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「わははははは!しょうがねえな~、今捨てた牌は戻してもいいぞ!」



 とまあ、夕食後にワイワイ楽しそうに遊んでる家族達を見て、こういうのも意外とアリなのかもしれないと思いました。


 ・・・あの女性達、麻雀を打ってるんですけどね!

 

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