第142話 クーヤちゃんの秘密
夕食後、我が家のリビングに家族のみんなとタマねえが集結した。
ぺち子姉ちゃんはパンダ工房の警備があるので今日は家にいないけど、すでに秘密を知ってるから全く問題なしだ。
すなわち、吊し上げられタイムの始まりです!!
「・・・というわけで、各門にカロリーゼロを置いたのはクーヤだったんだ」
「だから可愛いカロリーゼロだったのね~」
「かわいい!クーヤあれだして!!」
「いや、ここで呼び出したら天井を突き破っちゃうよ!」
「可愛いと言っても、見た目が怖いから変な感じだったわね」
「ちょっと待って!カロリーゼロを召喚したってのは、クーヤくんならやりかねないから納得なんだけど、魔物を召喚獣にするには召喚士が自分一人の力だけで倒さなきゃダメって聞いたよ?」
さすが理論派ティアナ姉ちゃん。早速ぶっ込んで来ましたね・・・。
「ティアナ、良い所に気が付いたな!」
「こんな小さくて可愛い子が、何をどうしたらあんなのを倒せるの??」
「クーヤ、カロリーゼロはみんなが見てるんだ。こればっかりはちゃんと説明してもらうぞ?」
「ぐぬぬぬぬ・・・」
こうなったらもう、ゴーレム戦での使用武器の説明をするしかないよね。
誤魔化すことは出来るけど、もう家族にあまり嘘はつきたくないし。
「わかった。今から何を使ってカロリーゼロを倒したか見せるけど、もしかしたらビックリするかも?」
「デカいのか!?」
「すごく小っちゃいよ」
タマねえに視線を向けると、ボクの目を見て一つ頷いた。
「カブトムシ全員召喚!」
5匹のカブトムシが、あひるポンチョにしがみついた状態で呼び出された。
「・・・何も出て来ないんだけど?」
「どういうことかしら??」
「あーーーーーーーーーーーー!!なにそれかわいい!!」
リリカちゃんが駆け寄って来て、カブトムシを1匹奪われた。
「あっ!よく見るとクーヤくんの服に虫がくっついているわ!」
「あらあら~!どこで捕まえて来たのかしら~?」
「虫?これが今の話にどう繋がるの??」
レオナねえに目を向けると、口を半開きにして固まっていた。
そして恐る恐る近付いて来る。
「これって・・・、ガジェムじゃねえのか?」
それを聞いたティアナ姉ちゃんの眼鏡がずり落ちた。
「ガジェムって・・・、え、嘘っ!これがガジェムなの!?あのお屋敷を穴だらけにした、滅茶苦茶危険な魔物じゃない!!」
「レオナねえ正解!ガジェムだよ」
「こんなのどうやったら倒すことが出来るんだ?目で追えない速度で大木や壁をぶち壊すような危険極まりない奴だから、その通り道にすら誰も近付かない程なんだぞ!っていうか、その姿を見たことが無い冒険者の方が遥かに多いくらいの魔物だ」
「でもレオナねえは見たことがあるんだね」
「木陰で休んでいた時にたまたまな。『何だこの虫は?』と思って見ていたら隣の木から派手な破壊音が聞こえてそのまま倒れたんだ。五つの穴を見た時にようやくガジェムの通り道にいた事に気付き、慌てて逃げ出した嫌な思い出があるんだよ!」
わかります!そんなのボクにとっては日常茶飯事でしたよ!!
しかし、当たらなければどうということはないのです。
みんなの視線がボクに集まったので、説明を始める。
「ボクって街の南にある酷い屋敷に住んでたでしょ?そこで毎日アイテム召喚しながら暮らしてたんだけどさ」
アレはアレで楽しく暮らしてたんだよね~。
傍から見たら頭のおかしな子供だな。
「ある時鉄板が出ちゃって、部屋が狭くなって困ってた時があるの!」
「ああ!いつだったか床に大穴を開けたヤツか!」
「うん。アレとまったく同じやつ!!」
当時はストック出来ることを知らんかったのよね~。
「それでね、ある日お出掛けして屋敷に戻ったら、鉄板にガジェムが5匹突き刺さってたの!そこでボクは悩みました。この虫の死骸どうしよう?って」
そこまで聞いて察したレオナねえが、ハッとした顔になった。
「そうか!ラーメンを召喚獣と呼ぶのはそういう理由からだったのか!」
「レオナねえ大正解~!アイテム召喚で呼び出した鉄板は、ボクの召喚獣扱いだったの!だから鉄板に負けたガジェムを全部召喚獣にすることが出来たのです!!」
カブトムシに夢中になっているリリカちゃん以外の全員が納得したようだ。
「ガジェムを召喚獣にした人なんて他に誰もいないんじゃない?すごいね!」
「運が良いというか何というか、クーヤくんってホント謎生物よね・・・」
「お母さんね~、そんなお屋敷に住んでいたのがすごいと思うのよ~」
それは自分でも思っております!
野宿した方がまだ安全って、色々とおかしいよね。
「でね、ガジェムを飛ばしてカロリーゼロをいっぱい倒したのです!」
長い説明で額に浮かんだ汗をタマねえが拭いてくれた。
「・・・どこで倒したんだ?」
安心した所で、名探偵レオナの鋭い質問が飛んで来た。
「えーと・・・、屋敷の南にある森を抜けると岩場があって、そこにカロリーゼロがいっぱいいるのです!」
「あの屋敷の南にある森だよな?そこには非常に危険な森の主がいるハズだが?」
拭いてもらった額に、再び汗が浮かんだ。
タマねえの目が『もう隠し通せない』と言っている。
・・・いいでしょう。どうせならば攻めに転じてみせようぞ!
「ねえお母さん!もう1匹ペット飼っていい?」
「え?もう1匹?」
みんなの視線がパンダちゃんに向いた。
「メルドア召喚!」
注目のパンダちゃんの隣にメルドアを召喚。
『オン』
その大きくて精悍な顔立ちの獣を見た全員が固まった。
「メルドアジェンダ・・・」
表情が固まったレオナねえとは対照に、リリカちゃんの目がキラキラと輝く。
「わあ~~~~~~~~~~~!かわいーーーーーーーーーーーーー!!」
そしてまったく怖がりもせず、メルドアのモフモフした身体に抱きついた。
そんな姿を見たタマねえも笑顔になる。
・・・うん。リリカちゃんって将来大物になる気がしますよ?
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