第352話 アニメがしたいです!
話の流れでパラパラ漫画を描くことになり、完成したパラパラ漫画をみんなで回し読みして盛り上がっていたのですが、気付くとモコねえが静かになっていた。
そしてボクを見て、彼女は言った。
「クーヤ先生・・・、アニメがしたいです!」
いや、なんでちょっと泣きそうな顔になってるんですか!
しかもその言い方!あの有名な、『バスケがしたいです』って名セリフみたいじゃないですか!それにクーヤちゃんは、あの先生みたいに太ってないです。
「モコねえ、作りたいならわかるけど、『アニメがしたい』じゃ意味不明なのです!しかしアニメかぁ~。無理とまでは言わないけど難しいんじゃないかなあ?少なくともDVDを作るのが不可能だから、そこにあるDVDプレイヤーが使えません」
「エエエエエーーーーーーーーーーーーーーー!?」
「なのでアニメを作る前に、まずそれを見るための道具を作る必要があるのです」
「そんなの絶対無理じゃないですか!」
「ねえクーヤちゃん。そのアニメを見る道具、ちょっと開けてみていいかしら?」
レミお姉ちゃんが話に割り込んできた。
「いいですけど、見ても絶望するだけですよ?このDVDプレイヤーは時計よりも遥かにヤバイ一品なのです」
ヤバイ一品と聞いたレミお姉ちゃんの目が大きく開き、そして輝き始めた。
彼女はあの複雑な時計の構造を理解した真の天才ですので、無理だと言われた方が燃えるタイプなのかもですね~。
大きさの違うドライバーが6本くらいセットで入ってる『ドライバーセット』を召喚し、レミお姉ちゃんに手渡した。
「この中に入ってるドライバーのどれかを使えば、ネジが回せるハズなのです」
「へーーーーー!開けるための道具があったのね!」
ボクが説明するまでもなく、すぐに使い方を察したレミお姉ちゃんが、DVDプレイヤーのネジを外していってパカッと開いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そのまま5分程フリーズしていたレミお姉ちゃんだったが、素人目にもわかる基盤の複雑で繊細な作りを見て、ボクの言った絶望の意味を理解した。
「これを作った人は化け物ね・・・。そもそも人なのかしら?」
おお、流石レミお姉ちゃん!いきなり鋭い考察力なのです。
「恐ろしいのは魔法の痕跡が無いところね~。技術力だけでここまでのモノが作れるなんて、実際に見ても信じられないくらいだわ!」
タマねえ、モコねえ、レミお姉ちゃんのママの三人も一緒にDVDプレイヤーの中を覗いてるんだけど、もちろんこんなの誰一人理解できません。
「正直、真似する気にすらならないわね。これなら全く違うやり方で一から作った方が全然マシよ!」
「ボクもそう思うのです」
「それで、この丸いヤツにさっきのアニメが入ってるのよね?」
「ですです」
「すなわち、作ったアニメを保存する媒体も用意する必要があるのね・・・」
真似するのを諦めたのはいいけど、同時にハードルも上がり過ぎちゃったから、別の方向からアドバイスした方がいいかな?
DVDプレイヤーに囚われると絶望しかないのです。
「きっと今の流れで難しく考えてしまっていると思うのですが、風景を記憶するアイテムさえ作ることが出来れば、たぶん何とかなるのです!」
全員がボクに注目した。
「たとえば・・・、このコップが記憶できるアイテムだとします。じゃあレミお姉ちゃん、ここをポチっと押してください!」
「んんん??じゃあ、ポチッ!」
とててててててて
「いちにーさんしー!いちにーさんしー!」
とててててててて
「はいポチッ!これで記憶完了です。ボクがあっちまで移動して体操して戻って来た姿を、何度でも見ることができるようになりました!」
レミお姉ちゃんが、ぐぬぬって顔になった。
「どういう・・・、あっ!今の一連の行動を記憶したってことね!?」
「ですです!そういうアイテムさえあれば、パラパラ漫画を記憶するだけでアニメの完成なのです!」
実物が無いので、ちょっと理解するのが難しい変な説明になっちゃったけど、すぐにみんな『あーーーーー!』って顔になった。
「なるほど・・・。記憶する道具かぁ~」
「あとは全力でパラパラ漫画を描けばいいってことですよね!?」
「ママにも理解出来たわ!そんな道具があれば素晴らしいわね~♪」
しかしこの中に一人、そんな道具に心当たりがある人物がいた。
「それってクーヤの家にあるカメラのこと?持って来る?」
「「・・・え!?」」
当然みんな驚いた。
「あ、あるの!?」
「実はボクの家にあるのですよ。家族みんなで使ってるから貸すことはできないのですが。あと記憶が消えちゃうと困るので、開けて中を見るのも無理です」
「それでも見たいわ!」
「じゃあ持ってこようか?1時間くらいかかっちゃうけど」
「タマ一人で行く。10分で戻る!」
「うぇえええええええ!?暴走娘は危険なのです!」
ボクの忠告などガン無視され、タマねえが家を飛び出して行った。
そして右手にカメラを持って帰って来た。
「ふ~、何分だった?」
「えーと、13分くらいかな?」
「ぐぬぬぬ!クーヤのお母さんとの会話でタイムロスした。無念!」
「いや、十分アホみたいな速さですから!」
タマねえからカメラを受け取り、動画撮影モードに切り替えた。
じゃあ動画撮影スタート!
ポチッ
「これはカメラといって、本来の姿は風景を絵のように記憶する道具なのですが、技術の進歩により、動く風景を記憶することまで可能となりました!」
お姉ちゃん達はカメラを向けられてるわけだけど、初めてのモデルだから誰も緊張していませんね。
「言ってる意味は分かるわ。本当に凄いわね!」
「それがあればアニメが作れるですか!?」
「大変だとは思いますが、頑張れば作れるんじゃないかって気はします」
「その前に、風景を記録する道具なんて革命じゃないかしら?」
「あのカメラは1個しか無いからすごく貴重!」
隣の部屋から、レミお姉ちゃん専属ハムちゃんが鼻をクンクンさせながら出て来たので、レミお姉ちゃんの前に移動するよう指示を出した。
そして軽くハムちゃん体操をしてもらったところで録画を止めた。
最後にタイマーをセットしてから、クーヤちゃんも画面に飛び込みパシャリ。
「ハイ注目!今の会話がカメラに記憶されました!」
「「おおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
「まずは普通の静止画から!」
最後に撮ったクーヤちゃん入りの写真をみんなに見せた。
「凄いわ!風景を記憶できる道具がすでに存在したなんて!!」
「おおおおお!この中に全員入ってるですよ!?」
「まあ!こんなステキな道具があったのね~!!」
「クーヤもちゃっかり入ってる!」
写真の段階で、すでにみんな大興奮だ。
初めて写真を見た時って、自分もこんな感じだったのかな?
「じゃあ、お待ちかねの動画を披露するのです!」
カメラの小さな画面で見せているので、ボクだけ向かい側に移動した。
動画スタート!
『言ってる意味は分かるわ。本当に凄いわね!』
『それがあればアニメが作れるですか!?』
『大変だとは思いますが、頑張れば作れるんじゃないかって気はします』
『その前に、風景を記録する道具なんて革命じゃないかしら?』
『あのカメラは1個しか無いからすごく貴重!』
カメラからさっきの会話が聞こえて来て、タマねえ以外の全員の目が大きく開く。
そしてハムちゃんが画面に飛び込んで来た。
「本当に少し前の会話が記憶されているわ!!」
「あははははは!ハムちゃんが体操を始めたですよ!」
「凄いわ!!これは革命なのよ!!」
「しまったーーーーー!さっき走ったから、タマの髪が乱れてる!」
「にゃはははははははははは!」
やっぱり天才のレミお姉ちゃんが一番衝撃を受けているみたいです。
レミママも『革命だわ!』と叫んでるので、カメラの凄さに感動したみたい。
実際にカメラを見たことで、天才レミお姉ちゃんが何か閃いてくれれば、モコねえの夢が叶うかもしれませんね!
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