第203話 なぜか冒険者になれました!
―――――クーヤちゃんに怯えるレドン視点―――――
「やっと理解したっス!!」
凄まじいまでの魔法攻撃を見て完全に意識が飛んでいたが、ハリーの声を聞いて我に返った。
「クーヤちゃんっていうより、飼ってるペットがヤバかったんスね!」
「「お前、全然理解してねーよ!!」」
「うぇええええ!?いや、だって・・・、魔法を撃ったのってペットの動物じゃないっスか!クーヤちゃんは後ろで見ていただけっスよ?」
コイツは馬鹿なのか?
「じゃあ逆に聞くぞ?あの動物はどこから出てきた?」
「どこからって・・・、クーヤちゃんが呼んだんじゃないっスかね?」
「そうだ。何も無い所からな」
ハリーは顎に手を当てて考えている。
「・・・どういうことっスか?」
「何も無い所から魔物を呼び出す職業って何があると思う?」
「えーーーと、テイマーは違うか。あっ、ネクロマンサーっスか!?」
「クーヤちゃんが呼び出したのは骨でも死体でも無かっただろ」
「可愛い動物っスね。いや魔物?・・・あーーーっ、召喚士だ!!」
「正解だ」
「でも召喚士なんて雑魚じゃないっスか!」
うん。コイツは馬鹿だな。
「その雑魚が今何をした?」
「可愛いペットの魔法で、空き地をメチャメチャにしたっス!」
「お前はあの致死量を遥かに上回る魔法を浴びて、耐えられるのか?」
「無理に決まってるじゃないっスか!!」
「どこが雑魚なんだ?」
ハリーが目を大きく開いた。
「全然雑魚じゃないっスね!」
「あの魔法部隊を従えている時点で、とんでもねえ化け物なんだよ!」
馬鹿ハリーがようやく気付いたのを見て、切れ者のウィンダルが会話に加わる。
「ちょっと待て。レドンらを囲んだ魔物って、あの可愛い魔物なのか?」
「ふざけんな!可愛い魔物に囲まれたくらいで俺らがビビるかよ!」
「だよな?朝聞いた話では、カロリーゼロがいたとか言ってたような気がする」
「カロリーゼロ『も』いたんだ。他にもヤバイ魔物がわんさかだ!」
「召喚士って確か、自分一人の力だけで魔物を倒さなければ召喚獣に出来ないハズだろ?」
「そう聞いている」
「すなわちあの子は、それらを単独で撃破する力を持っているのか・・・」
どう見ても普通の子供だが、見た目に惑わされてはいけない。
外見と中身がこれほど一致しない人物を見たのは、俺も初めての経験だ。
「今見た光景に、もう一つ恐ろしい事実が含まれていることに気付いたか?」
「恐ろしい事実?」
「馬車屋をやっている知り合いの召喚士が言うにはな、馬を3体呼び出すくらいで魔力の限界だそうだ」
「!?」
「今ハムちゃんを何体召喚したよ?カロリーゼロを含む魔物の軍団を召喚するのに、一体どれほどの魔力が必要だ?」
「ば、化け物だ・・・」
「わかるな?クーヤちゃんにだけは絶対に逆らうな!」
俺らの場合、もうマイナスの印象を持たれているわけだけどな。
これ以上関係が悪化しないよう、細心の注意を払わねえと・・・。
ふとハリーを見ると、顔を青くさせてガタガタ震えていた。
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―――――そろそろ帰りたいクーヤちゃん視点―――――
ナナお姉ちゃんが土魔法で朽ち果てた空き地の整地をしてくれたので、全力で感謝した後、抱きかかえられながら冒険者ギルドへと帰って来た。
「この子って何歳なんだ?」
「・・・ん?確かクーヤちゃんは7歳だよ!」
「7歳だと!?ミミリア王国では7歳から『祝福の儀』を受けられるのか?」
「違うよ。外国生まれだから早いんだもんね~!」
「あい!」
「外国生まれなのか。しかしあれ程の魔力・・・、どこかの王族の血でも引いているとしか思えん。一体何者なんだ?」
何だかギルマスの思考が変な方向に行ってませんかね!?
「ギルマス、妙な詮索はヤメてもらおうか」
「もし本当に滅亡した王族の生き残りだったら、国ごと争いに巻き込まれるぜ?」
「スマン、ただの好奇心だ。今のは忘れてくれ!」
レオナねえと悪そうなお兄さんコンビって、瞬時に牽制の言葉が出てくるよね。
「っていうかぜんぜん王族じゃないし!普通の一般家庭のおっさんの血を引いているであります!」
ショタの一言で、ギルマスがホッとしたのがわかった。
「そうだ、坊主に冒険者カードを作ってやろうか?決まりだから登録料の50000ラドンは必要だが、カードがあれば色々と便利だぞ?」
「えええええ!?リナルナって子供でも登録出来るの?」
「ボクまだ7歳なんだけど・・・」
「当然通常では有り得ない。しかし実力はさっき十分見せてもらったからな!ギルドマスター権限で特別に登録を許可するぞ!」
「本当に!?じゃあタマねえも一緒に登録しようよ!」
「クーヤが登録するならタマも登録する!」
「ちょっと待った。嬢ちゃんは何歳だ?」
「5月で13歳」
「小学校を出たばかりか。卒業式で貰ったバッジは持っているか?」
「これのこと?」
よく見ると、タマねえのポンチョにバッジが付いていた。
「おっ、ちゃんと卒業しているな!よし、いいだろう!」
「付けてきて良かった!」
やったーーーーー!なんか知らんけど、7歳で冒険者になることが出来ました!
ミミリア王国でも実力を見せれば登録出来るのかもしれないけど、派手にやらかして貴族に目を付けられるのも嫌だしな~。
まあ地元では大人しくしているのが最善だろね。
外国なら変なしがらみがないから楽でいいな~。
ギルド職員に書類を渡されて唸っていると、ナナお姉ちゃんがショタの代わりに書いてくれた。そしてタマねえの分はアイリスお姉ちゃんがササッと書いてくれた。
二人分の登録申請時間が追加されてしまったので、奥の部屋で『ローグザライア』を出してから、1000万をどうするか仲間内で話し合った。
「アタシらは本当に何もしてないんだから、金を受け取るわけにはいかない!」
「ボクだって何もしてないし!ドラちゃんに頼んだだけなんだから、みんなで山分けしようよ!」
「しかしだな・・・」
「おい!さっきから話が平行線を辿っていて、これじゃいつまで経っても終わらんぞ。それぞれに100万ずつ振り分け、残りはクーヤの取り分ってことでいいだろ」
「うん、そのくらいがちょうど良い妥協案じゃない?」
「エーーーーーーーー!ボクだけめっちゃ多いんだけど!!」
「じゃあ、クーヤちゃんにみんなの家族のお土産を買ってもらおうよ!」
「よし、決まりだな!」
とまあ、こんな配分に決まってしまいました。
しょうがないから、香辛料以外にも色々買わなきゃですね!
そしてようやく冒険者カードが出来たと聞き、受付の窓口へと移動。
カードの隅にある小さな四角い部分に血液を垂らせば完成だと言われたので、言われた通りに従った。
「・・・・・・・・・」
「なんか感動!」
「タマねえ、ちょっとカード見せて」
「ん?」
タマねえの冒険者カードを見ると、名前欄に『タマ』と書かれていた。
しかし自分のカードを見ると、名前欄に書かれているのは『クーヤちゃん』だ。
「これって絶対ナナお姉ちゃんの仕業でしょ!!」
「クーヤは何を一人で憤慨してるんだ?」
「相変わらず意味不明なガキだな」
「冒険者カードを貰って憤慨する要素なんてあるの?」
「えええ!?何で私怒られてるんだろ・・・」
みんなにボクの冒険者カードを見せた。
「「ぶわーーーーーーーーーーっはっはっはっはっはっはっは!!」」
悪気は一切無かったと思うんだけどさ、大事な登録申請書に『クーヤちゃん』って書くのヤメてよね!!
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