第307話 脱獄Ⅱ
ボクの決意表明を聞いたマグロのおっちゃんは、何とも言えない顔になった。
「気持ちは分かるが、ジグスレイドの構成員って全部で3000人以上いるんだぞ?例えクーヤが強い召喚獣を何体も所持していたとしても、ちょっと数が多すぎる」
なにィ!?あの中高生らは2000人って言ってたのに!!
まあでも1000人くらい増えても何とかなるかな?
「一人一人が冒険者くらい強かったりするの?」
「いや、真の実力者はあんな組織になど入らん。兵士になれなかった者、軍に入隊できても規律に従えなかった者、あとは冒険者稼業に行き詰った半端者なんかが集まったような感じだな」
「じゃあ余裕ですね。全員ボコボコにします」
「いやいやいやいや!冒険者崩れでも、そう簡単にはいかないと思うぞ?」
そうかなあ?魔力無制限のメルドア&レグルス&クマちゃんを倒せるヤツなんて、冒険者崩れなんかには一人もいないと思うけど。
「とにかく大人しく牢屋に入っててもしょうがないので、そろそろ脱獄するよ!」
「そんな簡単に此処を出られるのか?」
・・・さてどうしようか。
脱獄する時に派手な音を出しちゃうと、前みたいに人がワラワラ集まって来るだろうから、敵を殲滅するまでずっと戦闘することになっちゃうよね。
よし、今回は静かに脱獄することにしよう!
「マグロのおっちゃん、ちょっと後ろに下がって~」
「後ろに?いや、そっちは魔物がいっぱいいて怖いのだが!」
「あ、出しっ放しだった!」
トラを全部消した。
「お、消えた!」
マグロのおっちゃんが後ろに下がった。
「鉄板!」
おっちゃんの牢屋との間にある鉄格子の上側に鉄板を出した。鉄格子が鉄板を貫通しているように見えるけど、鉄板部分にあった鉄格子は今ので消失した。
「はあ!?」
一度鉄板を消して、今度は正面の鉄格子の上側に鉄板を出す。
これであとは下側に鉄板を出せば脱出できるんだけど、今回はしない。
ガランガラーンと甲高い音が鳴り響いたら、あの看守が来ちゃうからね~。
「マグロのおっちゃん、この鉄格子を握っててくれる?」
「意味が分からん!!今一瞬出したのって鉄板じゃないのか?」
「ピンポンピンポーン!正解です!」
「いや、おかしいだろ!あんな魔物がいるかよ!!しかもそれを
「いいから鉄格子握って!早く!」
「頭が痛くなってきた・・・」
そう言いながらも、おっちゃんが鉄格子を握った。
「コースター召喚!」
カポッ ポテッ
「うおっ!外れたぞ!」
「じゃあ次はこっちの鉄格子を握ってね」
同じことをもう2回繰り返して、おっちゃんが通れるほどのスペースが出来た。
地球上のアイテムを召喚すると、座標がかぶった部分が消え去るという謎の現象が起きるので、別に鉄板じゃなくたって切断することは可能なのです。
「なるほど。前回もこうやって脱獄したのか・・・」
「もう通れるよね?こっち来て~」
マグロのおっちゃんが、鉄格子の隙間からこっちに入って来た。
「こりゃいい武器だ!使えるぞ!」
マグロのおっちゃんが、鉄格子を切断したことで手に入れた鉄の棒をブンブン振り回している。
「もっと重い鉄の棒も出せるよ?重すぎて下に落とすのは絶対禁止だけど」
「クーヤのことだから本当にクソ重い棒を出しそうだな。いや、これで十分だ!」
「そう?」
諜報部隊所属って言ってたから、戦士系の職業じゃないのかもだね。
「じゃあ次は、こっちの鉄格子を握ってください」
「わかった」
正面の鉄格子も3本外し、牢屋から出ることに成功した。
「やっぱり他の牢屋には誰もいないね」
「いたらとっくに会話に参加してただろうしな」
「他に誘拐された子供達がいたら助けてあげたかったんだけど」
「ああ、どこか別の場所に幽閉されているのかもしれん。ただこの建物内にいるかどうかは不明だぞ?」
いるかどうかわからない拉致被害者をコソコソ探すのって、すごく時間が掛かりそうだなあ。ジグスレイドを叩きながら、正々堂々と探す方が良いのかな?
「ジグスレイドのヤツらって、この建物に何人くらいいるの?」
「正確には分からんが、大半が首都に潜伏中だから、多くても500人くらいか」
中高生やるじゃん!
総人数はハズレだったけど、こっちの人数は正解だったか。
「もう面倒臭いから、誘拐された子供達は戦闘しながら探そう!」
「奴等と戦うつもりなのか!?」
「でも殺さない予定なんで、ジグスレイドがボコボコになったら、マグロのおっちゃんの方で処分してもらえる?好きにしていいから」
「なにーーーーーッ!俺に尻拭いさせるつもりだったのか!王家が動いていることをまだ相手に悟られたくなかったのだが・・・。うーむ、まあ何とかしよう」
そもそも本当にボクがヤツらと戦えるのか半信半疑だろうから、今の段階じゃ考えも纏まらないか。
でも国のゴタゴタなんか知ったこっちゃないです。
子供の尻拭いをするのは大人の宿命なのです!
えーと、どうしよっかな~。
そこのドアを通らなきゃダメだから、まだいっぱい召喚するのは早計か。
「メルドア、レグルス、あとクマちゃんも召喚!」
シュシュシュッ
クーヤちゃん四天王の内の3体を召喚した。
ちなみに四天王の残り1体はドラちゃんです。
彼は異次元の強さだけど、大きいからちょっと使い勝手が悪いのです。
「おわあああああッ!!な、何だ、この見るからにヤバイ魔物共は!!」
「ちょ、声が大き過ぎです!」
『・・・あ?何だぁ?』
ドスン ドスン ドスン ドスン ドスン ドスン
ガチャッ ガチャガチャッ
マグロのおっちゃんが騒ぐから、悪者看守が来ちゃったじゃないですか!!
「誰が騒いでいいと、・・・はあ!?ま、魔物だと!?」
イカン!目撃者は消さなきゃ!!
「クマちゃん、やっておしまい!」
ダダッ ダダッ ダダッ
ドガッ! ゴシャーーーーーーーーーーン!!
デカくて太っている看守だったが、クマちゃんアッパーをモロにくらって天井に衝突し、凄い音を出しながら下に落ちて来た。
「嘘だろ・・・」
「おぉ、ジーザス!手加減してって言うの忘れてた」
殺さない予定だったのに・・・、アレ生きてんのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます