第32話 なんでそこにいるの!?
ぺろぺろぺろぺろ
「・・・・・・・・・」
ぺろぺろぺろぺろ
「・・・・・・・・・」
いや、何なんだこの状況は?
広場に来たらまたティアナお姉ちゃんとリリカちゃんがいて、今日は惣菜パンをご馳走になったんだけど・・・。
ぺろぺろぺろぺろ
「・・・・・・・・・」
なぜかさっきからずっとリリカちゃんにぺろぺろされているのです!
手の甲くらいならまだいいんだけど、頬や首はちょっと勘弁して下さい!!
「ティアナお姉ちゃん」
「なあに?」
「リリカちゃんが、ずっとぺろぺろしてくるんだけど・・・」
「あ~、クーヤくんのことが気に入っちゃったみたいね~。リリカって気に入った物をぺろぺろする変な癖があるんだ」
なんだその変な癖は!!
気に入られたのは別に良い、というか嬉しいことなんだけどさ!幼女にずっとぺろぺろされるのは初めての経験なので、とにかく困惑の極致なんですけど!!
昨日帰り際に赤いリボンをプレゼントしたせいなのかな?その赤いリボンを今日も着けて来てくれたのだから、おそらく気に入ってくれたのだとは思うけど。
しかしマジで困った。いつになったら解放してくれるのだろう・・・。
◇
結局最後まで、ぺろぺろから解放されなかった・・・。
飼い犬でもここまで長時間ぺろぺろはして来ないと思うんだ。
でもリリカちゃんの前世は絶対犬だな!これは当たってる自信があるぞ。
ガチャッ
「あっ、しまった!」
精魂尽き果てていたせいか、裏の小川に寄るハズが、気付いたら屋敷の寝室まで来てしまっていた。
失敗こいたーーー!でもぺろぺろされまくったし、身体は洗いたい。
いや、リリカちゃんに舐められて汚いと思ってるわけじゃないんだけど、さすがにずっとそのままでいるのはな・・・。
ギギーーーッ
裏の小川に行くため、玄関のドアを開けた。
壊れかけの玄関ドアだけど、外から虫がいっぱい入って来るのは嫌なので、一応ギリギリまで閉めているのだ。
・・・ん?
何か白い物が見えた気がして立ち止まった。
「よいしょ!」
そこに見えたのは、屋敷を囲んでる塀の崩れている部分を乗り越えようとしている幼女の姿だった。
ちょっと待て!なぜリリカちゃんがそこにいる!?
もしかして俺の後をついて来ちゃったのか!!
いつもならば、防衛のために目立つポンチョを手提げ鞄に入れて屋敷まで歩いて来てたんだけど、今日はぺろぺろ攻撃に精魂尽き果てていたのでそのまま帰って来た。
質素な服ならば見失ってたかもしれなかったのに迂闊だった!
とにかくこの屋敷は危ないから、あの子を敷地内に入れるわけにはいかない!
とてててててててて
「ちょ、リリカちゃん!何でここにいるの!?」
声で俺の存在に気付いたリリカちゃんが笑顔になった。
「あっ!クーヤだ!!」
「えーと・・・、ここは危ないから外に出よう!」
「ほえ?」
リリカちゃんが転んで怪我をしないように、手を繋いで塀の外側に移動した。
「一人で来ちゃったの!?」
「うん!」
「あちゃ~~~!絶対ティアナお姉ちゃんが心配して探してるよ・・・」
こうなったらしょうがない。出来るだけ急いで広場に戻ろう。
リリカちゃんと手を繋いだまま、街に向かって道を歩いて行く。
「一人で歩くのは危ないからダメだよ?」
「どうして?クーヤはひとりじゃない!」
ぬあ!確かにリリカちゃんの言う通りだ。これじゃあ何の説得力も無い。
「えーと・・・、リリカちゃんが突然いなくなったら、ティアナお姉ちゃんが泣いちゃうよ!今も絶対リリカちゃんを探してるよ!」
「あっ、そっか・・・・・・」
こうなったのは俺のせいなので、強く言えないし叱ることも出来ない。
むしろティアナお姉ちゃんに叱られるのを、庇ってあげるべきなのだろうか?
こういうのって難しいな・・・。
―――屋敷前の道を抜けて街に出た。
「あっ!」
少し先にティアナお姉ちゃんがいた。
心配そうにキョロキョロと周囲を窺いながらリリカちゃんを探している。
もうこんな所にまで辿り着いていたのか!
「あっ!おねえちゃんだ!おねえちゃーーーーーーーーん!!」
ティアナお姉ちゃんはリリカちゃんの声にすぐさま気付き、こっちを見て安堵の表情になった。そして駆け寄って来る。
「もうっ!一人でどこかへ行っちゃうなんてダメじゃないの!!本当に心配したんだから!!」
ティアナお姉ちゃんが心から心配していた様子が伝わったのか、リリカちゃんが涙目になっていく。
「うわ”~~~ん!おねえちゃんごめんなさ~~~い!!」
そしてティアナお姉ちゃんに抱きつき、わんわんと泣き出した。
ふ~、良かった良かった。
一時はどうなることかと思ったけど、これで万事解決でござんす!
「ごめんねティアナお姉ちゃん。リリカちゃんが知らないうちにボクの後ろをついて来ちゃったみたいで・・・」
ティアナお姉ちゃんがこっちを見た。
「ねえクーヤくん」
「ん?」
「二人はこの道を歩いて来たんだよね?」
「そうだよ!」
ティアナお姉ちゃんが、屋敷へと通じる道を見た。
「この先って確か、古いお屋敷しかないよね?」
「え!?なんで知ってるの!?」
ティアナお姉ちゃんが俺の顔を見て確信めいた顔になった。
「もしかしてクーヤくんって、あのお屋敷に住んでるの?」
・・・・・・しまった!
とうとう俺の重大な秘密がバレちまったああああああああああ!!
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