第149話 アルペジーラ捕獲大作戦

 当然ながら帰り道は、その魔物の話が中心となった。

 レオナねえ達は長期休暇が決まってるから、丁度良いタイミングなのです。



「その『アルペジーラ』って魔物はどこに行ったらいるの?」

「この街の南東にある森の中だ。馬車で3日ほどかかる距離だな」

「シャンクルなら2日で行けるんじゃない?」

「馬車は荷台があるもんね~」

「そうだな。アルペジーラの捕獲に1日かかるとして、往復5日程度の旅になる」

「うわ、結構かかるね~!タマねえは学校があるから無理か~」

「タマも行く!」


 なにィ!?


「いやいやいやいや、5日も学校サボったらマズくない?」

「大丈夫。今まで毎日ちゃんと学校に行ってたから、それくらい休んでも余裕で進級できる!」

「あー、それなら大丈夫だと思うぞ?アタシなんか年に20日くらいサボってたけど、留年しなかったし」

「普段休んでたりしてなければ、全然問題ないと思うよ?」

「でも先生にはちゃんと報告しなきゃダメだよ!」

「何て言えばいい?」

「しょうがねえな~。アタシが一緒にタマの学校行って、5日ほど狩りの勉強をさせるって言ってやるかあ」

「わお!レオナ優しい!」

「あーそれなら十分な理由になるね!」


 ああ、そっか!元の世界だと学力を身に付けさせる為の学校だったけど、この世界では、祝福の儀で授かった職業のことを学ぶための学校なんだ。


 そしてその先にある冒険者について学ぶってのは、十分な理由になるのか。


 どうもまだこの世界の常識と少しズレがあるな・・・。

 変なこと言わんように気を付けなきゃ。


「ありがとう!えーと、先生への報告は明日の朝?」

「そうだな・・・。アルペジーラが使えるとなりゃ、間違いなく狩りの効率が跳ね上がるわけだし、出来る事ならすぐにでも手に入れたい。あ、クーヤが貸してくれるならって話だが」


 レオナねえがショタを見た。


「それって森にいっぱいいるの?」

「いる!しかもたぶんアルペジーラの色によって、保管できる容量も違うハズだ」

「いろんな色のアルペジーラがいるの!?」

「白とか青とかピンクとか色々いるよね。クーヤちゃん全種類集めちゃえ!」

「耳が白と黒のシマシマとかもいるんだよ!」

「何それかわいい!タマも欲しい!」


 耳!?スライムみたいな魔物じゃないってことか!


「そんなの全種類集めるに決まってます!いっぱい捕まえたら、お姉ちゃん達みんなに1体ずつ貸し出すよ!」

「「やったーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 ただ、どんな見た目なのかだよね。本当に可愛ければいいんだけど・・・。






 ************************************************************






 そして次の日の朝。


 タマねえはレオナねえを連れて学校に行き、1週間の休暇を取って来た。

 もしかしたら延長戦があるかもしれないからね!


 ってかアルペジーラが可愛くて有能だった場合、確実に延長戦に入ると思う。

 だって歩くマジックバッグよ?それを貸し出すだけで一生食っていけるじゃんね!


 もう今からワクワクが止まりません!



「じゃあ母さん、行って来まーす!」

「行ってきまーーーーーす!メルドア、留守番任せたよ!」

『オン!』

「気を付けて行って来るのよ~!」

「かわいいのつかまえてきてね!!」

「見たことないから可愛いかどうかわからないけど頑張るよ!」

「リリカが喜びそうなのは大体わかる。タマにまかせて!」

「うん!まかせた!!」



 レオナねえがお母さんからお弁当のハンバーガーを受け取り、クーヤちゃん一行はシャンクルに乗って出発した。




 ◇




「東門もキレイなもんじゃねえか!」

貧民街スラムの人達も頑張ったんだね」

「ん?なんかこっちをジッと見ている人がいるけど・・・」


 あっ!悪そうなお兄さんじゃん!


「ボクの知り合いだよ!ちょっと待っててね!」



 タマねえと一緒に、悪そうなお兄さんの側まで近寄って行った。



「悪そうなお兄さん発見です!」

「やっぱり生きてたーーーーー!」

「お前らも元気そうじゃねえか!いや~何とか街を守り切れたな!」

「みんなの活躍のおかげだね!ところで怪我は無い?」

「この通りピンピンしてるぞ!ところでさっき東門のカロリーゼロが消えたんだが、全部回収したのか?」

「そろそろ大丈夫だと思って消したの。頑張ったゴーレム達にご褒美をあげたいんだけど、カロリーゼロって何が好きなんだろ?」

「知らんわ!石ころとかじゃねえか?」

「本人に聞いてみれば?」

「あーそっか!でも今からお出かけだから、帰って来てからかな?」


 っていうか、頑張った全員にご褒美をあげなきゃだね!


「そういや今度はどこに行くつもりなんだ?あの三人は姉貴か?」

「えーとねえ、金髪がお姉ちゃんで、あとの二人はお姉ちゃんの冒険者仲間だよ!でね、南東の森まで行って来るの」

「冒険者三人を連れて南東の森に?スタンピードが終わったばかりなのに、すぐ狩りに行くとか、お前ら元気過ぎるだろ!!」


 ごもっとも!!


「これは緊急任務なのです!急ぐ必要まったく無いけど!」

「まあ、よくわからんが無茶ばっかすんじゃねえぞ?それはともかく、カロリーゼロを置いてくれて本当に助かったぜ。貧民街スラムの住人らも黄色と黒に感謝していたぞ」

「タマねえ大変だ!全部バレてる!」

「ゴーレムは見せてないのに、何で??」

「そりゃあんだけ派手に召喚獣に乗って暴れてりゃ、バカでも連想するわ!!」


 そういえば孤児院に迷惑かけてた奴らを成敗した時に、何人かにゴーレムを目撃されていたのかもしれんな・・・。迂闊だった!


「おーーーい、クーヤ、タマ!そろそろ出発すんぞーーーーー!」

「おっと、少し話し込んでしまいました!面白いのを手に入れたら、また見せに行くね!」

「いらん!お前のはイチイチ心臓に悪いんだよ!」

「じゃあ、まったねーーーーーー!!」

「またねー」

「ああ、気を付けてな!」



 ってことで、南東の森に向かってレッツゴー!

 悪そうなお兄さんの生存も確認出来たし、これでようやく一安心です。


 ただ本当に心臓に悪い召喚獣はまだ見せていませんぞ?

 アレを見せたら心臓が爆発するかもしれんな・・・。

 

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