第148話 冒険者ギルドへGO

 ドラゴンのお披露目会も終わり、一行はそのまま家に帰る所なんだけど、レオナねえ達が冒険者ギルドに用があるとかで、帰りに少し寄ってくことになった。


 途中で森の中にゴリラくん達を放つと、お姉ちゃん達が少し驚いてたぞ。


 やっぱりゴリラもライオンに匹敵するレベルの強い魔物みたい。北門の守りに配備してたハズなんだけど、あの時はトレントが邪魔で見えなかったのかもね。



 そして冒険者ギルドに到着。



 レオナねえ達について中に入って行くと、何となく思い描いていたような雰囲気だったので、ただの付き添いなんだけどワクワクが止まらない。


 左奥のテーブルには、鎧を着たガラの悪そうな連中が昼間から酒を飲んでおり、ゲラゲラ笑いながら肉にかぶりついている。


 それとは対照的に、一番手前のテーブルに着いている冒険者数人は泣いていた。



「アイツ死んじまいやがって!ハナちゃんと結婚するんじゃなかったのかよ!」

「クソッ!モーガンなんか子供が生まれるのを楽しみにしていたんだぞ!」

「酒でも酌み交わそうって約束したじゃねえか!何でこうなるんだよ!!」

「ブランの奴だって、珍しく『今日は体調が良い』って言ってたのに・・・」



 ・・・いや、それ全部死亡フラグですやん。



 最近は死亡フラグが逆に生存フラグになったりする傾向なのかと思ってたけど、この世界での死亡フラグはガチだな。絶対言わないように気を付けよう・・・。


 泣いてる冒険者に気を取られていたら、レオナねえ達が奥のカウンターまで移動していることに気付き、慌てて追いかけた。



「やっぱ報酬は一律か~。でも何体もの大物を撃破したんだし、少しくらいは色を付けてくれんだろ?」

「クラスによって報酬金額は違いますよ?残念ながら誰がどの魔物を倒したのか判断出来ませんので、事前にお話した通りの金額となります」

「しょうがないよレオナ。私達だけじゃなくみんなが命懸けで戦ったんだし、この金額で納得しとこうよ」

「これだけあればしばらく暮らせるんだし、私は十分満足だよ?」

「ん~~~、それもそうか!わかった。じゃあカードに入金で頼むぜ!」

「ではカードの提出をお願いします」


 お姉ちゃん達三人が、カウンターの上に冒険者カードを出した。


「では少々お待ち下さい」


 メガネをかけた青い髪の受付嬢が、奥へと歩いて行った。



「まあどっちみち、しばらくは魔物の討伐依頼なんかねえだろうし、いい機会だから長期休暇にすっか!」

「正直めっちゃ疲れたから、魔物はもういらない!」

「パンダ工房の方を頑張る?」

「いや、あっちも製造が止まってる状態だから、何もやることがねえ」

「じゃあ本当に長期休暇だね!」

「クーヤちゃんといっぱい遊べるよ~!」


 ナナお姉ちゃんに抱っこされた。


「ねえねえナナお姉ちゃん!冒険者っていくつになったらなれるの?」

「小学校を卒業したらなれるよ!」

「ほうほうほうほう!じゃあタマねえは、あと数年でなれるのか~」

「クーヤと一緒でいい」

「ボクと一緒だと5年くらい遅くなるよ?ああ、進学すれば問題無いか!」

「進学なんかしない」

「えーーーーー!!それだと5年間引き篭もりニート生活じゃないですか!」

「ヒキコモニー?それが何かわからないけど、タマはクーヤの護衛をするの」


 なにィ!?

 5年間毎日小学校について来るの?いやいやいやいや、変人扱いされないか?


「クーヤと一緒にいるのはいいけどよ、この先『冒険』するようになったら、魔物との戦闘も結構頻繁にあるんじゃねえか?ギルドに所属しておけば稼げるぞ!」


 レオナねえの言う『冒険』ってのは、ドラゴンに乗って世界各地を回る『冒険』を指しているのだろう。確かにどこかしらで戦闘は発生しそうだ。


「なるほど!お金はあった方がいい。じゃあ卒業したら登録する」

「冒険者カードを持ってるだけでも便利だからな。オススメするぜ!」


「お待たせ致しました」


「おっと入金が終わったみたいだ」



 レオナねえ達三人はカードを受け取り、もう用事は無いということなので、冒険者ギルドの外に出た。



「しかしクーヤとチームを組めば、魔物から剥ぎ取った素材の運搬がスゲー楽そうだよな!召喚獣に乗せて運べるだろ」

「あーーー!それはめっちゃ羨ましいかも!お姉ちゃん達のチームにおいでよ!」

「でもクーヤちゃんがいたら、私達何もすることがなくなっちゃわない?」


 お姉ちゃん達三人は、今日あった出来事なんかを思い浮かべているようだ。

 目を閉じて何とも言えない顔をしている。


「このチビ助が凶悪過ぎてイカンな・・・」

「運搬だけしてもらうとかなら良いかもだけど、それはそれで変な感じになるね」

「素材を運ぶのに召喚獣を借りたい気持ちはあるけど、・・・ん?」


 凶悪過ぎるとか、どう見ても可愛い幼児なのに酷いこと言いますね!

 それはともかく、ナナお姉ちゃんが何かに気付いたようだ。


「うわ~、すごいこと閃いちゃった!!」

「閃いたって?」

「『アルペジーラ』だよ!倒した時に、食べた物を全部ぶち撒けるあのすごく迷惑な魔物!もしかすると、アレを召喚獣にすればいっぱい持ち運べるんじゃない?」

「「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」」


 何だそりゃ!


「大量にゲロをぶち撒ける魔物なんていらないんですけど!!」


「いや、ゲロはぶち撒けないんだ。それほど大きくない魔物なんだが、消化器官とは別に物を溜め込んでおける不思議な空間を持っていて、倒すとその空間に溜め込まれていた中身が全部ドバーっと出てくるんだよ!小動物の死体とか植物とか石ころとか、マジでいらんもんばっかだけどな!その排出量が明らかに『アルペジーラ』の数倍あるという謎生物なんだ!」


「な、なんだってーーーーー!?」



 歩くマジックバッグじゃん!そんなん絶対に欲しいぞ!!

 こりゃあ次の予定が決まったな。『アルペジーラ』の捕獲です!!

 

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