第322話 ジグスレイド滅亡

 突如現れた大量の魔物により、ジグスレイドの本拠地は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄と化した。



『ガルルルルルルルル!』

『ヴォオオオオオオオオオオ!!』

 

「クソッ、こっちに来やがったッ!」

「窓から外に逃げるぞ!」

「叩き割れ!!」


 ガシャーーーーーン


「ブホッ!」

「外も魔物だらけじゃねえか!!」

「冗談じゃねえ!あんなのに喰われたくねえぞ!」


『ギュガアアアアアアアアア!!』


 ドゴッ!


「うわああああああああ!」

「ヒイイイイィィィーーーーー!」


 バキッ グシャッ


「ぎゃあああああああああああああああ!!」



 ドゴーーーーーーーーーーン!



 その恐怖がどれほどのモノなのか、魔物のスタンピードを生き抜いたボク達にはよく分かっているのですが、手を抜くことなどありません。


 なぜならコイツらは首都を焼き払おうとしていたわけで、他者に与えようとしていた地獄が己の身に降り注いだだけに過ぎないのですから。



 サシュッ!


「ごあああああああッッ!」


 ガジガジガジガジ


「ヒ、ヒイイイイィィィィィ!!やめ、俺を喰うなアアアアア!!」



 人を食べるのは禁止してるから、トラくん達は齧ってるだけですよ。

 まあ、やられてる本人は喰われる気しかしないだろうけど。



「ふ~、意外と玄関まで辿り着く奴がいるもんだ」

「玄関から外に出ても、蜘蛛ちゃんに齧られるだけなのにね~」

「究極の二択だが、どちらかと言えばクモの方が嫌だな・・・」


 トラくんにガジガジされていた悪者は気絶したもよう。


「あ、もうすぐお昼だよ!」

「アイリス達の方はどうなってる?」

「えーとねえ、すでに持ち場を制圧したタマねえが、ナナお姉ちゃんの所に合流したってさ。プリンお姉ちゃんとアイリスお姉ちゃんはまだ戦闘中だね」

「怪我はしてないか?」

「全然余裕っぽいよ。やっぱり本拠地攻略が一番難易度高かったみたい」

「それなら良かった」



 召喚獣達が地下室の制圧に苦労しているようだったので、ボク達が直接出向いて、頑強な鉄の扉をハムちゃんの火炎放射で溶かしたり色々やっていると、他のアジトの制圧が終わった仲間達が続々と集結。


 新選組が勢揃いしたことで本拠地攻略に全力を出せるようになり、思った以上に苦戦したものの、夕方前くらいに制圧が完了した。



「お疲れ様でした。後始末は我々に任せて下さい!」

「死んだふりしているヤツがいるかもしれないから注意してくれ。あと地下室がややこしいから、隠し扉を見逃してる可能性がある」

「ご忠告、感謝します!」



 そう言うと、メルお姉ちゃん率いる諜報部隊がゾロゾロと建物に入って行った。


 このアジトにも囚われていた拉致被害者達が20人以上いたんだけど、少し前に兵士達に保護されたので、もう心配する必要はないかな。



「ミッションコンプリート!!」

「ジグスレイドの処刑完了だ!!」

『チュウ!』


「「やったーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 ワー パチパチパチパチパチパチ!



「みんなお疲れ様~♪」

「これでようやく観光が出来るようになったね」

「何で遊びに来ただけなのに、いつも以上に働いてんだろな?」

「私達は一体何をしているのでしょうね・・・」

「戦争ごっこ」

「タマねえ、『ごっこ』じゃなくて普通に戦争です!」



 そういえば王家と弟公爵軍の戦いってどうなったんだろ?メインの方が負けたら、ボク達の活躍がほとんど意味の無いモノになっちゃうよな・・・。


 昨日の夕方くらいに出陣したばかりだから、まだ戦闘前かな?

 あ、レンクルを1体偵察に飛ばしてたんだっけ。


 念波を飛ばして確認してみると、まだ行進中とのこと。


 行進で疲れている公爵軍を潰しに行ったわけだから、寝ないで戦うようなアホな真似はしないだろうし、そうなると決戦は明日だな。


 ん~、勝てるといいんだけど・・・。



「軍隊同士の激突は明日になるみたいです」

「明日か!しかし勝てるんだろな?」

「ちょっと待って。もし負けたら敵がそのまま首都に雪崩れ込んで来るんじゃ?」

「えええええ!!私達の苦労は何だったの!?」

「もうこれ以上ハイドリムドの内乱に構っていられませんよ・・・」

「でもせっかく守った首都を荒らされたらムカツク」

「だね~。もし負けたらドラちゃんを放牧して嫌がらせして帰ろう」


 東門の外で遊ばせておけば、首都に入って来られないっしょ。


「ひでえな!魔物は大量発生するしで、スタンピードの再来じゃねえか!」

「魔物のスタンピードは本当にキツかった~」

「私達よく生きてたよね!」

「天使様とタマちゃんが大活躍したんですよね!?」

「頑張った!」

「タマねえがいなかったら3回くらい死んでたよ!」



 そんな会話をしながら召喚獣を全消しして、トナカイだけ人数分呼び出した。

 ゴーレムと蜘蛛が消えると現場の暑苦しさが無くなり、すごくスッキリした。



「おお、何だこの清涼感は・・・」

「大体クモが全部悪い」


 こらタマねえ!蜘蛛ちゃんだって頑張ったのですから、そんなこと言わない!


 ちなみに、本当は『デルドミグズ』って名前なんだけど、ボクが蜘蛛って呼んでるからみんな『クモ』って呼ぶようになりました。


「でも街の住人ですら一人も歩いてないね」

「あれだけ魔物が走り回ってたら、逃げるに決まってるよ!」

「ハッ!?帰りに食べ歩きが出来ないじゃないですか!」

「なんてこったーーーーー!!」



 城に帰るためにトナカイに乗って街の中を歩いてるんだけど、朝から夕方まで派手に動いていたせいで住民達はビビッて家の中に閉じ籠ってしまったのか、首都なのに無人という非常にレアな光景となっております。


 なぜか兵士が出動しないもんだから、もう息をひそめてジッとしているしかないって状況なんだろなあ・・・。



「あれ?そういえば冒険者すら魔物の討伐に来なかったのって変じゃない?」

「あ、確かに!」

「王家から冒険者ギルドに、邪魔しないようにって通達されてたのかもね~」

「なるほど!冒険者が攻撃してくる可能性もあったのか!」

「結果的に、王家に協力する形になったのは良かったのかもしれません」

「庶民アピールして正解でした!」

「それはたぶん関係ない」



 城門までやって来た。



「あっ!話は聞いております!ジグスレイドの討伐、お疲れ様でした!!」



「「うむ」」



 こうしてボク達一行は、大仕事をやり遂げ城へと帰って来た。


 ちなみに、いつも揉めていた門兵に労いの言葉を掛けてもらったお姉ちゃん達は、やたらと偉そうでした。

 

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