第138話 小さな英雄達の目覚め
目を開けると樹が見えた。
何だこりゃ?と思いながら、こんな場所で寝ている原因を思い出そうとする。
確かベッドに入って、目覚めると横にティアナ姉ちゃんがいて・・・、って全然違う!これいつの話だよ!?
・・・・・・そうだ、ドラゴン!!
やっと頭がクリアになってきた。
そうだよ!ドラゴンと戦って、何とか撃破することに成功したんだ。
んで、ドラゴンの死体に近寄ってストックして、タマねえの手当てを・・・。
「・・・・・・・・・」
手当てなんかしてない。
っていうかそこから先の記憶が無い。
ガバッ!
立ち上がってキョロキョロ周りを見ると、すぐ後ろにタマねえがいた。
そうか!ボクはタマねえの膝枕で眠っていたのか。
いや、ちょっと待て!タマねえは頭に怪我をしているんだぞ!
座ったまま俯いているタマねえの頬に、恐る恐る手を当てる。
・・・温かい。生きてる!!良かった・・・本当に良かった・・・。
安心したと同時に力が抜けて、へなへなと地面に座り込んだ。
頭に怪我をしているのに、自分よりもボクに気を使って、ずっと膝枕してくれていたんだ・・・。なんて優しい子なんだろう。
本当に、返しきれないほどの大きな借りを作ってしまったな。
少しずつゆっくり返していこう。
この先どんなことがあってもボクはタマねえの味方だ!
樹にもたれ掛かって眠っているタマねえは起こさずに、周囲を見回してみる。
たぶん朝だよな?
ドラゴンと戦ったのは夕方前くらいだった気がするから、すなわちボクは一晩眠っていたということになる。
寝不足と魔力の枯渇もあって、ガッツリ眠ってしまっていたらしい。
魔力がどこまで回復したかはさっぱりわからない。
オーバーフローさせまくったせいで、一晩眠ったくらいじゃボクの魔力は全回復しないのだ。それに枯渇することが稀なので、何日で満タンになるのかも不明だ。
おそらく今ドラゴンを召喚したら、一発で魔力がスッカラカンになると思う。
今まで使役してきた召喚獣とは、魔物としての格がまるで違うからね。
たとえ呼び出すことに成功しても、今度は維持するのに莫大な魔力が必要となる。
もっともっとアイテムをストックして最大魔力を増やさなきゃダメだな。
じゃないと、ドラゴンに乗って空の旅をするなんて無理だぞ!
しかしドラゴンか~~~~~!!
今までは最初の街の小さな世界だけで暮らしていたけど、これからは世界の果てまで冒険することが可能になったんだ!
5歳にして行くとこまで行ってしまった感があるけど、別にボクは最強になる気も世界を救う英雄になる気も無い。
みんなとワイワイ楽しく幸せに過ごせればそれでいいんだ。
・・・む!?そういやドラゴンを倒した時点で街の英雄なんじゃね?
『*ゆうしゃロロばんざい!ゆうしゃクーヤばんざーーーい!』
『*あなたさまのおかげでへいわがもどりました!』
外出しただけでこんな扱いされるなんて絶対嫌なんですけど!!
もしそんな窮屈な状態になったら、こんな街すぐにでも出て行くぞ!
ドラゴンを倒したどころか、それを使役する5歳児。
少なくとも貴族連中が放っといてくれないだろな。
自分の利益の為に抱え込もうとするか、もしくは殺すか・・・。
子供が癇癪を起こしただけで街が崩壊するって考えると、やっぱ暗殺してしまうのが一番安全な方法と考えるだろう。
5歳児の機嫌を取りながら抱え込むより、消えてもらった方が楽だから。
「・・・・・・・・・・・・」
こりゃあ誰にも言えんぞ。
刺客の警戒をしながら、今までのように平穏に暮らせるとはとても思えない。
攻撃力は災害級だけど防御力皆無ですもの。しょぼくれたオッサンに殴られただけでも致命傷になりかねない、非常にひ弱な存在だからな。
しかし幸いにも、魔物のスタンピードの原因がドラゴンだと知っているのはボクとタマねえだけだ。誰もドラゴンの話なんかしてなかったし、情報源はトナカイだ。
いや、他にもドラゴンの存在を知ってる人がいる可能性はある。
でもボク達に倒されたってことまでは知らないハズだ。
タマねえの怪我の治療をお母さんに頼む時は、何か違う理由で誤魔化すしかないだろう。あまり嘘を重ねるのは嫌なんだけど、こればっかりはしょうがない。
ウーーーム、悪そうなお兄さんに自慢したかったんだけどな~~~~~!!
特別攻撃隊までなら『危険な子供』くらいで済むけど、ドラゴンを召喚してしまうと『異常な存在』と認識されるような気がする。
利害関係だけで動く優秀な人物だけど、デンジャラスが過ぎると扱いに困ってしまうだろうからなあ。
ボクはまだ剣と魔法の世界の初心者だから、本当に匙加減が難しい・・・。
とりあえず今は『かわいいショタ』のままでいいや!
◇
2時間ほど経った頃、タマねえが目を覚ました。
「あれ?クーヤ」
「タマねえ!怪我は大丈夫なの?」
彼女は、起こさない様にそっと被せておいた毛布に気付いて微笑んだ。
そして立ち上がって、身体の凝りをほぐす。
「うん。まったく問題無し」
「それならいいけど・・・。でも早く街に帰ってお母さんに治療してもらおう!」
その時自分のお腹が『ぐぅ』と鳴った。
「あ、そういえば昨日何も食べてない!」
「それ所じゃなかったから」
「ラーメン召喚!ハンバーガー召喚!」
地面にホカホカのラーメンとハンバーガーが出現した。
「消したら栄養も全部消えちゃうけど、帰って何か食べてから消せば大丈夫!」
「ラーメンだ!寝起きだけど、見た瞬間お腹空いてきた」
「ボクはハンバーガー1個でお腹いっぱいになるから、ラーメンどうぞ!」
「いいの?」
「あ、最後にスープだけ少し飲ませて!水分とらないと拙そうだから。しょっぱいの飲んだら逆に喉が渇く気もするけど!」
「うん!」
二人で朝食を食べ始めた。
帰り道でも魔物と戦うだろうから、たっぷりエネルギーを充電しなきゃ!
◇◇◇
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