第131話 ドラゴンと対峙する二人の子供
もうタマねえに無茶させるわけにはいかないので、頼れるのはメルドア率いる召喚獣達だけだ。
それでもドラゴンに接近したことで、圧倒的強者から逃げ惑う魔物とエンカウントする回数もどんどん減っていった。
なので今は二人とも優雅にトナカイの背中に乗っています。
「うっわ、向こうから有り得んほどの底知れない魔力を感じるよ・・・」
「タマも感じる。でもクーヤからは魔力を感じない。何で?」
「そういえば人の魔力って全然気にしたことなかったな~」
たぶんクーヤちゃんの総魔力ってドラゴンよりもあると思うんだけど、人間の魔力ってのは人間には感じることができないのかもしれないね。
ティアナ姉ちゃんが魔法を使った時なんかは魔力を感じられるんだけど、普段の暮らしでは他の人から感じる気配と一緒なんだ。
「ボクが召喚獣を呼び出す時とかって魔力を感じたりする?」
「召喚獣を呼び出す時?・・・ん~~~よくわかんないけど、召喚獣からはクーヤの気配がするから可愛い」
「なんだってーーーーー!?じゃあ知ってる人がゴーレムを見たら、ボクの召喚獣だってことがバレバレなの?」
「タマにはわかるけど、たぶん素人には無理」
「むむむ!それなら良いけど、タマねえはプロだったのか!」
「クーヤのことなら大体わかる。あと召喚獣からは魔力を感じない」
召喚獣達はボクの魔力を使って活動するから、人扱いみたいな感じなんだろか?
あっ!
パンダちゃんが魔物だったことがレオナねえにバレなかった理由はそれか!
でも召喚獣を使って悪いことをしたら全部タマねえにバレそうな件。
いや、しませんけどね!!
「さて、決戦まであと少しだ。召喚獣達にはドラゴンに突撃してもらうけど、タマねえはボクから離れないでね!みんなの後ろから物を投げまくってドラゴンを怒らせるのが目的だから」
「うん。怪我でもしたらクーヤの足を引っ張るだけだから無茶しない」
「さすがタマねえだ。それがわかってるなら話が早い!ドラゴンが見えたらドル箱を渡すね」
「わかった」
◇
ボク達が住んでいる『オルガライドの街』の南側には、森があったり岩場があったりするんだけども、北側はほとんど草原というとても美しい風景だ。
―――――大地を埋め尽くすほどの魔物さえいなければ。
そしてその魔物が視界から消えるとどうなるか?
「やっとクーヤちゃんにもドラゴンが見えましたよ!」
「この位置から見えるなら視力はなかなか良い」
このウルトラボディーの性能はまだよく分からんけど、生前も視力だけは良かったのですよ。両目とも2.0ありました!
結構早くからドラゴンが見えていたタマねえの視力なんて3.0以上ありそうだな。
・・・それにしても何なの?この2.0って数字。
低すぎだろ!!最高が2.0とかだから目の悪い人は0.1とか意味わからん変な数字になるんじゃないの?誰だよこれ決めた奴!!
一番上が100とかだったら、『くそ~視力26かよ!』『俺なんか15しかないぞ!』みたいなわかりやすい会話になるのにさ。
って、視力の数字にツッコミいれてる場合じゃなかった!!
ドラゴンを目前にして、クーヤちゃんは一体何をやっているんだ!?
「まだ遠いからわかりにくいけど、めっちゃデカくない?」
「あっちの木より大きい。倒すのは無理かも」
「倒すどころか、今すぐ逃げ出したいくらいなんですけど?」
「逃げるなら北の方角じゃなきゃダメ!」
「ヤツの横をすり抜けるだけでも地獄じゃよ・・・」
トナカイが言っていたように、ドラゴンの身体の色は真っ赤だ。
細長くてニョロニョロした東洋龍タイプではなく、ゲームに出てくるような西洋ファンタジーっぽい、ずんぐり体型のめっちゃ重量感があるドラゴンの方でした!
最初は緑色のドラゴンが見たかったんだけどな~。
いきなり赤いのが出てくるとか、ちょっと順番がおかしくないですかね!?
いやまあ、ゲームをやってるわけじゃないんだけどさ。
けど小説やアニメなんかでは、人間の言葉を話すドラゴンがいたりするよな?
怒らせる前に、一度話し掛けてみた方がいいのだろうか・・・。
上手くいけば世界の半分がもらえたり!?
・・・いやそれバッドエンドじゃん!
ってか、近付いた瞬間に炎を吐かれでもしたら即死してしまうよな。
そんなリスクを背負うくらいなら最初から敵対した方がマシか。
「なんか全長20メートルくらいあるような気が・・・」
「これはちょっと予想外」
ゲームでは当たり前のように『レイドバトル』なんてのが用意されていたりするけど、実際に目の前でドラゴンを見ると、『冒険者って命知らずの馬鹿なの?』って言葉しか出てきません。
こんな怪物と戦うなんて、もう死んで当たり前って状況だと思うんだけど・・・。
でもタマねえが、『冒険者が数百人集まってドラゴンを討伐しに行く』とかいう話をどこかで聞いたらしいから、たぶん実際に起きた出来事なんだよな。
ちょっと冒険者をナメてたかもしれない。
こんなのと戦う勇気があるってだけでも尊敬しますよ・・・。
「ずっとこっちを見てる」
「だだっ広い草原だからね~。すごく目立ってると思うよ」
こんなクソヤバイ相手に喧嘩を売ろうとしてる自分に笑えてくる。
「なんでクーヤは笑ってるの?」
タマねえが不思議そうな顔でショタを見つめる。
「だって、二人の小さな子供が最強のドラゴンと戦おうとしてるんだよ?」
「戦わない。怒らせて逃げるだけ」
「まあそうなんだけどさ!もし生き残ることが出来たら、悪そうなお兄さんに自慢してやろう!」
「ドラゴンを追っ払ったなんて言っても信じるわけない」
「あはははははははははははははははは!」
「ぷっ!あははははははははははははは!」
数百人で挑むようなラスボスに二人で特攻とか、クレイジー過ぎるだろ!
絶対の強者を前に、恐怖を通り越して笑いが止まりません!
「さーて、戦闘開始だ!!」
―――二人の狂った子供とドラゴンの物語。ここに開幕―――
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