第230話 動画撮影ブームの到来
家族のみんなに写真を撮るための道具だと思われていたデジカメ。
しかしカメラに飽きたタイミングを見計らい、その隠された性能を披露すると、我が家に空前の動画撮影ブームが到来しました!
手に入れたのは最新式のデジカメだと思うんだけど、残念ながら連続撮影時間が30分に制限されているヤツだった。
しかし冷静に考えると逆に良かったかもしれない。長時間の動画を撮りまくっていたら、一気に保存できる容量が枯渇してしまいますからね~。
まあ大容量のデジカメなんですが、節約した方がいいのは間違いないです。
上手いことデータの容量を増やすアイテムが召喚できればいいんだけど・・・。
ピッ! ピッ! ピッ! ピッ! ピッ! ピッ! ピッ!
アイテム召喚でゲットしたばかりのホイッスルを吹きながら、タマねえがハムちゃん軍団を率いて行進する。
「あーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
そしてピンクハムちゃんと一緒にパンダ1号に乗ったリリカちゃんが、高笑いしながらショタの横を歩いている。
間違いなく最高の動画になると確信しながら、ボクはペカチョウと一緒にパンダ2号に跨り、のっそのっそと草原を歩いていた。
ドシン ドシン ドシン ドシン ドシン ドシン ドシン
ボク達の後ろを行進するのは、メルドアとレグルスが率いるゾウ軍団だ。
インパクトを残すだけならこれだけでも十分なんだけど、映画監督であるクーヤちゃんは最後尾に10体のゴーレムまでも行進させ、非の打ちどころの無い圧倒的ド迫力映像を追求した。
そんなカオスな光景をデジカメで撮影しているのがプリンお姉ちゃんだ。
彼女もカメラマンとして日々成長しており、今では画面をほとんど揺らさずに安定した撮影が出来るレベルになっていた。
どうやらプリンお姉ちゃんは、自分が撮影されるよりも撮影する方が好きみたいで、二つ返事でカメラマンを引き受けてくれた。
この日にかける意気込みは、ひょっとするとボク以上かもしれませんね。
―――――そして撮影時間30分をフルに使った、ド迫力映像が完成した。
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撮影場所の『ネジポイント』から帰宅し、夕食から湯治まで終わらせたタイミングで、今日撮影したばかりの映画を家族に披露した。
歩みの遅いパンダちゃんに合わせた行進だったのが逆にイイ感じの尺稼ぎとなっていて、ボクが作った映画は最後まで見応えのある出来栄えだった。
「オイ!最後に出てきたのって、白いローグザライアじゃねえか!!」
「大きな口を開けた瞬間に動画が終わったんだけど!」
「今の終わり方って狙って作ったの!?だとしたら凄すぎだよ!」
「本当に凄かったわね~~~!!」
パチパチパチパチパチパチパチパチ
家族の驚きの声を聞き、これにはクーヤちゃんだけじゃなく撮影に協力してくれた子供勢+プリンお姉ちゃんもドヤ顔だ。
と言っても大画面で見るのはボク達も初めてなので、制作者チームもそのド迫力に感動してる最中なんですけどね!
ちなみにクーヤ監督の映画はこれで二作品目なんだけど、最初に撮った『ハムちゃん体操DX』も評判が良く、毎日上映されています。
おそらくハムちゃんまみれで挑んだのが評価されたのだろう。
個人的には、アイリスお姉ちゃん達と一緒にみんなで体操をしている『ノーマルバージョン』の方が好きなんだけどな~。
どうも大人達は、画面に自分が映ってると恥ずかしがる傾向がありますね。
レオナねえだけは全然気にしてないけど。
「しかし、カメラがもう1個あれば最高なんだけどな~」
「カメラがもう1個?ああ、壊してしまっても大丈夫なカメラがあれば、外国に持ってったりできるよね~」
「違う。アタシはエロ本を作りたいんだ!あとエロ動画も!」
「ぶはッ!!」
力いっぱい真顔で何言ってるんですかこの人は!!
「みんなが使ってるカメラでそんなの撮るわけにいかねえしさ~」
「いや、まあ、そうですね・・・」
「だからアイテム召喚でもう1個出してくれ!アタシ専用のカメラを!!」
くッ、何という真っ直ぐな瞳、そして溢れる情熱!
このエロ姉ちゃんは、本気でAV監督になろうとしているのか!?
「う~ん・・・、もし召喚できたらあげてもいいけど、狙って出せるもんじゃないですよ?」
「よっしゃ頼んだぞ!そろそろアイテム召喚の時間だろ!」
「あ、ちょうど良い時間だ!でもホントに狙って出すなんて無理なんだからね?期待し過ぎないこと!」
「わかってるって!でも夢があった方が気合入るだろ」
AV監督になる夢ですか?何かもっと他に無いんかい!!
しかしモコねえがウチに来るとBL漫画が出る謎現象があるのも事実でして、もしかしたらという可能性が頭をよぎりつつもアイテム召喚を開始した。
「じゃあカメラでろー。アイテム召喚!」
「なんかテキトーだなおい!」
ヴォン
ショタの腑抜けた掛け声とレオナねえのツッコミの後、強烈な光の中から出現したのは、まさかのアイツだった。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「カメラ・・・じゃねえな。クソッ!」
「でも大当たりだよ!5箱セットのティッシュ!ずっと欲しかったんだー!!」
この国にも、トイレットペーパーやティッシュとして使われている柔らかい紙があるんだけど、正直ボクからしたらまだ硬いんだよね。
この日本製のティッシュが恋しくて恋しくて・・・。
さて、ストックはどの状態でやるのがいいんだ?
すぐ使うなら外側のビニールは破いちゃった方がいいけど。
・・・いや、この状態でストックした方が、どんな状況にも対応できるな。
「ストック!」
召喚獣リストのバグった文字を『ティッシュ5箱』に書き変える。
「ティッシュ5箱出て来い!」
そして再び目の前にティッシュの箱が出現した。
外側のビニールをビリビリ破って、ティッシュの箱を全部取り出した。
そして上部にあるキリトリ線の所を開けて、ティッシュを一枚引っ張り出す。
「何だこりゃ?」
「ボクがずっと欲しかったティッシュだよ!」
「ティッシュ?これが?」
この国のカチカチティッシュのことも普通にティッシュと呼んでたから話は通じるんだけど、こっちのはただ紙を積んであるだけで1枚目と2枚目が繋がっていないのです。その点だけでも日本のティッシュは優秀ですね!
ティッシュを1枚取って、その柔らかさに感動する。
「みんなも1枚取って触ってみなよ!上に引っ張ったらすぐ次のティッシュが出てくるから!」
そして日本製のティッシュを手にした全員が、その柔らかさに驚いた。
「フニャフニャじゃねえか!」
「メチャメチャ柔らかいね~」
「へーーーーーーー!これは確かに素晴らしいわ!」
「やわらかーーーーーい!!」
「お母さんね~、このティッシュすごく気に入ったのよ~!」
「タマねえに1箱あげるから自分ちで使うといいよ。無くなったらまた呼び出せばいいだけなんで、本当に適当に使いまくっていいからね~」
「ありがとう!これは嬉しい!」
「地味に大当たりですね!おトイレに1箱置くと良いかもしれません!」
「「それだーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
とまあカメラ騒動で終わると思いきや、最後はティッシュの大勝利でした!
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