第6話 探検してみよう!

 もういい。

 俺はもうアイツを神様と思うのはヤメた。これからはファンキー野郎と呼ぶ。


 ・・・しかし困ったぞ。


 保護者もなしに、ショタが一人で異世界を生き抜くのってキツくねえか?

 メシとかどうしたらいいんだよ!?

 2時間の待ち惚けでちょっとお腹も空いてきたし。


 とにかくもう、こんな所にいたって状況は悪くなる一方だ。

 自分から動いて活路を見出すしかあるまい。



 うーむ・・・、とりあえずお化け屋敷に入るのは却下だな。森に囲まれた一軒家とか、ホラー映画みたいなことになりかねん。


 となると、この道を進んで行くしか選択肢が無いのか。

 人にさえ出会えれば、事態が好転する可能性も高まるだろう。



 てくてくてく



 ショタの身体だと歩幅が短いから、このままじゃ日が暮れてしまいそうだ。

 しゃーない、ちょっと走るか!



 とてててててててて



 なんか走ってるショタって、効果音とかつけたくなるね!



 とてててててててて



 最初は元気だったけど、さすがにちょっと疲れてきた。



「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」



 ダメだ、もう限界だ!やっぱり普通に歩いて行こう。


 ・・・って、向こうに建物が見えるぞ!やったーーーーーーーーー!!



 お化け屋敷へと続く道を抜けると、そこには『これぞ異世界!』って感じの街並みが広がっていた。



「うわあ~~~~~~~~~~~~!」



 すっげーーーーーーーーーー!!

 コンクリートに囲まれた日本の景色と違って、街の中にも緑がいっぱいなのだ!


 木の家だったりレンガの家だったりと、建物一つ一つにも個性があって、しかも家と家が密集された作りじゃないんだ。


 建物の間に緑が挟まってるから、自然と調和された美しさが際立っていて、もしカメラを持ってたら絶対写真に撮ってるよこんなの。



 おっと、危ない危ない。ちゃんと来た道を覚えておかないと迷子になってしまう。


 お化け屋敷に続く道を覚えておく必要があるのかは疑問だけど、あそこは俺の出現ポイントだから何か意味があるかもしれんからな。


 ファンキー野郎から連絡が来て、『最初んとこまで戻って来い!』となる可能性だってある。まあ何にしても、道を覚えといて損はない。



 おっ!第一村人発見!!


 どうしよう?話し掛けた方がいいのかな?

 でもあの髭のおっさんは、あんまり親切そうな感じじゃないな・・・。


 うん、ちょっと様子を見よう。


 どうせならもっと優しそうな人がいい。いきなり怖い人に誘拐されたりしたら洒落にならんもん。




 ◇




 おおおおおお!ケモ耳だ!!アレが獣人ってヤツですか!?


 最初に見たおっさんの髭は黒に近い茶色だったんでスルーしてたけど、街行く人々の髪の毛がみんなカラフルで、異世界に来たんだなーって実感が湧いて来た。


 そしてとうとう現れたのがケモ耳の女性だ!


 ただ顔とかは獣っぽいわけじゃなく、普通の人間にネコ耳が付いてるだけって感じ。イヌ耳かもしれんけど。


 興味津々で彼女の後ろについて行くと、街並みがどんどん栄えてきて、道端に露店がいっぱい並んでる場所に出た。


 肉の焼ける匂いで、お腹がキュルキュル鳴り出した。

 くそおおおお、肉食いてーーー!!でも金なんか1円も持ってない。いや、1円持ってたってこの世界じゃ使えないだろうけどさ。


 マジでどうすりゃいいんだ?どこかで働かせてもらいたいけど、ショタを使ってくれる店なんてあるかなあ・・・。


 よし、とりあえず誰かに話しかけてみよう!

 人と接しないと現状を打破することはできん。


 第一コンタクトは誰にしよう?・・・お!ベンチに座ってるあの優しそうな感じの女性なら、色々と質問に答えてくれそうだ。


 気合を入れ直して、女性の側まで近寄って行く。



「あの~、ちょっと聞きたいことがあるんですけど・・・」



 女性が頭に『?』を浮かべた後、優しく微笑んで口を開いた。



「%*k@rw#¥cπ<&?」




 えーと・・・・・・、何語ですか?






 ************************************************************






 詰んだ。



 とりあえず誤魔化すために『にゃ~!』って言ってから、とててててててててっとあの場を去って行ったのだけど、いや~、まさか言葉が通じないとは・・・。


 神様の力で異世界に転生した場合って、自動翻訳とか言語理解なんかを付けてくれるのが定番じゃないのかよ!!



 ―――ファンキー野郎の顔を思い浮かべた。



 うん。あのクズ野郎に期待した俺が馬鹿だったよ!!


 アイツの手によって異世界へと旅立って行った人達はみんな、きっと俺と同じように途方に暮れる状況に追い込まれたんだろな。マジで同情するわ・・・。



 気が付くと、スタート地点へと戻って来ていた。



 さてどうしよう・・・。

 腹も減ったけど、今夜寝る場所を探さなければならない。


 お化け屋敷を見る。


 もうそろそろ日が暮れそうだし、やはりあそこで寝るしかないのか・・・。


 街の中でベンチに寝るって手もあったけど、夜中にあんな場所で無防備なショタが寝ていたら、攫われて奴隷商に売られかねないからなあ。

 この世界に奴隷商があるのかは知らんけど。



 はぁ~、背に腹は代えられんか。もうこうなったら、あのお化け屋敷に突撃だ!!

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