第246話 あひるポンチョアーマー
少し悩んだ後、アイリスお姉ちゃんが鉄のビキニを手に取った。
下はいらんのだけど、胸だけって売ってくれるんだろか?
着替える必要がないので、その場で試着し始める。
「大きさは問題ないかな?革の鎧に組み込んだ時にどうなるかだけど・・・」
「これに金枠も付けるから、今より少し大きくなるよ」
「ほんのちょっとでしょ?たぶん気にしなくていいんじゃない?」
「そうね~」
おっと、タマねえの胸当ても探さなきゃだ。
「タマねえはどんなのがいいの?」
「わかんない」
「ん~~~、装備するにしても黒ポンチョの内側になるよね?じゃあ見た目はそんなに気にしなくていいのかな?」
「適当はダメ。見えなくても格好良ければ気分が良くなるから」
「なるほど。じゃあタマねえの胸当ても色塗ってもらう?」
「塗る!でも何色がいいんだろ」
「レオナねえは赤に金枠で、アイリスお姉ちゃんは白に金枠だから、タマねえも金枠にする?」
「うん!黒に金って合う?」
「メチャクチャ合います!むしろ最強の組み合わせです!」
イイ感じの女性用の胸当てを発見したので、タマねえに装着してもらった。
「どう?」
「窮屈」
楽しそうに防具を見て回っていたプリンお姉ちゃんが、こっちに来てくれた。
「胸当てを装備すれば、普段より動きにくくなるのはしょうがありませんね。でもフルアーマーよりは全然マシだと思いますよ?」
そう言いながら、プリンお姉ちゃんがタマねえの装着具合をチェックしている。
「これは体形に合ってませんね。こっちの胸当ての方がいいかな?」
流石はプロの冒険者だ!
彼女に任せておけば、素晴らしい装備品を見繕ってくれることでしょう。
ってことで、タマねえのことはプリンお姉ちゃんに任せて、男性用の防具が並べられている場所に移動した。
ようやくショタの防御力を上げる時が来たのだ!
タマねえに対抗し、『あひるポンチョアーマー』を完成させるのです!
「クーヤも防具を着けてみるのか?」
声のした方を見ると、そこにいたのはレオナねえだった。
「いつまでも防御力ゼロではイカンでしょう」
「ほう、面白そうだから手伝ってやろうか?」
「じゃあその胸当てを取ってください!」
「プッ!!わかった!」
なに笑ってんスか?この呂布は。
「メンドイし、ポンチョの上から被せていいよな?」
「両手が動かせなくなるじゃないですか!でもまあ、とりあえずそれでいいや」
レオナねえが金具をパチンと外し、胸当てを前後に開いてショタの頭からスポッと被せた。
「じゃあ手を放すぞ?ちゃんと踏ん張らないと転ぶぞ?」
「全然余裕なのです」
レオナねえが胸当てから手を離すと、とんでもない重量がショタを襲い、重力魔法をくらったかのように床に圧し潰されそうになった。
「ぐおおおおおおおお!これが噂の
「おーーー、耐えてる耐えてる!」
これはダメだ・・・、一歩も動けない!
「もう無理ーーーーー!!早くこれ取って!!」
「わはははははははははは!クーヤに胸当ては10年早かったな!!」
スポッ
レオナねえに救出してもらった。
「今の胸当てはちょっとだけ合わなかったので、別のヤツにします」
「ほう?ちょっとだけか」
「じゃあそこの一番軽そうなのを取ってください!」
「心臓だけ守る最低限のヤツだな。かなり格好悪いけど背に腹は代えられんか」
スポッ
胸のところに鉄の板があるだけなのにクッソ重かった。
「重いから早く取ってーーーーー!!」
「マジか!?これもダメなのかよ。じゃあ革の胸当ても無理だと思うぞ?」
えーーーーー!?革の胸当てってそんなに重かったのか!
もう全部無理じゃん!クソガー!!もう防具なんかいらん!!
血の涙を流しながら、あひるポンチョアーマーを諦めた。
「黄色ポンチョの中に『ギルサイダーの糸』で作った服を着れば、今より少しはマシになるだろ。どうせ近接戦闘なんかしないんだから、クーヤは攻撃を受けないように上手く立ち回ることだけ考えればいい」
「今までと一緒だけど、しょうがないですね~」
レオナねえとそんな会話をしながら、タマねえ達のいる場所に戻った。
「クーヤ、この胸当てに決まった!カッコイイ色にしたいから何か考えて!」
「お?決まったんだね~。なるほどなるほど・・・」
おっぱいの盛り上がった部分がタマねえのバストサイズより大きい感じだけど、身体の成長を考えたらこれでいいのかもだね~。
とりあえず真っ黒に塗るとして、金色でどんなデザインにするかだな・・・。
近くに小さなテーブルと椅子があったので、そこに紙を広げて、タマねえが購入する予定の胸当ての絵を描きあげる。
そして思考を中二病に切り替え、胸の谷間に逆三角形を描いた。
それをベースにカッコ良さげな模様に変化させ、続けて首回りから肩に向かってラインを引いて行く。金色で縁取るだけで格好良いのはわかってるから、そう苦労することなく満足のいく絵が完成した。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
ちゃんと色まで塗って、完璧に仕上げたボクの絵を見た全員が無言になった。
その中にはブロディさんもいます。
「カッコイイにも程があるだろ!!こんなのアタシだって欲しいくらいだ!」
「クーヤ完璧!!時と場合によっては黒ポンチョを脱ぐかもしれない!!」
「本当に素晴らしいデザインですね!」
「クーヤちゃんが天才すぎる・・・」
「黒と金の組み合わせって、こんなに高級感が出るんだね~!」
目を大きく開いて完全に固まっていたブロディさんが、口を開いた。
「防具って、色を塗るだけでココまで格好良くなるのか!!」
―――――そう言ったブロディさんの目は、キラキラと輝いていた。
・・・髭ヅラのマッチョだけど。
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