第146話 ドラゴンに初めましての挨拶

 最初はキョロキョロしていたドラゴンだったが、ようやく召喚士であるショタが足元にいるのを発見したようだ。



「何日かぶりだけど、召喚獣としてのキミに会うのは初めてだから、初めましてドラちゃん!召喚士のクーヤだよ!!」

「ボクはタマ。クーヤの隣にいたんだけど覚えてる?」


『ギュア!!』


「にょあ!?」


 大きな声で挨拶をされて、鼓膜が破れるかと思ったし!!


「耳が吹き飛びそうだから、もう少し小さな声でお願い!」


『ギュア』


「それくらいなら大丈夫!ああ、タマねえのこともよく覚えてるってさ!」

「よかった!」


 あれほどの激闘をしたのだから、忘れたらむしろ鳥頭過ぎて困るんだけどね。


「今日は魔力が少ないから挨拶くらいしか出来ないんだけども、一つだけ話があるの!ボクね、あの時のことを謝りたかったんだ!」


『ギュア?』


「何も悪いことをしていないキミに攻撃したのには理由があるの!実はね、ドラちゃんが南に移動して来たことで、ボク達の住んでる場所に魔物の大群が押し寄せて来たんだ。それでみんなを守るためには、キミの南下を止める必要があったの!」


『ギュア!』


 彼は『なるほど!』と言っております。


「本当は北に追い払うだけの予定だったんだけど、崖に進路を阻まれてしまって、倒すしかなくなっちゃったんだ!・・・痛かったよね、本当にごめんね!」


『ギュア!!』


「ドラゴンは何だって?」

「えーと・・・、戦闘になったのだから、どちらかが負けるのはしょうがない。気にすんな!って言ってる。二人とも強かったって褒めてくれているよ!」


 それを聞いたタマねえが微笑んだ。


「でもドラちゃんは何で南に来ちゃったの?」


『ギュア・・・』


「ほうほう・・・、はいっ!?な、なんだってーーーーーーーーーーー!?」


 ボクが驚愕したんで、全員がこっちを振り向いた。


「なに??もしかしてまだ危険なことがあるとか?」

「いや、えーと・・・、たぶん大丈夫。ドラちゃんの縄張りに凄く怖い侵入者が来たから逃げて来たって言ってるの!新しい住処を探してたみたい」

「ドラゴンが怖がる侵入者!?」

「それがね、ドラちゃんの3倍くらいあるドラゴンだそうです・・・」


「「はあああああああああああああああああああああ!?」」


 たぶん『バハムート』とか、そういうクラスのドラゴンや・・・。

 60メートル級のドラゴンって、ヤバ過ぎるでしょ!!


「そのドラゴンがこの場所に来る可能性は?」


『ギュア』


「たぶんあの島に住み着くから、こっちには来ないと言っております!」


「「よ、よかったーーーーーーーーーーーーーーー!!」」


 アカン、そろそろ消さなきゃ魔力が枯渇してしまいそうだ。


「ごめん!そろそろ魔力が無くなっちゃうから消すね!また魔力がいっぱい溜まったら呼ぶから、その時は一緒に遊ぼうね!ドラちゃん、これからもよろしく!!」

「よろしく!」


『ギュア!』



 ドラゴンを消した。



 それを見届けた途端、緊張の糸が切れたのか、レオナねえ達三人がへなへなと地面に座り込んだ。



「・・・クーヤ、まさかドラゴンだとは思わなかったぞ!!アレって、冒険者が数百人で挑んでも勝てるかどうかわからんってくらいの『超級』の魔物なんだが!!」

「ドラゴンなんて初めて見た・・・。っていうかアレのこと『ドラちゃん』って呼んでたよね!?そんな可愛げのある大きさじゃないんですけど!!」

「クーヤちゃん!心臓を叩いてなかったら即死だったよ!!」


 そして受けた衝撃を表すように喚き散らした。

 うん。まあ、そうなるでしょうね。気持ちはわかりますとも!


「・・・つーか、アレと戦っただと!?」

「ボクとタマねえでがんばったんだよ!」

「頑張ってどうにかなるような大きさの魔物じゃねえだろ!いや、でも召喚獣にしたってことは、倒した証拠以外のナニモノでもないのか・・・。いやいやいやいや!足のつま先くらいまでしか届かない相手をどうやったら倒せるんだ!?」

「カロリーゼロとウォーレヴィアを上手く使ったとか!?」

「それでドラゴンを倒せるほどダメージを与えられるかなあ?それだったらレオナ100人の方が強そうだよ?」

「アタシを量産するんじゃねえ!しかし、そこにタマとメルドアジェンダを加えたとしても、冒険者数百人の強さに届くとは思えねえな。このチビ助はおそらく、全く別の方法で倒したんだ!」


 チビ助とは酷いこと言いますね!!

 でも流石は名探偵レオナと言わざるを得ない。読みがハンパねえっス・・・。


「ん、大体あってる。クーヤはゴーレムとトレントを上手に使って、飛んでるドラゴンを地上に落としてボコボコにしてた。すごく格好良かった!」


 突然タマねえに褒められて顔が熱くなってきた。

 これ絶対顔が真っ赤になってるよ!でも褒められたのは素直に嬉しい。


 お姉ちゃん達三人も、その光景を思い浮かべて目をキラキラさせている。

 うわ、やっぱ恥ずかしいっス!


「しょうがないなあ~。じゃあどうやって倒したのか見せるから、ちょっと移動します!シャンクルに乗ってついて来て下さい!」



 ずっと左の方に大きな岩があったので、トナカイに乗ってそこまで移動した。

 そしてトナカイから降りて、岩の前に立つ。



「武器屋さんに行ったらさ、強い剣とかいっぱい売ってたりするんでしょ?」

「もちろん。強い剣は値段も半端ねえけどな!」

「やっぱ戦士なら最強の剣を持ちたいよね。でも残念!最強の武器ってのは剣じゃなかったのです!」

「なんだと!?槍なのか?」


「鉄板です!!」



 最強武器によって切断された岩が、斜めにズルリと滑って地面に落ちた。

 

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