第251話 待ちに待った日が来ました!

 シェミールにみんなの服を注文してから3週間が経った。


 プリンお姉ちゃんのドレスの時は、1着作ればあとは色違いを用意すればいいだけだったから、それほど時間が掛からなかったんだけど、今回は全員服装がバラバラで、しかも一気に5着も注文したので、やはりすぐ完成とまではいかなかった。


 でもたった今、クリスお姉ちゃん専属のエレガンスハムちゃんから、『服が完成しましたですわ~』といったニュアンスの報が届きました!


 なんとなく完成まで1ヶ月ちょいくらいかな~と思ってたんだけど、まさか3週間で仕上げるとは流石クリスお姉ちゃんです!



「レオナねえ!レオナねえ!」


「んあ?」



 服はともかく防具すら無い状態なので、しばらく自堕落な生活を満喫していたレオナねえが、ゲーム画面を見ながら非常にポンコツな返事をした。



「今、ハムちゃん通信が入りました。レオナねえ達の服が完成したそうです!」

「なんだって!?」

「おお!!」

「とうとう完成したのですね!」


 ポンコツだったレオナねえの目に生気が蘇り、タマねえやプリンお姉ちゃんも楽しみにしていたらしく、三人ともワクワクした顔でこっちを見た。


「クーヤ!アイリスとナナをウチに呼んでくれ!服を受け取りに行くぞ!」

「合点承知!!もちろん帰りに防具屋さんにも寄るんでしょ?」

「当然だ!塗装も改造もとっくに終わってるハズだからな!」

「胸当てを取りにいかなきゃ!!」

「すごく楽しみですね!」



 アイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんの専属ハムちゃんに、『ふくかんせい!いますぐウチにくるべし!』と伝えた。


 専属ハムちゃんらはボクが送ったイメージのまま紙に書くから、長文だと時間が掛かってしまうので、どうしても電報みたいになってしまうのだ。


 悪そうなお兄さんにも教えなきゃなんだけど、全員新しい服に着替えてから貧民街スラムにお届けすることになったので、少し時間をずらして伝えることにした。


 絶対楽しみにしているハズなので、早く伝えると彼のことだから入り口の所でずっと待っていそうなんだよね。



 それから20分もしないうちにアイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんがウチにやって来たので、トナカイに乗ってシェミールに出発した。




 ◇




「クーヤちゃんがハゲになった!!」

「何これ!メッチャ面白いんですけど!!」

「対シェミール用の変装アイテムだ。これを装備しないとマダムの大群に襲われるんだとよ?」

「マダムの大群に!?」

「逆に見てみたいんですけど!!」


 それを見せないために気合を入れてハゲてるんです!


「完璧」

「よしッ!準備が出来ました!」

「今日はマダムに襲われないといいですね」


 問題はエミリーお姉ちゃんなんだよなあ・・・。服を取りに来ることを知ってるから、ボクも一緒にいるだろうって感付かれてると思うんだよね。



 ガチャン



「「いらっしゃいませ~!」」



 レオナねえ達三人を先頭に、左にタマねえ、右にプリンお姉ちゃんという最強の布陣で店内に侵入。



「服を受け取りに来たぜ!」


「おっ?レオナちゃんじゃない!さすがに今日はみんな勢揃いね!ということは、絶対にクーヤちゃんが隠れているハズ!!」



 カツッ カツッ カツッ カツッ


 イカン!彼女が近寄って来る足音が聞こえる・・・。



 エミリーお姉ちゃんが、レオナねえとナナお姉ちゃんの間を強引にこじ開け、鉄壁の要塞の中に隠れていたハゲを発見した。



「アーーーッハッハッハッハッハ!!何で今日はハゲてるのよ!!」

「どなたかと勘違いされてませんか?私はその辺に沢山いる普通のハゲですが」

「クーヤちゃんが全然可愛くない!これは没収します!」


 エミリーお姉ちゃんに、ハゲヅラと鼻メガネを奪われた。


「よし、いつものクーヤちゃんに戻った!うっひょーーーーーーーーーー!!」

「にょわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」


 結局ハゲになっても、注文していた服を受け取りに来ると知られてたんじゃ、何の意味もなかった!


「こうなったらクーヤはもう手遅れだ。マダムが押し寄せてくる前に企画室に逃げ込むぞ!」

「えーーーー?置いてっちゃうの?」

「そんなの可哀、そう・・・」



 ドドドドドドドドドドドドドドドド!!



「あ、マダムが来た!」

「此処にいたら巻き込まれますね」


「「逃げろーーーーーーーーーーーーーーー!」」



 結局ハゲヅラは役に立たず、いつものようにマダムの大群に飲み込まれた。






 ************************************************************






 ガチャッ



 精魂尽き果てフラフラになったショタが、エミリーお姉ちゃんに掴まりながら企画室に入ると、レオナねえ以外の四人で談笑している姿が見えた。



「クーヤが来た」

「いつもご苦労様です!今、レオナさんが着替えてる最中ですよ」

「お?クーヤちゃんが間に合った!」

「でも疲れ果ててるみたい!」


「なんとか間に合ったみたいですね・・・」



 みんなのいる場所までヨロヨロと歩いて行き、ベストポジションに立つ。

 すると、そのタイミングでちょうど良く試着室のカーテンが開いた。



 シャーーーーーッ



「「おおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーー!!」」



 ―――中二病全開の姉が立っていた。実写版は絵より遥かに格好良かった。



「すごい!メチャクチャ格好良い!!」

「立ってるだけなのに凄い迫力!」

「こんな斬新な服、初めて見ました!!」

「嘘・・・、これがあのレオナなの?」

「うわ~~~!こんな服を着て街を歩いてたら、絶対に二度見されるよ!」


「や、やっぱみんなもそう思うか!?ヤバ過ぎだよな!しかも背中がスゲー格好良いんだよ!!」



 レオナねえがクルっと後ろを向くと、なんとビックリ!ボクが描いた絵と変わっている部分があった。


 炎柄はそのままなんだけど、背中に銀の逆十字が描かれているのです!



「あーーーーー!!銀の逆十字じゃん!!」

「確かクーヤの絵には描かれてなかった気がする」

「あの後追加したのでしょうか?」

「うっひょーーーーー!凄い柄だね!!」

「あ~~~!クリスお姉さんに言ってた逆十字って、コレのことだったんだ!」


「そうそう!あの逆十字シャツも完成してるから後で見せるけど、思い切ってコッチにも描いてもらったんだ。スゲー格好良かったからな!」

「クーヤくんの絵に勝手に追加しちゃったから少し不安だったのだけれど、喜んでるってことはコレで良かったのかしら?」

「アタシは最高だと思ってるけど、クーヤから見てどうだ?」



 なるほど。

 ボクに内緒で勝手に絵を追加しちゃったから、気にしてたんだね。



「メッチャ格好良いです!バランスも全然崩れていません!」



「よっしゃ!!」

「クーヤくんがああ言うのならば大成功ね!良かったわ~」



 ワー パチパチパチパチパチパチ!



 ということで、レオナねえの服はパーフェクトの出来でした!

 アイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんの服も似合ってるといいな~。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る