第37話 リリカちゃんとゲームで遊ぶ

 

 ぺろぺろぺろぺろ



 何となく食卓の椅子に座っていたところで背中にくっつかれたので、リリカちゃんに首の後ろをぺろぺろされてくすぐったい。


 この状況を打破するのに、何か良い策は無いか!?

 確か気に入った物をぺろぺろする習性があるという話だったな。


 ・・・嫌われればいいのか!?


 いや、せっかく家族の一員になれたのに嫌われるようなことはしたくない。

 うーーーん、困ったぞ・・・。


 あ、思い返せば、ショタ演奏会をしている時は大人しく聞いていたハズだ。

 すなわち何かで彼女の興味を引けばいいわけだ。


 キッチンでお母さんが洗い物をしているけど、変な召喚士だってことはどうせすぐ知られるんだし問題は無いだろう。



「リリカちゃん!面白い物を出すから、ちょっと場所を変えるよー!」


 それを聞いたリリカちゃんのぺろぺろが止まった。


「おもしろいもの?」


 えーと・・・、あっちのソファーの正面にすっか。



「テレビ、出て来い!」


 ソファーの正面の壁の前に50インチのテレビを出した。



「ファミファミも召喚!ゲームの箱も召喚!」


「わわわわ!!なんかおっきいのがでた!!」



 ファミファミをテレビに繋ぎ、ソファーに届くようにコードを伸ばす。



 よし、ギリギリ届いた。


 テレビが大きい場合、近すぎると目が疲れてしまうので、快適に遊ぶ為にはそれなりの距離が必要なのです。



 ―――リリカちゃんは、初めて見る電化製品に目を輝かせている。



 これでもうぺろぺろどころじゃないハズだ!


 さて、何のゲームが良いかな?折角だから二人プレイが楽しめるヤツにしよう。

 初心者幼女でも楽しめそうなゲームか・・・。


 よし、初代マリモブラザーズにしよう!!


 俺は完全に接待プレイになってしまうけど、それはしょうがない。

 リリカちゃんがゲームにハマればぺろぺろから解放されるという、これは俺にとっても重大なミッションなのだ!



 ♪テッテン テレーレーレーレ



「あっ!!なんかきこえるよ!?」

「これはテレビゲームって遊び道具なんだよ!えーと・・・、リリカちゃんはこっちのコントローラーを持ってね」

「こんとろ??」

「えーと、えーと、コレのこと!」


 リリカちゃんに、2プレイヤー側のコントローラーを持たせた。


 ゲームってのは大抵1プレイヤー側の方がやりやすいんだけど、スタートボタンが1プレイヤー側のコントローラーにしか付いてないので、どうしても最初は俺が主導権を握る必要があるのだ。



「何か音楽が聞こえたから気になって来てみたんだけど~、これはなあに~?」



 あ、お母さんも来てしまった。なんて説明しよう?



「ボクね、召喚士サモナーなんだ!でね、今これを呼び出したの!」

「サモナー?・・・クーヤくんって5歳だから、祝福の儀はまだよね~?どういうことなのかしら?」

「ああ、えーと、えーと、外国生まれだから早いの!!」

「まあ!クーヤくんって外国から来たのね~!」

「ねえねえ!それでどうするのー?」


 しまった。!リリカちゃんを放置しすぎた。

 説明は長くなるから後だな。ゲームを始めればとりあえず有耶無耶になるだろ。


 スタートボタンを押した。



 ♪デーデデーデデッデデデデー

 (※BGMが少し違うって?これはマリモ・・・ブラザーズですので)


「あっ!なんかいる!!」


 リリカちゃんは、画面の一番下にいるマリモ兄弟じゃなく、一番上のブロックの左右にある扉から出て来たタコを指差している。


「アレはねえ、敵なんだ。それでね、一番下のこっちの赤いのがボクで、こっちの緑のがリリカちゃんなの」

「ええええ?あんなのリリカじゃないよ!リリカはここにいるもん!!」

「あははは~!お母さんにもさっぱり理解できないわね~!」



 ぐぬぬぬ、異世界人にゲーム教えるのってめっちゃ大変なんですけど!


 リリカちゃんが持ってるコントローラーを使って、リリカちゃんの指の上から軽く押さえながら、方向キーの左を押したら緑の自キャラが左に進むってことを教える。



「わああああああああ!うごいたーーーーー!!」



 緑色のキャラは、マリモの弟のルイジ。


 正直色合い的には弟の方がマリモっぽいと思うんだけど、赤い方がマリモなのは永遠の謎である。


 リリカちゃんの操作するルイジが画面左端までテケテケ走って行き、そこに突っ立っていたマリモとぶつかった。


 邪魔かと思ってマリモをジャンプさせると、ルイジがその下を潜り抜けて画面左端へと走って行き画面右端から出て来た。端っこは左右で繋がっているのだ。


「あはははははは!!おもしろーーーい!!」


 まず操作を覚えないことにはゲームどころじゃないので、どうすればクリアになるのかは説明せずに、ボタンを押したらジャンプするってとこから教えていく。


「お母さん全然意味がわからないけど、ちょこまか動いて楽しいわね~!」


 そうだ!お母さんにもゲームを教えよう。

 こういうのはみんなで遊ぶのがおもしろいのだ。


「お母さんはこっちのコントローラー持って!」

「え~~~?お母さんもやるの~?」


 どちらも初心者なので、二人ともタコにやられて画面の一番上から復活してすぐまたやられたりしながら、それでもワイワイとゲームを楽しんだ。



 ゲームで盛り上がりすぎてスッカリ家事を忘れていたお母さんが、『楽しくて家事を忘れていたわ~!お母さんはお掃除するわね~』と言って、ソファーから立ち上がった。


 そして洗面所からホウキとチリトリを持って来て掃除を始めたのだが、すごく大変そうに見えたので、ショタが一肌脱ぐことにする。



「お母さん!掃除をする良い道具があるんだ!」


「・・・え!?良い道具って何かしら~?」


 お母さんが掃除の手を止めてこちらを見た。



「掃除機召喚!」


 謎の電化製品の出現に、お母さんだけじゃなくリリカちゃんも注目する。



「えーとね、まずこの長い棒を持って~、スイッチオン!」


 ブォーーーーーーン!


「「うわっ!?」」


 最新式とはいえそれなりに大きな音が出るので、二人ともビックリしたもよう。


「ちょっとうるさいけど、使ってるうちに慣れるから」


 絨毯の上に掃除機をかけて見せる。


「な、何がどうなって、え??」


「この先っぽからゴミを吸い取るんだよ!えーと、触ってみればわかると思う」


 怖がってるみたいだったので、吸い込み口に俺の手を当てて安全なのをアピールしてから、お母さんにも同じことをしてもらい、理解してもらった。


「なるほど~!これは本当にすごいわ~~~!!」

「あははははははは!なにこれ!おもしろーーーい!!」


 リリカちゃんも興味津々だったので、掃除機に吸われる感覚を体験させてあげたのだ。これを機に、お母さんの代わりに掃除機をかけるってくらいまで育ってくれればいいんだけどな~。



 最初は使えない電化製品にガッカリする毎日だったけど、いざ使えるようになってみると電化製品ってやっぱすげえなーと実感するね!


 他にも便利なのがまだまだいっぱいあるから、少しずつみんなにお披露目しよう!

 

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