第228話 なるほど。今日はそういう日でしたか

 タマねえとプリンお姉ちゃんの服を買ってから、続けてドレスアーマーの依頼もしたので、今日はもう十分でしょうってことで真っ直ぐ家に帰った。


 今日の夕食は久々のメメトンカツだったんだけど、初めてこれを食べたプリンお姉ちゃんが、その食感と美味しさにメチャメチャ感動していました!


 その後はいつものようにお風呂タイムです。しかし普段は2番目くらいに入浴するクリスお姉ちゃんが、いつまで経ってもお風呂に入ろうとしなかった。



 ・・・間違いない。この人、プリンお姉ちゃんの湯治に乱入するつもりだ!!



 お母さんとリリカちゃんの入浴が終わり、湯治のためにウチにやって来たタマねえとプリンお姉ちゃんと共にお風呂に向かうと、待ってました!って顔をしたクリスお姉ちゃんもやっぱりついて来た。


 その何とも言えない空気の中、いつものように湯治が始まる。



「どっちから丸洗いするの?」


 タマねえの一言に答えたのはクリスお姉ちゃんだった。


「私はココで見ているから、まずは普段通りにやってみせてくれる?」

「うぇえええええ!!目の前で見学するつもりなんですか!?」

「タマねえ、今日は審査員がいるから手を抜けないよ!」

「うん。いつも手抜きなんかしてないけど頑張る!」

「審査員じゃないし!でもドキドキしてきたわ~~~!」



 そして、緊張しながらもプリンお姉ちゃんの丸洗いがスタート。



 いつも以上に気合の入った匠の技により、くっころ騎士は10分もしないうちに屈した感じだったけど、仕事に誇りを持っている職人達は、約20分かけて完璧な丸洗いを最後までやり遂げた・・・。


 当然ながら、プリンお姉ちゃんは一人で立てないほどフニャフニャに。



「・・・こ、これが伝説の丸洗いなのね!?なんて高度な技なのかしら!!」



 匠の技を目にしたクリスお姉ちゃんは、感動のあまり震えていた。

 ・・・というか、顔を赤くしてハァハァしていた。



「今日は気合を入れ過ぎてちょっと疲れたね」

「うん。でもクリスねえも丸洗いしないと」

「ん~~~、クリスお姉ちゃんもすぐ始める?それとも今度にする?」


「今すぐやるに決まってるじゃない!!」



 ―――――彼女の目は本気だった。



「仕方ありませんね。タマねえ、初めての連戦ですが行けますか?」

「大丈夫。毎日二人とかは無理だけど」

「じゃあ始めましょうか~!」

「おーーーーーーーーーー!」



 最初は『他人に洗ってもらうと気持ちいいわね~』とか言っていたクリスお姉ちゃんだったが、一切の妥協も許さない職人達が『そ、そこは自分で洗うから!』という静止命令に耳を貸すわけもなく、20分かけて完膚なきまで徹底的に洗い尽くした。



 ドサッ


 クリスお姉ちゃんは完全に力尽き、未だにノックアウトしたままのプリンお姉ちゃんの隣に倒れ込む。


 二人とも恥ずかしい格好で絶対に人様にお見せ出来ない顔になっているけど、丸洗い職人達が情報を漏らすことはありませんので安心して頂きたい。


 っていうか、少なくともクリスお姉ちゃんは本望でしょう。

 ある意味、幸せそうな顔とも言えますし。



「ここからが大変」

「まだ洗っただけだもんね。ちゃんと湯治させなきゃ!」



 フニャフニャ状態のお姉ちゃんズを湯船の中に連れて行き、二人が溺れないようにタマねえと一緒に見張り続けた。



 カポーーーン



「やっぱりクリスティーネさんも丸洗いされたのですね・・・」

「凄かった・・・。でもこれは癖になりそうで危険ね~!次回はムラムラやストレスが溜まった頃にでも、大体月一回くらいのペースに抑えた方がいいわね」

「いやいやいや!私、毎日丸洗いされているんですけど!!」

「毎日は危険よ!あの子達ナシじゃ生きられない身体にされてしまうわ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「その沈黙は何かしら?もしかしてすでに手遅れなの!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」



 タマねえと一緒に身体の洗いっこをしてると、湯船の中からお姉ちゃんズが何やら話してる姿が見えた。


 おそらく丸洗いの審査をしてる最中なので、耳を傾けないようにした方がいいな。まだまだ職人としては未熟と評価されるかもしれないけど、そうなったら一人でもフニャフニャに出来るようになるまで努力するだけの話さ。




 ◇




 結局審査結果が発表されぬまま、アイテム召喚の時間となった。

 お母さんにお願いされていたので、みんなでお寿司を食べながらの召喚だ。


 今日は本当に頑張ったので、努力が報われるモノが出て欲しいところ。

 まあ頑張ったと言っても、ぺろぺろとか丸洗いとかそっち方面なんですけどね。



「昨日大当たりだったけど、連日大当たりでもいいじゃない!アイテム召喚!」



 ヴォン



 リビングが眩き光に包まれ、プリンお姉ちゃんが『ひゃっ』と悲鳴をあげた。

 そして出現したブツを見て、クーヤちゃんも悲鳴をあげそうになった。



 ―――――金髪の外人女性が表紙の本だったからだ。



「・・・・・・・・・・・・・・・」


「おい!これってもしかして!?」

「新しいファッション雑誌かもしれないわ!一体どっちなんだろ?」

「クーヤくんが固まってるね」


 目を血走らせたレオナねえが本を開くと、案の定エロ本だった。


「新しいエロ本きっつああああああああああああああああ!!」

「くっ!そっちだったか~」

「ええええええ!?こんな本があるなんて驚きです!!」

「早く次のページを開いて!」

「いや待て!みんな一旦落ち着け。クーヤ、本が傷付く前にストックだ!」

「あ~、そうですね」


 またやっちまった~と思いながらもエロ本をストックし、もう一度呼び出してからレオナねえに渡した。


「同じエロ本じゃ飽きてくるからな!そろそろ新しいのが欲しかったんだよ!」

「どうせならファッション雑誌が良かったな~」

「どちらかと言えばBL漫画が読みたかったけど、こっちでも全然いいよ!」

「まあっ!この新しい本もすごいわ~~~!」

「うわぁ~~~~~」



 騒いでいる家族に巻き込まれないよう、そっと自分の部屋に移動した。


 ちなみにレオナねえ達が大興奮してるというのに、クリスお姉ちゃんだけは冷静沈着な賢者だったと言っておこう。

 

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