第24話 召喚士について考察しよう

 屋敷に帰って来た。



 ボフッ


 ベッドに寝転がりながら、召喚士についてちょっと考えてみる。



 えーと・・・、ライガーさんから聞いた話では、召喚獣を入手するには、まず召喚獣にしたい獣を一人で倒さなければならないということだった。


 でも俺は、カブトくん達を使ってメルドアを倒したけど、そのあとすぐメルドアを召喚獣にすることに成功した。すなわち召喚獣を使って倒した場合でも、自分一人の力だけで倒したということになるわけだ。


 そして俺の場合、通常の召喚以外にも生前いた世界からアイテムを召喚することができ、それで召喚したアイテムも召喚獣扱いとなるらしい。


 そのおかげで、鉄板にカブトムシが突き刺さって勝手に死んで、それを召喚獣にするという奇跡が起きた。


 でもこの裏技を使って召喚獣を増やすってのは、奇跡以外ではちょっと考えつかないかも・・・。


 前に召喚したバールで獣を倒すのも、こっちの世界の武器で倒すのも、どっちも自分一人で倒した扱いになるだろうから、あまり意味が無い気がするんだよね。


 なので、そのやり方で召喚獣を増やそうと考えるのはもうやめよう。



 そして普通の召喚士は、自分の身体を鍛えて召喚獣を手に入れているようだ。


 召喚士を目指したばかりのショタがあまり深い所まで聞くのもどうかと思ってライガーさんには聞かなかったんだけど、おそらく召喚獣で倒した獣も自力で倒した判定になるんじゃないかな?そうでなければカブトくん達で倒したメルドアを召喚獣に出来た説明がつかないし。


 ってことで、やり様によっては身体を鍛えなくとも強い獣を倒すことは可能だと思うんだけど、問題はなぜみんなマッチョ化してるのかだ。


 やっぱ弱い召喚獣で強い獣を倒すのって厳しいのかなあ?


 虫系の召喚獣を使えば、ワンチャン強い獣でも倒せる可能性があると思うんだけどな~。あ、虫だから召喚虫か。いや、めんどいから召喚獣でいいや・・・。


 ああ、そっか!

 普通の虫なんかは召喚獣に出来ない可能性もあるのか。


 カブトムシって絶対普通の虫じゃないよな?

 魔物?モンスター?まあ呼び方はどっちでもいいけど、そっち系の何かだと思う。

 メルドアにしても、動物というよりは魔物って考えた方がしっくり来るな。


 ふむ。


 普通の動物と魔物の強さが全然違うのならば、動物最強クラスを何匹召喚獣にした所で、魔物を倒すのは無理なのかもしれない・・・。


 俺ってめっちゃラッキーじゃない?

 棚ぼたで凶悪極まりないカブトムシを5匹もゲットですよ?


 いや、ラッキーつっても、狙撃屋敷に住んでる時点でとち狂った生活なんだけどさ。

 それこそまさにアレだ。


『虎穴に入らずんば虎子を得ず』


 毎日死と隣り合わせだからこそ成し得た偉業だ。


 ちょっと運が悪いだけで死ぬような生活って、下手すりゃスラムの住人よりも過酷なんじゃなかろうか?毎日狙撃される生活だぜ?もう慣れたけど!!


 とにかくカブトムシさえいれば、これから何体もの召喚獣を手に入れることも可能だということ。頑張れば最強召喚士を目指せるのだ。


 防御力が皆無だから一撃もらったら死ぬけどな!


 出来ることなら遠距離からの狙撃で戦いたいね。

 でも思わぬ接近戦になったら、メルドアに守ってもらいながらの戦闘になるな。

 もしくはメルドアの背に乗って逃げながら戦うってのもアリか。


 ただあの時は本当に怖かったからなあ・・・。

 命を賭けてまで無理する必要あるのか?って気もする。


 仲間の数が増えれば、本当のピンチが来た時に助かることもあるだろうし、街で知り合ったお姉さん達を守ることだって出来るかもしれない。



 ・・・これは今すぐ結論を出すのは早計だな。



 もう少しこの世界のことを知ってから動くべきだろう。

 べつに物語の主人公になる必要は無いんだ。

 ライガーさんのように、御者で生計を立てながらまったり暮らす道だってある。


 ショタの可能性は無限大なのですよ!



 って、そろそろアイテム召喚の時間じゃないか!

 いい加減使える物が出るといいんだけど・・・。



 寝室に乱雑した電化製品を避けながら所定の位置に着く。



「もうこの部屋限界じゃね?」



 このままアイテム召喚を続けて行くと、屋敷の部屋が全部埋まってしまうぞ!


 とにかく電化製品が多すぎるんだよなあ。

 他の部屋に運ぼうにもショタの細腕じゃ無理だしさ。


 まあ電化製品はまだいい。もしかすると雷の魔石とかを買えば電気の代わりとして使える可能性があるのだから。


 問題なのは床に突き刺さっている鉄板とかだ。


 まあ彼はカブトムシを倒すという奇跡の偉業を成し遂げた、最強召喚獣でもあるんだけどさ。




「・・・・・・ちょっと待て。召喚獣だと!?」




 ―――その時、ショタの小っちゃな頭脳は一つの可能性に辿り着く。



 この鉄板に突き刺さったカブトムシは、召喚獣によって倒された判定となったから俺の召喚獣になったんだよな?


 もしかしてここにある鉄板や家電なんかも全て、すでに俺の召喚獣になっているんじゃないのか?もしくは召喚獣のようにストック出来るんじゃないのか?


 右手を鉄板に触れる。



「ストック!」


 ゴイン!


 その瞬間、目の前から鉄板が消失した。

 そして鉄板にもたれかかっていたバールが支えを失って横に倒れた。



「消えた!!これは来たんじゃないの!?召喚獣リストだ!」



 名前:クーヤ

 職業:召喚士


【召喚獣リスト】


 ・カブトムシ(5)[ガジェム]

 ・メルドア     [メルドアジェンダ]

 ・¥%<#>@



 増えてる!!名前はバグってるけど成功したくせえ!



 名前:クーヤ

 職業:召喚士


【召喚獣リスト】


 ・カブトムシ(5)[ガジェム]

 ・メルドア     [メルドアジェンダ]

 ・鉄板



 名前を書き変えた。

 バグった名前を残す必要は無いだろう。


「よっしゃあああああああああ!お前らみんなストックじゃい!!」


 バール・テレビ・ファミファミ・洗濯機・掃除機と、どんどんストックしては名前を書き変えて行く。



 そして電化製品が部屋から消え、寝室がすごく広くなった。



「ふ~~~!やっと元の広い部屋に戻ったな!」



 召喚獣リストが家電まみれになってしまったので、これは後で綺麗に並び替えをしなきゃダメだな。


 あ、電化製品を全部消したのはいいけど、ちゃんと取り出せるんだろうな?



 ―――そして気付く。召喚獣を呼び出す時、魔力を持っていかれることに。



「・・・もしかして俺やっちゃいました?」



 下手したら、これもう取り返しつかんぞ・・・。

 

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