第51話 変なフラグが立ってませんかね!?

 丸一日ゲームに明け暮れていたリリカちゃんは、もうかなりモンキーコングが上手くなっていた。


 しかし、さっき初めてゲームに触ったばかりのタマねえも、リリカちゃんのプレイを見ていたおかげか、天性の素質があったのか、なかなか操作が上手くて驚いた。


 最初はコントローラーのどこを押せばどう動くかなど、ゲーム以前の問題で難儀するところを、みんなよりも一早く彼女は理解したのだ。


 リリカちゃんも『素人にしては結構やるじゃない』といった表情を見せている。

 タマねえならば、リリカちゃんのいいゲーム仲間になるのではないだろうか?



「クーヤ、これすごく面白い!」

「おもしろーーーーーい!!」

「ゲーム仲間が増えて良かったね!リリカちゃん」

「うん!!」


 でもそろそろヤメさせないとな。

 面白いのはすごくよくわかるが、ゲームは麻薬なのだ。



 ガチャッ


『うわ、イテテテテ・・・』

『ちょっと、大丈夫?』

『マリアンネさん呼んで来るよ!』



 ん?誰かが帰って来たみたいだけど、複数の声が聞こえるな。

 レオナねえが冒険から戻ったのかな?


 ガチャリ


「マリアンネさん、いますかー?」

「は~い、一体どうしたのかしら~?」

「レオナが怪我をしたから、すぐ治療をして欲しいんです!あ、でも重症とかではないので心配はいりませんから」

「あらあら~~~!」


 え?レオナねえが怪我を!?


 お母さんが急いで玄関に走って行った。

 俺も慌てて後ろを追いかけて行く。



「傷は洗ったの?」

「玄関先でナナに洗浄してもらった」

「裂傷は腕だけなので、先にそこをお願いします!」


 ホワ~~~ン


 怪我は腕だけなのか、良かった~!


「おねえちゃん、だいじょうぶ?」

「ああ、リリカにまで心配かけてすまなかったな。全然大丈夫だ!」


 リリカちゃんとタマねえも、俺の後ろに来ていたようだ。



 そうか・・・、レオナねえは冒険者なんだし怪我は付きものだよな。

 どういう依頼内容だったのかは知る由もないけど、やっぱ冒険者は命懸けの職業なんだ。


 俺は将来何を目指したらいいのだろう?


 せっかくの異世界なんだからって冒険者になる想像しかしてなかったけど、こういう現実を見ると、もっとしっかり考えた方がいいのかもしれないな。


 正直、自分が死ぬことは怖くない。

 でも俺が死んで、家族が悲しむ姿を想像すると怖い。


 でもそれはレオナねえにも言えることで・・・、そうか!俺がレオナねえを守ればいいんだ。アイリスお姉ちゃんナナお姉ちゃんもだ。やっぱ目指すは冒険者だな!


 一緒のチームに入るかどうかはともかく、同じ冒険者ならば陰からサポートすることだって可能だと思う。


 よし、目標は決まった。


 そうなるとやはり、みんなを守る為に召喚獣を増やす必要がある。

 5歳児だからって家族に甘えていては、きっといつか後悔することになるだろう。


 チャンスがあれば積極的に魔物を退治して手駒を増やして行こう!



「けど、レオナが怪我をするなんてめずらしいわね~?」

「なんか最近魔物の数が増えてんだよな~。ゾ%ミ+#3体の討伐依頼だったんだけど、纏まって10体いたんだぜ?」

「アレは酷いよね!依頼を受けた以上、逃げ帰るわけにもいかないし・・・」

「何とかなるかも!って所に、他の魔物まで来たんだ。いや~キツかった~!」



 えーと、『ゾ%ミ+#』って魔物の討伐依頼を受けて現場に行ったら、思った以上に魔物が湧いていてヤバイ状況になってしまったと。


 なんかそれってさ・・・、異世界アニメとかでよくある、魔物のスタンピードが起きるフラグとか立ったりしてませんかね!?


 いや、考え過ぎだろうか?俺ってまだ異世界初心者だし、決めつけは良くないか。



「まさか、&ニレ>@グ%が来るの!?」

「可能性はあると思う。この街なら魔物がどんだけ来ようと守り切れるけどな」

「強い冒険者が揃っている時なら大丈夫でしょうけど・・・」

「依頼を受ける時に、<ログ+ールなら見かけたよ」



 思いっきりスタンピードの話をしてませんかね!?


 たぶん『&ニレ>@グ%』って単語は、スタンピードのことだろ。

 んで『<ログ+ール』ってのは、高ランク冒険者のチーム名とかかな?


 ふと後ろを見ると、リリカちゃんとタマねえも心配そうな顔をしていた。


 子供に変な心配をさせるのも可哀相だ。

 ゲームの世界に戻そう。



「レオナねえは大丈夫みたい!じゃあゲームに戻ろ?」


「うん!もんきーこんぐ!!」

「・・・・・・えーと、うん」


 タマねえは何か言いたそうだったけど、子供達三人はリビングに戻った。



「ねえクーヤ!これはなあに?」


 リリカちゃんが指差したのは、ゲームが詰まった箱の横に転がっていたクエクエのカセットだった。


 これは最初からファミファミに刺さっていたヤツなので、何となく箱の中には入れてなかったんだよね。


「これもゲームなんだけど、ボクのいた世界くにの言葉が出てくるから、文字が読めないよ?めちゃめちゃ面白いけどね!!」

「やってみたい!!」

「気になる」

「エーーーーー?でも、文字が読めなくて面白いのかなあ?」

「じゃあクーヤが文字を読んで!」

「なにィ!!クーヤちゃん翻訳システム!?」



 すごく面倒なことになったような気がするけど、めちゃめちゃ面白いとか言った俺のせいじゃん!!


 こうなったら最後まで翻訳してでも、二人をクエクエの世界に引き摺り込むか!!

 

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