第104話 ショタが一人で街をフラフラする
クリスお姉ちゃんと一緒に企画室を出たクーヤちゃんだったが、当然ながらすんなりと外に出ることは出来なかった。
1階の正面出口に向かってる所を、朝話をした二人の店員さんに見つかって、またもやショタの奪い合いが始まったからだ。
ついでに買い物をしていた女性客も集まって来て、お姉さま方に揉みくちゃにされてしまう。(※化粧が濃くて香水の匂いが凄まじいマダムも含む)
そして騒動が治まるまでに要した時間は1時間。
女性客しかいないアパレルショップの危険性を、これでもかってくらい知ることが出来ました・・・。
うーむ、次来る時は護衛(タマねえ)が必要かも。
あ、ちなみにクリスお姉ちゃんが働いているお店は、『シェミール』という名前でした。すごくそれっぽい感じ過ぎて、逆に忘れてしまいそうですね。
そして店を脱出したあひるポンチョのショタは、一人テクテクと中央広場までやって来たわけですが・・・。
クルッ! ササッ
「やっぱりいる!」
なんかさっきからずっと、メガネを掛けたチンチクリンの女性がコソコソとついて来ているのです!
人見知りな性格なのか、直接話し掛けては来ないんだけど、振り返るとササッと人混みに隠れるから余計気になるんですけど・・・。
クリスお姉ちゃんに『変な女の人について行っちゃダメよ?』って言われたけど、変な女の人がついて来た場合はどうすりゃいいのさ!?
すぐ隠れるからまだよくわからないんだけど、おそらく中学生から高校生くらいの年齢の女性だと思う。
そういやあのチンチクリンからは、ティアナ姉ちゃんに近いモノを感じるな・・・。
気を付けないと家にお持ち帰りされて、『この子は今日からウチの家族となることが決まりました!異論がある人は挙手して下さい!』とか言い始める可能性がある。
しかしいつまでもチンチクリンに構ってる暇など無い!
こっちは接客の達人を探さなきゃいけないんだから。
しかも『安月給でもいいから働かせて下さい!』っていうほど切羽詰まった人という条件付きだ。
正直そんな都合の良い人が見つかるのか不安はあるけど、あきらめたらそこで試合終了なのです!
―――その時、エプロン姿の女性がちょこまか歩いているのが見えた。
ほう?
飲食店の店員か。オープンテラスとはお洒落な店だね。
ベイダー工房では基本的に馬車の販売になるんだけど、飲食店だろうが接客は接客だ。経験者ならばどんな職種にでも応用できよう。
近寄ってみる。
「いらっしゃいませ。何名様でいらっしゃいますか?」
「えーと、後からもう1人来るから3人」
「かしこまりました、席にご案内致します!」
ほうほう!赤くて長い髪のクソ生意気そうな顔をした女のくせに、ハキハキした接客は見事よのう。
「あとコレも!」
「お飲み物はよろしいでしょうか?」
「あ、飲み物も頼もうか」
「私はコレ!」
「俺はどうすっかな~、じゃあコレにする。ああ、同じ物をもう一つ!」
「ありがとうございます!ではご注文を繰り返しますね」
飲み物も注文させることに成功したか。
まあお決まりのセリフなんだろうけど、あれくらいスラスラ言えるようになればもうベテランの域よな。
赤い髪の女が建物の中に入って行ったので、なんとなくついて行く。
楽しそうに料理を食べているお客さんを横目に建物に近付いた時、中で従業員達が会話してるのが聞こえて来た。
・・・ちょっと覗いてみるか?
「あ”~~~だり~~~~~!もう帰りたいんですけど~」
「ちょっとだらけ過ぎじゃない?確かに今日は暑いけどさぁ」
「にゃははははははははは!ランにゃんは雑魚にゃね!これくらいの暑さでへこたれてるようじゃ、冒険者にはにゃれにゃいにゃ!」
「ならないから!原っぱを駆け回るのが嫌だからこの仕事をしてるんだし」
「ねえねえ!あのハゲたお客さん、ランのことをネチャ~っと見てたよ?」
「ヤメレ気持ち悪い!」
おい赤い髪の女!
両足をガバッと開いてるから、ココからだと白いパンツが丸見えなんですけど!
仕事中は背筋をピンと伸ばした完璧な接客態度でも、人目が無い所ではやっぱこんなもんだよね。
クーヤ青年のコンビニ時代にいた、クソほどもやる気の無い先輩女性も、裏ではめっちゃ口が悪かった。態度も非常に悪かった。
それより、ぺち子姉ちゃんのバイト先ってココだったんかい!
あのバカ猫に接客なんて出来るのか??
「あら可愛い子!・・・おっといけない」
うお!
後ろから店員が近寄って来ていたことに全然気付かなかった。
「団体さん来たよー!ほら、休んでないで仕事仕事!!」
「だり~~~~~!はぁ、しゃーないから行くか~」
「にゃはははははは!頑張るにゃよ~~~!」
「アンタも行くのよ!」
「うにゃっ!?」
イカン、こっちに来る!緊急退避ーーーーーーーーーー!!
とてててててててて
―――そして従業員が外に出て数分後、事件が発生した。
「ひゃいッ!?」
クーヤちゃんは見た。
あのハゲた客、赤い髪の女のお尻を触りやがった。
そしてお尻を触られた女が振り返って、ハゲを睨みつけた。
「なにすんじゃこのハゲ!ぶち殺すわよ!!」
赤い髪の女のハスキーな声がテラスに響き渡った。
「あん?別に何もしてないだろ。俺が一体何をしたと言うんだ?」
「お尻を触ったじゃないのよ!」
「知らん!それよりも何だ?客に対してその口の利き方は!店員の教育がなってねえな!この店はよ!!」
・・・ムカつく客ですね。
ゴーレムパンチくらわしてやろうか?
ん?
ぺち子姉ちゃんがスタスタと現場に近寄って行った。
「店員ににゃまいきな口を利くとは許せにゃいにゃ。これはキツいヤキをぶち込んでおく必要があるにゃね・・・」
おい、ちょっと待て!
「何だ?この頭の悪そうな女は」
「ランにゃんのお尻を触ったくせにその態度、もう容赦しにゃいにゃ!」
ドガシャーーーーーーン!
ぺち子姉ちゃん怒りの鉄拳がハゲの顔面に直撃し、その衝撃でテーブルがひっくり返った。
「ごハアッッ!!」
「乙女のお尻を触って許されるのはししょーだけにゃ!」
ドガーーーーーーーーン!
いや、師匠は丸洗いしただけです!ハゲと一緒にしないで!!
「そもそも店に入って来た時から頭が眩しくてイライラしてたにゃ」
バゴーーーーーーーーン!
いや、それはハゲ全員に失礼ですよ!
トントン
「今忙しいにゃ」
トントン
「だから今忙しいにゃ。用があるにゃら・・・、ハッ!?店長!!」
ぺち子姉ちゃんの肩を後ろからトントンした男は、どうやら店長だったらしい。
そしてニッコリ微笑んで一言。
「クビ」
「・・・・・・・・・・・・」
何をやってるんだ、あのバカ猫は!?
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