第34話 ティアナお姉ちゃんの家

 三人で手を繋ぎながらテクテク歩く。


 大人1子供2という構成の場合、ティアナお姉ちゃんが真ん中を歩くのが絵になると思うんだけど、なぜかあひるポンチョのショタが真ん中だ・・・。


 街の中央にあるいつもの広場を通り抜け、西に進んだ所に彼女達の家があった。

 ちなみに俺が住んでた屋敷は街の南端にあるので結構歩いた。



「ここが我が家よ!今日からクーヤくんのお家だからね!!」


「おおおおお~~~~~~~~!!」

「お~~~~~~~~~!!」



 屋敷と呼べる大きさではないけど、結構大きくて綺麗なレンガの一軒家だ!

 レンガの家に住むのは初めてなので、かなり楽しみだな~。


 もうこの家を見ただけで、なかなか裕福な暮らしをしていることが伺える。


 ちなみに俺が住んでた屋敷は、コンクリに近い感じの何かで作られた家だったんだけど、とにかくお化け屋敷状態だったから、まったく感動なんてしなかった。


 ってかリリカちゃんや、『お~~~~~~~!』って言ってるけど、ここはアンタの家でしょうが!!もうツッコミを入れるには遅いけど。



 ガチャッ!



「ただいま~!」

「ただいまーーー!!」

「えーと、お邪魔しま~す」


 ティアナお姉ちゃんがこっちを見た。


「クーヤくん、もう今日からここに住むんだから『ただいま』よ?」


 初めて来た家なのに『ただいま!』ってのも何か変だと思うんだけど、俺は空気が読める男。


「た、ただいまー!」


 ティアナお姉ちゃんに頭をなでなでされた。



「お?ティアナとリリカ、遅かったじゃ・・・」



 タンクトップに短パン姿の、勝気そうな金髪美女と目が合った。



「・・・・・・ティアナ、あんたまさか・・・」


「ああ、えーとね、この子は」


 ダダダダダダッ ガチャッ!


 ティアナお姉ちゃんが説明しようとした瞬間、金髪ショートヘアーの美女が奥の部屋に走って行ってしまった。



『大変だ!!とうとうティアナが、どこかから少年を攫って来やがった!!』



「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」



『エーーーーーーーー!!何ですって!?』

『あらあら!まあまあ~!』



 ドアが開いてるので、奥の部屋から声が漏れ聞こえて来る。

 あの部屋の中に二人いたのかな?全部女性の声だ。



 ・・・うん、とりあえずティアナお姉ちゃんがキレかけてるな。



 玄関に靴がいっぱい置いてあるので、どうやらこの家ではみんな靴を脱いで生活しているようだ。


 正直この世界のことがさっぱりわかっていないので、まずは常識から学んでいく必要があるだろう。


 今日からこの家に居候生活だからな。

 変な行動をして奇異な目で見られないようにしなければ。



 ・・・あ、奥の部屋から女性が三人出て来た。



 一人はさっきの勝気そうな金髪ショートヘアーのお姉さんだ。


 もう一人は水色のロングヘアーで、ちょっとお嬢様っぽい感じの女性。


 その後ろから歩いて来てるのが、銀色のロングヘアーでおっとりとした感じの優しそうな女性だ。この人がお母さんなのかな?


 でも、お父さんらしき人物が部屋から出て来る様子はない。

 まだ外が明るかったから、仕事中なのかもしれないな。



「見てよホラ!こんな小さくて可愛い・・・、うわっ!!よく見たら何このメチャクチャ可愛い少年は!!」


 金髪美女にひょいと抱きかかえられた。


「ほわっ!?」


 きゅーっと抱きしめられ、クンカクンカされた。


「って、男の子であってるよね?」


 股間を触られ確認された。


 いや、ホントそれだけはマジで勘弁して下さい!!


「うっは!可愛すぎるんですけど!!こりゃティアナじゃなくたってお持ち帰りするわ!でかした、妹よ!」

「いや、ちょっと勘違いしないでよ!」

「うわ~~~!この子本当に可愛いわね!!ちょっと私にも抱かせて!!」


 今度は水色令嬢に抱かれてクンカクンカされる。


「あは~~~!よし、今日はお姉ちゃんと一緒に寝ようね」

「おいこら!部屋に連れて行こうとするな!!」

「だめーーー!クーヤはあたしのーーー!!」



 何なんだこれは!?

 ティアナお姉ちゃんの家に入った瞬間から、超絶モテモテ状態なのですが!!


 見た目はショタだけど、享年21歳だった俺のストライクゾーンは15歳~35歳なので、沢山の美女にこうもチヤホヤされるとですね・・・。



「子供はもっと優しく抱っこしなきゃだめよ~?」



 今度は銀髪の美女に優しく抱きかかえられた。



「わぷっ!」


 遠目で見た時からおっぱい大きいなーとは思ってたけど、想像してたより遥かに大きかった!これは窒息してしまう!!


 なんとか気道を確保して、おっぱい死だけは回避した。



「はぁ~、本当に可愛いわ~!お母さんね、こんな男の子が一人欲しかったのよ~」



 今の言葉を聞き、ティアナお姉ちゃんの眼鏡がキラッと光ったのが見えた。



「ハイ、みんな聞いて!!」



 場が落ち着いて来たのもあり、ようやく女性達がティアナお姉ちゃんに注目した。



「この子は今日からウチの家族となることが決まりました!異論がある人は挙手して下さい!」


「「・・・・・・・・・・・・」」



 またもや場が凍り付いた。



「あんたやっぱり・・・」

「いや、ホントどこから連れて来たのよ!?」

「お母さんね、この子の親御さんが心配してると思うの~」



 ティアナお姉ちゃん・・・。

 そこは結論じゃなくて、最初からしっかり説明する場面でしょうが!!


 洞察力に優れた人物かと思ったら、案外ポンコツだったでござる。

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