第189話 バカチン共を回収しに行く
レオナねえ達との話し合いの結果、やはり近隣国から攻めるのが安全だろうということになり、ドラゴンに乗っての次の目的地は『ミミリア王国』の西にある『セルパト連邦』に決定した。
連邦ってくらいなので、そこにはいくつもの国が存在するらしいんだけど、レオナねえ達はこの『ミミリア王国』から一度も出たことが無いようで、ほぼ予備知識ゼロでの突撃になるらしい。
治安の良い国と悪い国が混在するから、ハズレを引いたら面倒臭いことになりかねないけど、まあそういうのも旅の醍醐味でしょう。
ちなみに『ミミリア王国』の南には『ロズモ帝国』というデカい国があり、そこと我が国とはバッチバチの敵対関係だそうだ・・・。
ホントお隣さんって嫌よねえ~。
まあ敵対国といっても、さすがに一般人に攻撃して来るほど憎しみ合ってるわけではないと思うけどね。しかし帝国って響きがすでに危険な香りを放ってるから、どちらかと言えば行きたくない国と言わざるを得ない。
馬鹿正直に『ミミリア王国から来ました!』とでも言わなきゃ何てことないんだろうけどさ、まあどちらにせよ帝国は後回しだな。
ってなわけで、もういつでも冒険に出られる状態ではあるんだが・・・。
「あのバカチン共から、まったく連絡が来ない」
「・・・バカチン共?」
ショタの呟きにタマねえが反応した。
「メルドアとレグルス」
「え?まだ帰って来てないの?アレから3日経ってるけど」
「未だに二人共ガンガン魔力を使いまくってる状態だから、まだ決着がついてないんだろなあ・・・」
「もう待っていられない」
「魔力が尽きないばっかりに、本人達もヤメ時が分からない状態なんだと思う。意地の張り合いが極まって、先に心が折れた方の負けみたいな?」
「疲れきってるだろうから、むしろ仲裁が入るのを待ってる」
「だね!んじゃ喧嘩を止めに行きますか~」
もう十分だろうってことで、タマねえに抱えられながら南の森へと向かった。
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「そこまで!!」
大声で二人に命令を出し、戦闘を強制終了させる。
すると、全身ズタボロになったメルドアとレグルスが、足を引き摺りながらトボトボとこちらへ歩いて来た。
「途中で二人の闘いを止めちゃったけど、いくら何でも時間が掛かり過ぎです!3日間闘い続けて決着がつかないということは、実力が完全に拮抗しているということなので、この勝負は引き分けとします!」
『オンオンオンオン!』
『ガウガウガウガウ!』
「気持ちはわかるけど、ボクの魔力だって無限じゃないのです!」
『オン・・・』
『ガウ・・・』
さすがにボクに迷惑をかけていることがわかったのか、メルドアとレグルスはやっと大人しくなった。
「また今度余裕がある時に闘わせてあげるから、それまでは召喚獣としての務めをしっかり果たすこと!じゃあとりあえず二人とも、その満身創痍の身体を癒すよ」
メルドアとレグルスを一旦消し、すぐに召喚し直した。
たったそれだけのことで、召喚獣は元気な姿へと戻るのだ。
『オン!』
『・・・ガウ!?』
もう何度も体験したメルドアは慣れたモノだけど、レグルスは一瞬で痛みが消えたことに驚いているな。
でも安心しなさい。ドラゴンクラスの敵と戦えば何度だって体験出来るから!
「ねえクーヤ、レグルスに乗ってみたい!」
「あ、それいいかも!なんかレグルスはタマねえに似合いそうな気がする」
『ガウ?』
ボクの言葉が理解出来るメルドアが、今から何をするのか察したみたいで、ボクの前まで歩いて来て地面に伏せた。
「なるほど。レグルスにお手本を見せてやると?」
『オン!』
とかいいつつ、素人召喚獣に力の差を見せつけたいのでしょうな!
以前メルドアは、ショタを快適に乗せる練習を頑張ったことがあるのです。
というわけで、ボクはメルドアに、タマねえはレグルスに乗り、お化け屋敷に向かってトコトコ歩いて行った。
「クーヤ・・・、レグルスに乗ってるとすごく酔う」
「やっぱり具合が悪くなったか~」
それを聞いたメルドアが、レグルスに向かって『オンオン』話し始めた。
訳すと『彼女が辛そうにしてるだろ!全然歩き方がなっとらん!』といった感じで、やっぱりこれがしたかったんだなーと、クスっとした。
ボクの方からもメルドアの特訓をした時みたいに丁寧に教えながら歩いていると、レグルスも少しずつ人を乗せた時の歩き方をマスターしていった。
しかし調子に乗ったメルドアは完全に忘れていた。
この先に進むと、ガジェムの通り道があるということを!
「あ、お化け屋敷だ」
「降りた方が良い?」
『オ、オン!』
「メルドアが、『全然余裕だからこのまま進む!』と言っております」
「ほうほう。じゃあもう少し乗ってる」
レグルスの前だからメルドアの奴めっちゃ痩せ我慢してるな・・・。
あの黒い獣にだけは、ガジェムに臆している姿など絶対見せられないのだろう。
―――――そしてお化け屋敷の横を通り過ぎようとした時だった。
「はっ?鉄板召喚!!」
ゴイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!
左側から低空飛行で飛んで来た5匹のカブトムシが、鉄板に突き刺さった。
「あっぶねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「嘘ッ!?今ぶつかったのってガジェム?」
「ガジェムだね!何度もココを通ったけど、直撃しそうになったのは初めてだよ!」
タマねえと二人で鉄板の裏に回ってみると、思った通り、5匹のカブトムシが突き刺さっていた。
「よくこんな分厚い鉄板に突き刺さるよな~、コイツら」
「咄嗟に防御したクーヤ、すごい!」
「ひ弱なクーヤちゃんも、少しは成長していたみたいですね!」
これでようやく、『黄昏の鉄板使い』としての面目躍如でしょうか!?
本当に危ないところだったけど、今ので少し自信がついたかもしれない。
「あっ!思えばこれでカブトムシが10匹になったぞ!」
「またクーヤが強くなった。タマも頑張らなきゃ・・・」
「タマねえには無限のパチンコ玉があるから、手数じゃ全然負けてるけどね!」
ただ、突き刺さったカブトムシはまだ生きているみたいで、ストックすることが出来なかった。しばらくここで待ってなきゃダメらしい。
仕方がないので安全の為に鉄板の反対側に避難した。
「あれ?」
「なんかメルドアとレグルスが全然動かないんだけど?」
「こいつら、立ったまま気絶してやがる・・・」
メルドアは知ってたけど、レグルス!お前もかーーーーーーーーーーー!!
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