第100話 ハンバーガーを超える大物が!

 グロスメビロスを壊滅させ、悪そうなお兄さんに後始末を任せたボク達は、再び孤児院へと戻って来ていた。



「というわけで、あの乱暴者達はもう二度と孤児院には来ないから!」

「もう安心していい」


「『というわけで』じゃ全然わかりません!」

「あの後どうなったの!?ずっと心配してたのよ!!」


 孤児院に帰って来てすぐ戦勝報告をしたショタ達がいる玄関先に、院長先生とアンナ先生が駆け寄って来た。


「えーとねえ、アイツらを全員ボコボコにして来たの。んで今頃は悪そうなお兄さん達が二度と孤児院に手を出さないようにわからせてるハズだから、もうココに構ってる余裕なんて無いの!」

「子供達も安全になった。たぶんもう大丈夫」

「ボコボコって・・・、子供に負けるような軟弱そうな人達ではなかったと思うんだけど!」

「でもさっき悲鳴を上げているあの人達を引き摺って行くのを見たわね・・・」


 あ、そういえばタマねえが不意打ちをくらわせてズルズル引き摺ってく所を、二人に見られてたんだった。


「知り合いのお兄さんが結構大きい組織の偉い人だから、その人に後始末を全部頼んだの!持つべきものは友達(組織の幹部)だよね!」

「クーヤ、いいこと言った!」

「す、すごい友達がいるのね・・・」

「見た感じ元気いっぱいですけど、二人とも怪我は無い?」

「大丈夫!じゃあそろそろ夕食に間に合わなくなるからボク達は帰るね!」

「明日のお昼を過ぎた頃迎えに来るから」


 あ、そうか!明日は面接があったんだ。

 院長先生と子供達を連れて、またベイダ―工房まで歩かんといかんのか・・・。


「そうでした!ではまた明日よろしくお願いしますね。孤児院に色々と良くして下さり、御二人には本当に感謝しています!」

「本当にありがとう!今日も助けてもらって、二人には感謝しかないわ!」

「全然気にしなくていいよ!みんなの日頃の行いが良いおかげで仕事の話が来たってだけだから!じゃあ帰るね、バイバーイ!」

「バイバーイ」


 やっぱ日々を誠実に生きてる人は報われなきゃね!


 悪いことをしていたらこの話は無かったんだから、自分らの生き方にもっと自信を持ってほしい。



 とまあ、イベントが盛沢山だったにも関わらず、今日も涼しい顔をしながら普通に家へと帰って行った。






 ************************************************************






 夕食もお風呂も終わり、全員が所定の位置に着いた。

 もちろん、家族の誰もがアイテム召喚を楽しみにしているからだ。


 正直、当たりを引く確率ってのはそんなに高くない。

 まあ考えれば当然のことなんだけどね。


 地球上には、石ころとか釘とか用途のわからないプラスチックなど、欲しいと思わない物の方が圧倒的に多いのだから。


 むしろ自分の運が良くなってるから、電化製品のような当たりを数多くゲット出来ているのだ。


 そしてハズレがあるからこそ、当たりを引き当てた時の感動が大きいのです!



「今日は何だか行けそうな気がする~~~!アイテム召喚!!」



 ヴォン



 未だに慣れることのない眩き光に室内が照らされ、役目を終えた光が喪失する。

 そして目の前に出現した物を見て、一瞬異世界にいることを忘れた。



「うおおおおおおおおおお!ラーメン来っつああああああーーーーーーーー!!」



「あっ、食べ物だ!湯気が出ているよ!」

「クーヤくんが叫んでるってことは当たりなんじゃない?」

「でもあんな食いもん見たことねえぞ!?」



 『これは何だろう?』なんて考えるまでもなく一目瞭然。


 インスタントなんかじゃなく、ラーメン屋さんでそこそこ高い金を払うと食べることが出来るガチのラーメンだ!!しかもチャーシューが5枚ほど入ってるような気がするぞ!


 うわ~、これ絶対チャーシュー麺だよ!ご丁寧にレンゲも入ってるし、どんぶりの上に箸まで乗っている。


 ・・・いや待て、よく考えたらこの状態ってすごいタイミングじゃないの?


 店主が『へいお待ち!』と言ってカウンターの上にずいっとラーメンを置き、ハゲ散らかしたおっさんが『さあ食べよう』と箸を手に取るが、トイレに行きたくなったんで箸をどんぶりの上に置いた所で異世界に召喚され、その場からラーメンが消失。


 ウーム、これはハゲ散らかしたおっさん涙目だな。見た所一口も食べてないし。

 悪いことをしてしまった。有難く食べさせて頂きますので許して下さい!



 しかしですね・・・。



「さっき腹いっぱい食べたばっかじゃん!!」



 今って夕食後なんですよ!

 その満腹状態でラーメンって、流石のクーヤちゃんでも厳しいですよ?


 あ、やべっ!考えてる間にラーメンが伸びてしまう。

 えーとこれは・・・、このままストックで問題無い気がするな。


「ストック!」


 召喚獣リストのバグった文字をラーメンに書き変える。


「ラーメン出て来い!」


 そして再び目の前にアツアツのラーメンが出現した。

 もうすでにお腹いっぱいだけど、食べぬわけにはいくまいよ。


 どんぶりの上に置かれた鉄製?の箸を手に取り、ラーメンと対峙する。



 ズズズズズズ


「・・・・・・・・・・・・」



「食ったぞ!」

「あの表情は・・・熱い物を口に入れた時の顔ね」

「それじゃあ美味しいかどうかわかんないよ!」



「うんまあああああーーーーー!!味噌ラーメン来ましたーーーーーーーー!!」



「おおおおお!うんまーーーって叫んでるぞ!!」

「どうやら大当たりだったみたいね」

「どんな味がするんだろ?見た目じゃ想像もつかないね」



 死ぬほどうめえ・・・、夕食後だというのに箸が止まりませんぞ!!

 チャーシューもとろっとろなのです!


 うわ~、こりゃあ大当たりだわ・・・。


 食べた後に消すと満腹感も消えるわけだから、夕食後に食べるのって実は悪くないのかも?だって最初から満腹だもん。エンドレスラーメンにならずに済む。


 まあ、どのタイミングで食べるかは要検証だね!でもやっぱりお腹いっぱい過ぎて完食は無理だったので、ラーメンを再召喚して新品に戻した。


 あっ、お腹が軽くなったぞ!これは夕食後がベストなのかもしれない。

 おっと!そろそろみんなに回して行こう。



「よし、最初はレオナねえにしよう!この中で一番良い反応するからね~」


「良い反応するからアタシなのかよ!」


 非力なショタじゃラーメンを手渡すのが怖かったんで、今回は場所を移動した。

 そして早速レオナねえがラーメンを食べ始める。


 ショタの見様見真似だけど、意外と器用に箸を使っているな。


 ズルズルズル


 ああ!そういえば、すすりながら食べるのって外人は苦手なんだっけか。


「・・・・・・・・・・・・・・・」


「ん?」


 ズルズルズルズル


「うっめーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!なんだこりゃ!?生まれてから今まで食った中で一番美味えぞ!!」


 何事かと思ったら溜めの空白だったのね。


「やっぱり?絶対レオナねえが好きなヤツだと思ったんだ!」

「この肉の柔らかさは何なんだよ!?ハンバーガーの肉よりもトロットロだぞ!しょっぱさも何もかも全てが完璧だ!!」


「そんなに凄いの!?」

「さっきお腹いっぱい食べたばかりなのに、よくそんなに食べられるわね~」

「タマもそれ大好物の予感がする。次食べていい?」

「もちろんいいわよ~!クーヤちゃん、これも太らないのよね~?」


「うん!お腹いっぱいの時に食べれば消えてもお腹いっぱいだから、なんかすごく満足するよ!」


「「もう、わけがわかんないし!!」」



 自分もわけわからんっス!

 とにかくラーメンはレオナねえの主食になりそうな予感ですね!


 ・・・無限シリーズだから栄養にはならんけど。




  ◇◇◇




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