第239話 ユリイカ。

 ベースに戻り、ミチヤにお礼を言ってレイヤー0へと戻った。


 時間は15時。おやつの時間だ。


『久しぶりに行ってみるか……』


 俺は思い浮かんだ場所へと向かった。駅からちょっと離れた喫茶店『Eurekaユリイカ』。前にレンに教えてもらった隠れた名店だ。コーヒーはもちろん、デザートのケーキやパフェなんかも絶品。あのレンに「メニュー全部がおすすめ」と言わしめたのは伊達だてじゃない。


 店の前に着き、店内の覗く。今なら並ばないでも入れそうだ。昨日の”異次元”といい、ラッキーが続いている。店内に入り、2人席に案内された。メニューを開き、数分悩む。しかし、結局は同じものを頼んでしまう。


『ブレンドコーヒーとバウムクーヘンケーキをお願いします』


 初めて来たときからこればかりだ。スマートフォンを触りながら、注文したコーヒーとケーキが届くのを待つ。


【あれ? ヒカルさん?】

『ん?』


 振り返ると、そこにはカイユウがいた。


『おぉ、カイユウじゃないか! まさかこんなところで会うなんてな。1人か?』

【はい、1人です。こっちこそ驚きましたよ】

『こっち座りなよ』

【失礼します。注文いいですか?】


 カイユウはメニューも見ずに店員を呼んだ。


【カフェモカとバウムクーヘンケーキで】

『メニューを見ないなんて、よく来てるのか?』

【そうですね。疲れたりしたときによく来るんですよ。甘いものが好きで……】

『なんか意外だな』

【そうですか?】

『カイユウって真面目なイメージがあるから、甘いものなんてこのんで食べないのかと思ったよ』

【男1人でケーキとか食べるのはちょっと恥ずかしいですけどね……。もう慣れちゃいました】


 こうやってみんなと話していると、意外な姿が見えて面白い。カイユウが医師を目指すきっかけや、医師であるカイユウの両親の話なんかを聞かせてもらった。


『カイユウ、今日はありがとう。1人の時間を邪魔して悪かったな』

【いえいえ、こちらこそありがとうございました。こうやって人と一緒に食べるのも悪くないですね】


 店を出ると、帰り道が反対方向だったため、その場で別れた。家に帰ると急激な眠気が俺を襲った。そのまま、俺は眠りに落ちた。

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