第152話 二刀流。

 俺とミチヤのやり取りを見ていたグレンが、ようやく自分を取り戻した。


【おい、なんだよ! オレがぶっ壊しちまったってわけじゃないのかよ!】


 グレンは怒鳴りながらも、安堵の表情を浮かべていた。


『俺もビックリしたよ』

【ごめんなさい……。まさかそんな状況で見つかるなんて思わなくて……】

『いやいや、謝らなくていいよ。別にミチヤが悪いわけじゃない。誰が悪いかって言うなら、突然攻撃を仕掛けて来たグレンだろう。それにしても、この状態だと二刀流って感じだな……』


 2つに分かれたシャルを見つめる。とりあえず、本能のおもむくままに振り回してみる。伸縮も可能で、小さくなったシャルと言っても過言ではない。


『グレン。これを試したいから、少し相手をしてくれないか?』

【いいぜ。多少は手加減してやってもいいぞ】

『そうしてもらえると助かる。ミチヤ、ありがとうな。また可能性が広がりそうだ』


 ミチヤのお辞儀を見ながら、外へと出た。

 グレンに広い場所を案内してもらう。


【ここならほとんど邪魔になるモノが無いし、戦いやすいだろう】

『草野球場か……』


 確かに視界も広く、武器を使うのに支障が無さそうだ。無意識にマウンドへと足が伸びる。


【今度、ここのメンバーで野球でもするか?】

『ふふっ。それは悪くなさそうだ。さぁ、練習相手を頼む』

【任せとけ】


 ……数時間後……


『はぁ……はぁ……グレン。ありがとう……』

【ふぃー……いいってことよ。それにしても疲れたな……】


 2人してその場に座り込んだ。シャルをずっと使ってきたおかげか、二刀流でもそれなりに扱うことができた。攻撃手段の選択肢が増えたことは、かなり大きい収穫だ。息を整えると、ベースへと戻った。

 シャルを接合し、元の1本に戻してから所定位置へ置いた。


『長い時間ありがとうな』

【別に構わんよ。オレはもう少し体を動かしてから帰るわ】

『すげぇ体力だな……。まぁ、がんばって』

【多少は鍛えてるからな。それじゃあな】


 グレンは外へと飛び出していった。俺は疲れた顔で、家ヘと帰った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る