第28話 ヒーロー。

 ”オリオンカフェ”の瓦礫がれきから、異形いぎょうの生物が出てくる。そいつには足が生えていた。いや、足と言っていいのだろうか。その形状は、巨大な人間の指そのものだった。その足は10本程生えていた。

 俺たちに近付こうと、足が虫のようにゆっくりと動き出している。恐怖で嘔吐おうとしそうになったが、なんとか我慢した。


【アスカァ!!】


 後ろから男の声がした。振り向くと、俺より年上と思われる男性が猛スピードでこっちに走って来た。そして、アスカの前に立った。


【すまない。倒せたと思ったんだが”コア”が壊れてなかったみたいだ。怪我はないか?】


 会話や雰囲気から、アスカとは親密であることがわかった。また、身体のガタイの良さや言葉から滲み出る正義感から、強い人なんだと確信した。


【大丈夫よ。そっちこそ大丈夫? お手伝いが必要かしら?】


 アスカがからかうように言うと男は答えた。


【問題ない。あと一撃で終わる】


 にこやかに言うと、異形の生物に向かって構えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る