第29話 電光石火。

 男が息を吐いた。


 一瞬だった。


 気づいたときには男は異形いぎょうの生物の前にいた。男が拳で異形の生物の目を一直線に突くと、甲高い音が駅前に鳴り響いた。直後、異形の生物は小さくなり、弾けた。そして、煙となり、空高く舞った。しばらくすると、その煙は完全に消えた。


 目まぐるしい状況の変化に俺はついていけず、近くの排水溝まで走り嘔吐おうとした。我慢なんかできなかった。

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