第30話 優しさの欠片。

『はぁ……はぁ……』


 のどが熱い。胃の中が空っぽになったような感じがする。2人は俺が嘔吐おうとしている姿を見ないようにしてくれていた。男が近くにある建物に入り、水を持ってきてくれた。感謝しつつ受け取り、口をゆすいだ。だいぶ落ち着いてきた。


【落ち着いたかい?】


 男が聞いてきたが、答えられなかった。


【ヒカルくんはまだここのことよくわかってないから、ジュウザブロウさんから説明してもらっていい?】


 フォローするようにアスカが男に言った。男はジュウザブロウという名前のようだった。


【おぉ、そうか悪い。楽に勝てる相手じゃなかったもんで、気を配れていなかった。すまん】


 男は俺に説明を始めた。

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