第52話 嵐を突き抜けろ。

 ショーマの目は変わらない。


「お礼にお昼ご飯……。つまり、それは、あの子の手料理をもらったってことなのか……?」


 やばい! 返答次第では、チャーハンが食べられなくなる……! ショーマは目の付け所が鋭い。


『い、いや、そうじゃないんだ。き、昨日は朝までずっと海外ドラマ見ててさ、ショーマが前に言ってたテロリストと戦うやつ。なんとなく夜中に見始めちゃって、気づいたら朝になってて焦ったよねー! で、昼頃にあの子が来てさ、カップ麺もらって、ありがとうございます、なんて言ってたら、気絶するように寝ちゃってたんだよねぇー』


 ……どうだ!? ショーマの反応を待つ。


「なるほどねぇ……」


 俺はつばを飲み込みながらショーマを見つめる。


「……で、あのドラマはどうだった?」

『ショーマが言ってた通り、めっちゃ面白かったよー!』

「……だよなー!」


 よし! 乗り越えた! ショーマの顔からは、怒りが消えていた。レンも安心した表情を浮かべた。


「主人公のザックがテロリストを追うのに滅茶苦茶するのがいいよなぁ!」

『わかるわかる! 何台車ぶっ壊すんだって感じだよな』


 海外ドラマトークで盛り上がってる中、タイミングよく料理も出てきた。ご飯も食べつつ、海外ドラマトークで盛り上がったまま、解散となった。

 アスカが「鍵を忘れて外に出ちゃったうっかりやさんで、カップ麺をおすそ分けしてくれる女の子」というイメージになってしまっただろうか。まぁ、いいか。レンには気をつかわせてしまったし、あとでチャットしておこう。1つ山場を乗り越え、俺は家へと向かった。

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