第59話 射撃。

【まずはレイヤースペースでの力の使い方だ】


 ジュウザブロウさんは近くの建物の外壁に近づくと、デコピンをした。すると、壁が発泡スチロールのように崩れた。


【これはオレが強いとかそういう話ではない。一般的な男だったら、可能なことだ。ヒカルもやってみろ】


 真似してやってみる。同じように壁が崩れた。


【自分が強くなった気がして面白いだろ?】


 ジュウザブロウさんが笑って言う。確かにその気になってくる。その後は走ったり、飛んだり、身体能力の強化の効果を体感させてもらった。


【ちょっと休憩するか】

『はい!』


 俺とジュウザブロウさんはベースへと入った。俺たちと入れ替わって、アスカが外に出ていった。


【他の人の動きも見ておくといい】


 アスカを目で追いかけた。手にはアーチェリーのような武器があった。


【彼女の攻撃方法は射撃アローだ】


 アスカが息を吐いて、目を標的へ向ける。武器を構える。が、矢がない。どうするのかと見ていると、矢が浮かび上がってきた。


『あれは……粒子集中りゅうししゅうちゅう……!?』


 粒子集中で矢を作り上げ、放つ。それと同時に走り出す。走りながら3本、4本と矢を放つ。飛び上がっている間にも放つ。まったくスキのない、鮮やかな射撃だった。アスカは息を切らしていた。


【ダメね……。動き回っていると、放てる矢の本数が激減してしまうわ……】


 あれでダメって言うのか。真面目な子だなぁ、と感心していた。


【ヒカルー!】


 後ろからミチヤの声がした。

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