第43話 粒子集中。

【レイヤースペースでは、空気中の粒子を圧縮することで攻撃や回復に利用することができるの。これを粒子集中りゅうししゅうちゅうって呼んでいるわ。レイヤーの移動にはこれを利用するの】


 そんなファンタジーな……。と、今日は何度思っただろうか。


【ヒカルくん、大丈夫?】


 アスカが心配そうに見ていた。


『あ、あぁ。大丈夫だ』

【この粒子の圧縮はレイヤー0でも不可能ではないんだけど、普通はよっぽど才能がないと無理なの。”資格保有者”になると、これがやりやすくなるみたい】

『へぇ……。レイヤー0で超能力とか、気功みたいなのを使いこなす人は才能がある人って感じなのかな』


 なんとなく両手をサッカーボールを持つように広げて、意識を集中させてみた。小さい、光る球が浮かび上がってきた。


【ヒカルくんすごい!】


 アスカが驚いていた。驚いたことに驚いてしまって、集中力が切れてしまった。光球は空気中へ消えていった。


【初めてにしては、上出来だなぁ】


 ジュウザブロウさんも感心していた。


【今のを体中にまとわせるイメージよ】


 アスカが手本を見せるように構えた。ほんのり光って見える。


【ヒカルくんもやってみて】


 俺も同じように構える。

 体の表面を覆うように。全身を包み込むように。イメージする。


【ヒカルくん、その調子よ。そのまま、地面を突き抜けて、下に行くようにイメージして……】


 アスカの言う通り、イメージする。一瞬地面が消え、足が浮いた。そしてまた地面を踏みしめた。アスカに連れてきてもらったときと同じような、内臓が浮く感覚がした。


【そのまま聞いて。今いるのがレイヤー1よ。もう1回降りたらレイヤー0だから、降りてみましょう】


 俺は頷くと、再びイメージした。

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