第54話 嘘から出たまこと。

『ちょ、ちょっと待って! それはダメだろ!』

【いいじゃない。3階なら外から見えにくいし】

『いや、そういうことじゃなくてな。簡単に男を自分の部屋に上がらせるってことが良くないって言ってんだ』

【大丈夫よ。ヒカルくんを信じてるから】

『俺のどこにそんなに信用するポイントがあるんだよ……』


 もしや、俺には男としての魅力がないのだろうか…? 少しへこんだ。


【まぁ、いいわ。帰りましょうか】


 部屋に戻るために歩く。オートロックの前で、アスカが止まった。


『どうした……?』

【あのね……。鍵……。忘れちゃった…】


 恥ずかしそうにアスカが言った。


『嘘から出たまこと、ってやつだな』


 笑いながらオートロックを開けた。エレベーターに乗り、2階で降りると、アスカも一緒に降りた。


【ヒカルくんってSONICソニック使ってるわよね?】

『あぁ、使ってるよ』

【ID教えてくれる? 今のままだと連絡取るのも面倒だしさ】


 言われてみれば確かにそうだ。


『わかった。IDは……』


 二人でSONIC IDの交換をした。アスカは再びエレベーターに乗り、部屋へと帰っていった。俺もさっさと部屋へと帰った。

 家に入ってからしばらくすると通知音が鳴った。早速アスカからのチャットだった。


【今日はオートロックのドア開けてくれてありがとう。明後日から訓練よ!】


 明後日からか。明日は1日ゆっくりするか。


『こっちこそありがとう。アスカのアフターケアがなかったら、1日中ベッドの上にいたままだった。俺の友達と偶然会ってしまったら、さっき話した設定で頼む!』

【わかったわ。それじゃ、おやすみ】

『おやすみ』


 軽くやり取りをして、風呂に入った。風呂から出ると、いつものようにテレビをつける。ニュース番組の内容を一通り見たが、爆発事故関連の報道はなさそうだ。


『世界中の仲間が頑張っているんだな……』


 勇気をもらった気がした。カレンダーを見ると、150日までになっていた。


『次の戦いは8月150日か……』


 あと9日で、なにができるだろうか。どこまで戦力になれるだろうか。いろいろ考えながら、眠りについた。

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