第223話 打開の一手。

―――ジュウザブロウ


 スペランツァの攻撃を避けながら攻撃を続ける。十数分経っただろうか。攻撃回数は30回を超えている。流石に少し疲れてきた。


【ふぅ……。様子は変わらずか……】


 しっかりと攻撃は当たっているのだが、効果があるように思えない。


【早くコイツを片付けて、みんなのところへ戻らなくては……】


 息を整え、再度攻撃を開始させた。だが、弱点が見つからない。ふと”夢幻むげんの八月”のときのことを思い出した。


 剣による攻撃が効きづらいDemiseデミスというのがいた。その反面、打撃には弱いようで、オレともう一人の仲間で簡単に倒すことができた。スペランツァもそういったたぐいのDemiseの可能性が高い。打撃に耐性を持ち、他の攻撃に弱い。オレだけを連れ去ったのは、オレと相性がいいから。


【オレを無力化させるDemiseってことか】


 それだけオレはデゼスプワールにとって厄介な人間だということかな。光栄なことだ。ヤツはオレがこのまま大人しく叩きのめされると思っているのか?


【……あまりオレを舐めないでもらいたいな!】


 体育館の端にある扉を開く。ここは体育倉庫だ。これだけ大きい体育館なら……。


【あった……!】


 目的のものを引っ張り出し、肩に担ぐ。幸い、スペランツァはオレの様子を見ているだけだ。体育倉庫から出て、攻撃のタイミングをうかがう。走り回り、翻弄ほんろうする。スペランツァの左脇の下。距離もバッチリだ。


【喰らえォラァァァァッッ!!】


 体全体を使い、体育倉庫から持ってきたバレーボールのポールをスペランツァ目掛けて投擲とうてきする。スペランツァは腕を使い、ポールの軌道をズラし、直撃を防いだ。ポールは体育館の天井を貫き、彼方かなたへと消えた。


【チッ……!しかし、初めてだな。回避行動を取るのは……!!】


 オレの予想通りだ。打撃以外なら、ダメージを与えることは可能なようだ。腕にも傷が付いている。


【あとは”コア”を狙うだけか】


 まぁ、それが一番難しいことではあるんだが。体育倉庫には、まだまだ『たま』はある。


 数撃ちゃ当たる。


 オレの好きな言葉の1つだ。体育倉庫に戻り、ポールを担ぐ。


【さぁ、これで五分五分だ。勝たせてもらうぜ……!】


 いくつか狙いを定め、オレは走り出した。

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