第70話 怒声。

【グレン!! 何してやがる!!】


 ジュウザブロウさんの声が聞こえた。刃は寸前で止まった。


【オレの勝ちだな】


 そう言うと、グレンは俺から離れた。足の力が抜け、俺は地面へ倒れた。声のした方に目を向けると、そこにジュウザブロウさんの姿はなかった。そこにあったのは、1人の青年の姿だった。


【やっぱりイツキだったか。お前のは本物よりも声のトーンが少し高いんだよ】

【あっはっは。流石グレンくんは耳がいいねぇ。新人いじめをしているのかと思って、口を挟ませてもらったよ】


 青年はゆっくりと近づいてきた。


【大丈夫かい、ヒカルくん?】

『はい。ありがとうございます。失礼ですが、あなたは……?』

【おぉっと失礼。僕は閃門閧センモンゴウイツキだ。よろしく!】

『俺は四季島シキシマヒカルです。よろしくお願いします』

【さて、グレン。さっきの続き。僕が遊び相手になってあげようか?】


 イツキさんが、不気味に微笑む。


【それは勘弁だね。遊びは終わりだ。オレは帰って寝る】


 あくびをしながら、帰る準備をし始めた。


【そいつは残念だ。また今度頼むよ】


 背中を向けたまま、グレンは右手を上げて返事をし、そのままレイヤー0へと消えていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る