第69話 迫る。

 俺の攻撃に、グレンは一切の動揺を見せなかった。振り上げたシャルを掴み、受け流した。それだけでは終わらず、その勢いを利用し、シャルの上に立った。グレンは、相変わらず余裕そうな顔をしている。猛スピードでシャルの上を渡ってくるグレンに、す術もなく、立ち尽くした。


 何度目だろうか。

 ”死”を近くに感じていた。


 こいつは獰猛どうもうな獣だ。俺のことは脆弱ぜいじゃくな獲物としか見えていなかっただろう。他に人がいない世界。運が悪かった。こんなことなら、やめておけばよかった。

 そういえば、ここで殺人を犯したらどうなるのだろうか。


 グレンは捕まるのか?

 現実世界から俺の存在が消えるのだろうか。

 ジュウザブロウさんやアスカは泣くだろうか。

 最期にショーマとレンとご飯食べたかったな。

 あの雑誌に連載している漫画の最終回見れないなんて、最悪だ。


 いろんなことがごちゃまぜになりながら、頭を駆け巡っていた。時は止まらない。刃は目の前に迫っていた。

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