第118話 ノーモア苦味。

 ショーマに返事をしてから10分後、ショーマが店に入ってきた。


「来ちゃった」

『来ちゃった、じゃねーよ』


 ショーマも『エスプレッソ・ロマーノ』を注文したようだ。


「なんか期間限定なんだって、これ。……って、ヒカルはもう飲んでるのか」


 ショーマは1口飲むと、苦悶くもんの表情を浮かべた。


『苦いだろ、これ。ショーマは苦いの苦手だから、どうなんだろうって思ってたよ』

「買う前のオレに教えてやってくれよ……。いつものカフェオレにしておけばよかった……」


 ”期間限定”という言葉をうらんでいるショーマを横目に、俺はコーヒーを飲み干した。


「あ、そういえばジンの件。ヒカルが話してくれたらしいな」

『あぁ。この前、駅前でジンを見かけて話をしたんだ』

「マジか……。オレ、結構駅前を通ることが多いんだけど、1回も見かけたことないんだよなぁ」


 まぁ、駅前って言っても、オレのはレイヤー2の駅前なんだけどな。


『ショーマもジンを見たら声をかけてやってくれ。相変わらずクールなやつだったよ』

「あいつも変わらないな」


 ショーマが笑った。テーブルに置いてある雑誌がショーマの視線に入った。


「なんだこの”棒術スタイル”って雑誌は」

『あ、あれだ。最近棒術ってのを知ってな。たかまがはら書店に偶然あったから買ったんだ』

「へー、そうなんだ」


 ショーマが雑誌をパラパラとめくっていたが、興味がかなかったのか、すぐに元に戻した。


『そういや、レンはどうした? 連絡したのか?』

「もちろん連絡したよー。今日は珍しくグルメ情報の遠征だってさ」

『今日は遠征か。レンは食への熱意が本当にすごいな』


 その後は2人で世間話をしながら時間が過ぎていった。

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