第250話 最後の会食。

「そうだ、今日はボクがおごるよ」

『え、なんだよ急に』

「怪しいお金じゃねーだろうな?」

『そういう問題じゃないだろ』

「いやー、結構前だけどさ、ジンのことで相談に乗ってもらったじゃん? 今日はそのお礼も兼ねてるんだ」

『そんな。美味しいお店を紹介してくれるだけでも十分なのに。なぁ、ショーマ?』

「あぁ、そうだよ。友情に金が絡むとアレだからな」

「ボクらはそんな簡単に壊れる関係じゃないでしょ? 遠慮しないで、今日はボクに任せてよ」

『うーん、どうするよ?』

「レンがここまで言うなんて珍しいからな。今日はお願いしようか」

「ありがとう!」

『いやいや、感謝するのはこっちだろ? まぁ、また別の形でお返しするよ』

「そういや、オレ、明日からちょっとじいちゃんとこ行かなくちゃならなくてさ。次会うのは8月終わってからになりそうなんだよ」

「あっ、ボクも明日から遠征行く予定なんだ」

「それじゃ、3人で会うのはまた日が空きそうだな」


 そうなると、この世界で2人とご飯を食べるのは今日で最後になるのか。そう思うと、少し泣きそうになった。


「あれ、ヒカルくん大丈夫……?」

「どうした? 寂しくて泣いてるのか?」

『あぁ、ちょっとな……』

「否定しないんかい!」


 そんなやり取りをしていると、ワインが届けられた。ワイングラスにワインを注ぐ。


「ねぇ、乾杯しようか」

『そうだな……。また、3人でご飯食べような』

「当たり前だ」

『乾杯!』「乾杯!」「乾杯!」


 グラスのぶつかる音が鳴り響いた。一口飲むと、再び話に花が咲いた。ワインに続いて、ハンバーグも届けられた。ハンバーグの乗った鉄板がジュージューと音を立てている。どうやら、付け合せのポテトがいつもより多めらしい。よだれが溢れ出てきた。3人で改めて「いただきます」をすると、ハンバーグを口に運んだ。


 美味しい。


 全員が口々に言う。デミグラスソースに赤ワインがよく合う。300gの肉塊にくかいが、あっという間に無くなった。ワインの飲んだせいもあり、少しふわふわとした状態で店を出た。レンに感謝しながら、また食事に行く約束をした。ショーマは相変わらず酒に弱く、フラフラとしている。一度駅前まで戻ると、それぞれ家路についた。家につき、床に横になるとそのまま眠ってしまった。

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