第61話 試し斬り。

 ジュウザブロウさんは拳に武器を装備している。


【ミチヤの作った装備には、粒子集中りゅうししゅうちゅうをした力を流し込むための”血管”のようなものがある。これを利用するのとしないとでは、雲泥うんでいの差がある】


 武器を指差しながら丁寧ていねいに教えてくれた。


【まずは通常の状態を見せてやろう】


 そう言うと、ジュウザブロウさんは近くの壁へと近づいた。軽く裏拳で壁を叩く。大きな音と共に、壁には大きな穴ができていた。



『え、それで通常の状態……?』

【あぁ。通常時でも結構な威力を発揮することは可能だが、対Demiseデミスと考えると、いささか心配になる火力だ】


 俺は唖然あぜんとしていた。


【さぁ、次が本番だ。粒子集中をして、武器に力を流し込む……】


 俺はつい後ずさりをしてしまった。それほど迫力のある瞬間だった。鼓動が早くなる。


【行くぞ……ハァッ!!】


 それは一瞬だった。ほんの一瞬。壁は文字通り消え去った。粉々になり、それがジュウザブロウさんの打撃時に発生した突風に乗って、見えなくなっていた。


『す、すげぇ……』

【すげぇだろ?】


 ジュウザブロウさんは得意顔とくいがおをしていた。


【さぁ、ヒカルもやってみるんだ】

『やってみるんだ、って言われてもなぁ……』


 剣を握りしめ、構えてみる。


【武器をよく見てみるんだ。刃の部分に棒が埋め込まれているように膨らんでいる箇所があるだろう。そこに流し込むイメージをするんだ】


 よく見てみると、確かにそうだ。


『本当だ……。よし……』


 粒子集中をし、剣に力を流し込む。武器が自分の体の一部のような感覚だ。鉄の塊だろうが、こんにゃくだろうが、なんでも斬れそうな気がする。そのまま、近くの建物を縦に斬りつける。建物はキレイに真っ二つになり、建物の中の小物がガラガラと音を立てて落ちている。振り返り、少し離れたヒマワリのモニュメントに対し、横一閃よこいっせんに振る。時間が少し経ってから、太陽のような花の部分が落ちてきた。凄まじい斬れ味に、俺は震えていた。


【おぉ、やるじゃないか!】


 ジュウザブロウさんが褒めてくれた。

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