第108話 取り出された箱たち。

『麦茶でも飲むか?』

【ありがとう。お願いするわ】

『はーい』


 麦茶を入れて、テーブルまで運ぶ


『それにしても、本当にタイミングがいいな。これからご飯買いに行こうかなって思ってたとこなんだよ』

【あら、そうだったの? 買いに行ったあとじゃなくてよかったわ】


 アスカが手に持っていた手提てさげ袋から、いくつか箱を取り出した。


『……なんだ、これは?』

【じゃじゃーん! アスカちゃん特製のご飯セットよ!】


 アスカが次々と箱のふたを開けていく。美味しそうな匂いが部屋に充満した。サラダから始まり、じゃがいもを使ったおつまみと生姜焼き。デザートのフルーツまで用意されている。口の中によだれがたまる。アスカの後ろには、まだ1つ何かがあるようだった。


【ヒカルくん。ご飯はあるかしら?】


 ……ない。アスカがこんなに立派なおかずを作って来てくれたのに、白米すら用意できてないとは。


『すまん……。今日は炊いてないんだ……』


 正直に話した。


『今から炊くと時間がかかるから、走って白飯買ってくるよ!』


 立ち上がるオレをアスカが制止した。


【……わかったわ。大丈夫】


 そしてアスカはニヤリとし、最後の1つを取り出した。テーブルに置かれたのは、炊飯器だった。

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